ノートのクレープ
数学の授業中、無機質な数式をノートに書き写していると、ふと思った。
――クレープが食べたい!
ミルクレープがいい。ふんわり生地に生クリームとフルーツが挟まれてるやつ。
きっと頭でカロリーを消費しているからだ。よく授業中にこういったことが思い浮かぶ。でも、授業が終わる頃には忘れていて、そのまま家まで帰ってしまう。
そのあと家に帰ってから思い出すのだが、いったん自分の部屋で落ちついてしまうと、わざわざ外出するのも面倒になって見送りとなってしまうのがいつものパターンだ。今日こそは、と思い、ノートの隅にクレープの絵を描いた。
ホームルームが終わって帰り支度をしていると、クラスの男子に声をかけられた。小学校、中学校、高校と一緒で腐れ縁。授業中寝ていたのでノートを写させて欲しいと言う。だらしないやつだ、と思いながらも帰りにコンビニでコピーさせてあげた。
あいつは用事があるとか言って、いそいそと帰っていった。お礼の一つでも言ってもらいたいものだ。友達に愚痴をこぼすと、甘えられてるんだよ、と笑われた。いつも私の方が世話してやっているのだから面白くない。
翌日、数学の授業でハッとした。クレープを食べに行くのをすっかり忘れてた。しかもノートの絵は描きっぱなしだった。何やってんだか。これは全部あいつのせいだ。
絵を消すためにノートをパラパラとめくると、クレープの絵の下に文字が書いてあった。
――美味しい店、探しとく。
またあいつは寝てる。私は追加の絵を描くことにした。
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