第23章 冬休みの勉強会

第355話 亜里砂さんの忘れ物

 小町通りという食べ物屋等が多い商店街を通って帰る。

 どれも美味しそうだけれど中学生にはちょっと高い。


「見ているとお腹が空く通りなのだ」

 クレープや和菓子のような甘いものだけではない。

 薩摩揚げとかたこ焼きとか色々ある。

 中にはカップに入った海鮮丼とか、椎茸を串に刺して揚げたのも。


 どれもテイクアウトできて美味しそうだのだけれど、中学生の小遣いでは厳しい。

 特に今日は電車代とか昼食代とかお賽銭とかおみくじとか色々使ったし。

 寒いけれど結構買い食いしている人はいる。

 ただ値段を見ると安くて300円位、高いと700円を超える模様。

 中学生が気軽に買い食いできる値段では無い。

 下手に使い過ぎると夕食等を抜く羽目になる。


 キーホルダーとか手ぬぐいとかもいいなと思うのはあるけれど手が出ない。

 100円ショップで似たようなのを売っているななんて思ってもしまうし。

 結局色々見たけれど買わないうちに駅まで到着してしまった。

 すぐ来た電車に乗る。


「さて、明日、明後日は七草摘みだな」

 先輩がそう言うと、亜里砂さんがはっと何かを思いだしたように言う。


「出来れば明後日だけでお願いしたいのだ」


「何か用事があるのか?」

 彩香さんが暗い表情で頷く。


「宿題に手をつけていない事を思いだしたのだ」


 ん、宿題?


「冬休みの宿題ってあったっけ」

 彩香さんが僕の方を見る。


「憶えが無いな」

 何も無かったような気がする。


「B組にはあるのだ。プリントにして20枚ちょっとなのだ。出来れば面倒を見て貰えると助かるのだ」


 そう言えば夏休みもB組は宿題が多かったな。

 でもそんなにあるのか。


「それってまだ1枚もやっていないの?」

「すっかり忘れていたのだ」

 おいおい。


「こりゃ明日で終わるかな」

「何としてでも終わらせるのだ」


 うん、これはしょうがないな。

「明日は図書館だね」

 彩香さんの言葉に僕と亜里砂さんは頷く。


「もし明日で終わらなかったら、七日には私が採った七草を御馳走するよ」

「何とかして終わらせるのだ」


「なら今日は真っ直ぐ帰って、出来るものから始めておいた方がいいな」

 確かにそうだなと僕も思う。

 自分で解けるものは今日のうちに出来るだけやっておけば明日は楽だろう。


「仕方ないから今夜ある程度進めておくのだ」

 亜里砂さんはしぶしぶという感じだ。


「今日3箇所の神様にも言われただろ、努力が必要だってさ」

「うう、こういう神託は当たらなくてもいいのだ」


 まあ冬休みの宿題、今までやっていなかったのだから仕方ないな。

 そういえばB組と言えば美洋さんはどうしているだろう。


「美洋も今頃未亜さんに特訓受けてたりして」

 彩香さんも同じ事を考えていたようだ。


「あっちは未亜に任せておけば大丈夫だろ。厳しいからな、未亜は」


「確かに」

 先輩の言う通りだな。

 亜里砂さんを含めて3人で苦笑した。

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