青い鳥


ある人は、それを見たという。

ある人は、その羽根を拾ったという。

ある人は、それに触れたという。


酒場で一杯やったとき、

隣の女が言ったんだ。


幸せを運ぶという青い鳥の話さ。


気のない素振りをしながらも、

俺の前には現れないと、

心でそっとうらやんだ。


きっと俺は

巡り会う機会をのがした。


人生ってやつは

一瞬のチャンスを

モノにした奴が勝者。


わずかに油断しただけで、

グラスの中の氷のように、

軽く足を滑らせる。


もう転ぶまいと

細心の注意を払い、

俺は体を硬くした。


守りに入ったこんな俺では

青い鳥など寄りつかん。

精々おまえが

隣で酌をするだけだ。


幸運なんて

若い奴らにくれてやる。


こんな俺でも

技と経験、つちかった。

後はおのれ

道を開いてゆくだけさ。

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