第388話 一晩隔離の刑

「そんな訳で両思いの2人は今晩隔離してしまうのだ」


 すき焼きパーティを終えこたつを脇にどけた後、亜里砂さんにそう宣言される。


「おいおい、そりゃ色々まずいだろ」

「家主の決定は絶対なのですよ」

 未亜さん、目が笑っている。


「そうですね。こっちは余った3人で残念会でもさせていただきますから」

 美洋さんまで。


「あとで皆でネットでアウトドア用品を検索する話は?」

「それはこっち3人でやるので、そっちはそっちでスマホで見ればいいのです」


 容赦無いな、色々。

 そんな訳で僕と彩香さんは亜里砂さんの部屋に押し込められる。


「武士の情けという事でドリンクだけは置いてやるのです」


 そんな訳で2Lのお茶ボトルを押しつけられ、扉を閉められた。

 まあ開けようと思えば開けられるのだけれど。

 鍵を外から掛けたわけでも無いし。

 そう思いつつ彩香さんの方を見る。

 思わず2人で見つめ合って苦笑い。


「なんだか、ね」

「そうだな」


 本当になんだかな、という感じだ。

 僕が彩香さんの進路を考えた事も、彩香さんが僕の進路を考えた事も。

 そしてこの部屋で2人押し込められてしまった事も。


「何なら僕は下で寝ようか」

「前に向こうの部屋のベッドに3人で寝た時があるじゃない。ここに2人で寝てもあれと同じくらいだよ、きっと」


「それもそうか」

 そう言いつつ、何か照れる。

 何せ2人だけだし。

 ただ向こうにいるうち2人は曲者だ。


「でも部屋が違ってもさ、亜里砂さんや未亜さんには聞こえているも同然だよな」

「そうだね、あの2人には言わなくたって色々聞こえているし」

「確かに」


 そうなんだよな。

 今更という事で特に気にしていないけれど。

 だから、まあいいか。

 気にしないで。

 どうせ色々思っている事は聞かれているんだし。


「改めて言うけれど、彩香さん、好きです。これからも宜しく」

「私もだよ。今まで色々ありがとう。これからも宜しくね」


 そう言った後、僕の方から軽くキスをした。

 これくらいはいいよな。

 どうせバレているけれど。

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