300文字の物語

帆ノ風ヒロ

春センチメンタル企画

卒 業


 日々を共にしていた、

 ランドセルという名の黒い相棒。

 それを降ろす日が、

 ついにやって来たんだね。


 どこか誇らしげなその顔に、

 僅かな寂しさを覚えてしまう。

 同じ屋根の下で過ごす時間は、

 どれだけ残っているだろう。


 いつかは巣立つと分かっていても、

 なんだか君が、

 どんどん遠くへ行ってしまうような気がして。


 ミニカーを手放し、

 お気に入りの絵本もしまった。


 夢中になった特撮ヒーローも、

 テレビの向こうにしかいないと

 悟ってしまったね。


 成長していく君の目に、

 大人社会の椅子取りゲームを続ける僕は、

 どう映っているだろう。


 憧れを抱いて貰えるような、

 立派な生き方は出来ているだろうか。


 僕らの前から卒業する時、

 答えを聞かせて欲しいんだ。

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