謎解き姫のイチゴパフェ

灯花

第1話 プロローグ

暑くなったとはいえ、まだまだ涼しい夏の午前中。


富田泰蔵は書斎で小説を執筆していた。


作家稼業一筋で巨万の富を手にした彼の手には、つい先日知人から譲り受けた、世界に数える程しか存在しないと言われる蒔絵の万年筆。


その美しさにほれぼれとしながら、1字書いてはやめ、1字書いてはやめを繰り返していた。


普段よりゆっくりと筆を進めていた富田氏だったが、開け放った窓から流れ込む心地よい風に、いつしかうとうとしていた。



* * *



しばらくして、どこからともなく窓に黒い影が忍び寄り、またどこかへ消えていった。


そして日を浴びて輝いていた万年筆は机の上から消えていた……。





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