203号室
「また、この季節が来たのか……」
桜舞い散る桃色の雨。
春の香りに包まれながら、
あの部屋からも
同じ景色を見ていたことを思い出す。
桜並木に隠れるように、
その二階建てのアパートは建っていた。
新しい街、新しい生活。
社会人としての旅立ちをそこで迎えた。
会社と部屋を往復するだけの毎日だったけれど、
振り返ればあの日々も、
今の僕を形作った大事な要素だ。
そんな生活の中、
同棲を解消し、離れていった女性もいた。
彼女も毎年、あの部屋から見る桜を
楽しみにしていたっけ。
桜を見る度、こうして僕を苦しめ続ける、
愛しい人の影。
もう会うことはないけれど、
元気にしているだろうか。
僕の心の一部は今も、
あの部屋に取り残されたままでいる。
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