第357話 鶏の丸焼きは何故だろう
昼は何と鶏の丸焼きだった。
中にはピラフが詰まっているそうだ。
美味しそうだけれどこのセレクトは僕には謎だ。
なので先輩に聞いてみる。
「これは何故か聞いていいですか?」
「本当はこれを七面鳥でやりたかったんだ。トルコの新年だとこれがメジャーだからさ。日本だとクリスマスのイメージが強いけれど。
ただ残念ながら駅前のスーパーにはターキーは売っていなかった。だから代わりにチキンの中抜きを使ったんだ」
なるほど。
でも疑問はまだある。
「参考までにどうやって焼いたんですか」
「寮の共用場所にあるオーブンレンジを使った。まだ寮に帰っている人は少ないからさ、1時間ほどオーブンレンジを使わせて貰った」
何か凄く手間がかかっている。
「すみませんこんな豪勢な料理を」
「いや、暇だと何か手間かかるものを作りたくなるんだ。趣味かな」
そう言いながら先輩はチキンを切り分けてくれた。
更にピラフや野菜も取り分ける。
いただいてみるとまず、チキンの皮がパリッパリで美味しい。
更にピラフが猛烈に鶏味になっている。
「これは文句無く美味しいのだ」
「鶏の丸焼きは始めて食べたけれど、美味しいね」
「いや、下手なのはパサパサであまり美味しくないんだ」
昔、スーパーでまずい鶏の丸焼きを買って家族で食べた事があるから知っている。
こんなに皮がパリパリで胸肉すらジューシーな仕上がりにはならない。
「これは中に固めに炊いたピラフをぎっちり突っ込むのがポイントなんだ。そうするとピラフの米が中の水分をいい感じで保持してくれる。あとは15分に1回バターを周りにしっかり塗ってやる事かな」
やっぱり手間がかかっているようだ。
「こういうのが出るなら、毎日勉強会でも悪くない……いや、やっぱり悪いかな……」
亜里砂さんもそういう感じになってしまっている。
そのくらいに美味しい。
「それでどうだ、宿題の状況は」
「順調です。多分亜里砂さん1人でもほとんど出来たんじゃないかと思います」
「未亜先生の特訓のおかげかな」
先輩がにやにやして、続ける。
「なお宿題の件、美洋にメールで聞いてみた。向こうでは昨年帰省してすぐ、未亜先生によるマンツーマン地獄の宿題講習が行われたそうだ。美洋に言わせると、自分一人でこっそり宿題をやった方が楽だったんじゃ無いかと思う位の状況だったそうだ」
うわあ。
想像はつくけれど。
「美洋も大変だね」
「あっちに参加しないで済んで幸いだったのだ」
亜里砂さんがしみじみという感じでつぶやいた。
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