十二月の物語

待てない俺と、欲しがる女


 相手なんて誰でもよかった。


 街が幻想的な光景に彩られた頃、

 俺の心は深い闇に覆われていた。


 ふらりと立ち寄ったバー。


 誘い文句を投げれば、

 ひとりの女が簡単になびいた。

 化粧は濃いが、若くてスタイルもいい。


 名前など知る必要も無い。

 求め合う欲望と、

 それを楽しむ体さえあれば。


 待てない俺と、欲しがる女。

 互いの利害は一致した。


 ベッドの中、街でまたたく光と呼応するように、

 俺の中で熱いものが脈動した。


 そうして、夜明けは街の喧騒さえも飲み込んだ。

 光が幻想を押し流し、本来の姿をあらわにする。


 夢のような時間はついえたのだ。


 目覚めた俺の腕の中にも、

 化粧という幻想を失ったひとりの女。


「おまえは誰だ?」


 昨夜見た、あの美女さえも、幻か。

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