最高の生活


 大きく伸びをして、息を吸い込む。


 部屋には柔らかな日差しが差し込み、

 香ばしいコーヒーの香りで満たされている。


 たまらずキッチンへ向かう僕は、

 罠へ誘い込まれる動物のようだ。


 おはようと口にすれば、笑顔で迎えてくれる君。

 また始まる、いつもの一日。

 君のことを、もっと知りたいと願う日々。


「もうすぐ朝食ができるから」


 焼きたてのトーストへ広がるバター。

 君に骨抜きにされてしまった僕だって、

 とろけ具合なら負けていない。


「先に、顔を洗ってきたら?

 本を読んで待っていて」


「起きがけに、読書させる気?」


「だって」


「ページをめくる音と、僕の仕草が好き。

 って言うんだろ?」


 はにかむ君へ口づける。

 好きな物に囲まれた、最高の生活。

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