十月の物語

運動会


「だから、今日は本当に無理だって。

 明日は子供の運動会だって言ったろう?

 五時起きで、席取りに並ぶんだよ」


 飲みに行こうとしつこい同僚。

 押しに耐えかね、

 切り札となる言葉を投げつけた。


「おまえの所は小学五年だっけ?

 余所よそのこどもの成長って、

 凄く早く感じるよな」


「確かにな。

 で、こどもが成長する分、

 俺たちも歳を取ってるわけだけどさ」


 その言葉に、同僚も苦笑する。


 縁とは本当に不思議なものだとつくづく思う。


 恋人が出来て、夫婦になった。

 子供が生まれて、夫婦から家族へ。

 そうして、縁は絆を生む。

 それはまるで、命のバトンを繋ぐリレーだ。


「わかったよ。飲みに行くのは諦める。

 おまえは帰って、嫁と夜の運動会だな」


「下ネタかよ」

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