第39話 鬼ヶ島への道 ~上陸~
吸い込まれるようにして舟はようやく到着した。
鬼ヶ島の周囲はここ以外
舟を使って鬼ヶ島に上陸可能なのは唯一この白浜のみ。
浜辺以外から他者の進入は不可能、ただし羽を持つ生物ならば進入は可能だろう。
「お帰りのさいは鴎さんに伝言お願いしやす」
「うん。ありがとう」
僕は斜めに掛けた風呂敷から駄賃をとって支払った。
「まいど」
船頭さんは駄賃を受け取り引き返していった。
通貨を渡したとき船頭さんの手には汗が滲んでいた。
それほどまでに力いっぱい海を漕いできたということだ。
ザスっという音が鳴って砂浜に僕の足跡がついた。
僕の目の前を小蟹さんがちょこちょこと横断していった。
幼い蟹の子で言葉は話せそうにない。
獣か半獣か物の怪かの区別はつけられない。
蟹は卵生だから水中に卵を放つ。
その一匹がフカなどの食べられることもなくたまたま鬼ヶ島に流れついたのだろう、ここはまだ波打ち際だし。
ちなみに僕は人間と同じで
ここで草履と
爪跡までがくっきりと鮮明に残る。
僕の足の爪は熊の
ふだんは足袋を履いているために他人の目に触れることはない。
ただ、あまり伸びると足袋を破いてしまうのでこまめに切るようにはしている。
この牙のような爪は半妖である証だ。
これを見ると、さすがに誰でも僕が半妖だとわかる。
手の指の爪は自在に形を変化させることができる。
猪さんの事件では竹の中から刀を取りだすときに使ったし、竹藪で雀さんの骨をを掘るときにも使った。
人間の見た目でも人間とわずかに違う部分がある。
だから僕は半妖という種族なのだ。
僕は
いつも以上に足の裏に力を込めて
乾いた砂のところまで足を進めると
やはりそうなるか。
僕はそれをたしかめてから、足袋を脱いだまま草履だけを履いた。
そして真反対に向き直す。
正面は断崖絶壁の岩肌が広がっていて左側には人間でいえば齢三歳ほどの大きさの岩が転がっていた。
僕はその岩に向かって歩く。
鴎のメモ通りだ。
岩の前にはすこし大きな穴があった。
二足歩行のなにかが身を丸めて転がったような跡だ。
しっかりとその人物の足跡も残っている。
ほかにも岩が海まで転がったであろう跡があった。
そこに小さな血痕と小さな足跡が点々としている。
赤鬼さんの血がこんなところにまで……。
ほかにも砂浜は穴と砂の山だらけ。
桃太郎さん、犬さん、猿さん、雉さん、四人はずいぶんとこの砂浜をあっちにこっちにいったりきたりしている。
そう、必要以上だと思うくらいに。
僕はそこから数メートル離れた場所に横たわっている赤鬼さんのところへと進んだ。
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