白い小悪魔

「義理で貰ったチョコにお返しなんて、

なんだか腑に落ちないよなぁ……」


 部下のぼやきを耳にして、

 そういう社内営業も大切なんだと

 心の中でつぶやいた。


「これ、バレンタインのお返し」


 経理部の千春ちはるちゃんへ、

 クッキーの入った小箱を手渡した。


「わぁ。ありがとうございます」


 花が咲いたような明るい笑顔。

 見ているだけで、

 こちらまで元気が湧いてくる。


「チョコ、美味しかったよ。手作りだったよね。

さすがに、男性全員分は大変だったろう?」


 すると彼女の口元へ、小悪魔のような笑み。


「係長。まさか、みんなにあれを渡したと思ってます?

他の人たち、中身は安物ですよ」


「え?」


 頭の中は真っ白になった。

 これぞ、まさしくホワイトデー。

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