第351話 初詣が目的です

「さて、後半戦に行くぞ」


 先輩の台詞で行動開始。

 そうは言ってもやっぱりゆっくりペースだ。


 縦浜市内最高地点という案内看板で写真を撮ったり。

 お金が無いので休憩所というか売店をスルーしたり。

 所々から海や遠くの山が見える。

 街中から近い割にはちゃんとした山道だ。

 この辺は所々に巨木が生えていてそれもいい感じ。


 お地蔵様や石の供養塔みたいなのが入っている浅い洞窟がそこここに出てきた。

 上り下りしていた道も下る一方になった。

 更に一気に開けた感じになり、前には住宅地が。


「もうこのハイキングルートも終わりだね」

「そういうこと。そして今日の目的の初詣になるわけだ」


「そう言えば今日は初詣が目的だったんですね」

「でもこのハイキングも悪くないだろ」

「もちろんなのだ」


 最後道は細くなり、そこを抜けたら道路に出た。

 あのお弁当を食べたところから30分くらいだろうか。


 お寺さんの門をくぐって舗装された坂道を下りていく。

 自動車が通るには細すぎるような場所もある。

 この辺で暮らす人は車を選ぶなあ。

 そんな事を思いながら歩いて行って、公園、住宅、山という中を抜ける。


 狭い路地を右に入ると鳥居が見えた。

 人もそこそこいるが混んでいるという感じでは無い。


「ここが鎌倉宮。いわれとかはまあ各自検索して貰うとして、鎌倉でもいかにも神社らしい神社だ。御利益は主に厄除け」


 落ち着いた感じの広い神社だ。

 早速全員でお参りする。


「まずは手水舎で手を洗う。この場合も正式な作法はあって……」


 先輩の言う通り、左手を清め、右手を清め、左手で水を受けて口を清め、もう一度左手を清めて最後に持ち手の部分も清める。

 しかし先輩良く知っているな。

 本来は日本人では無いのに。


 少しだけ拝殿前に人が並んでいた。

 並んでいる間に先輩が今度はお参りの作法の説明をしてくれる。


「まず礼をして、賽銭をなげて、鈴を鳴らす。そのあと2回礼をして、姿勢を整えて2回手を打つ。この後に手を合わせたままお願い事を唱える訳だ。唱え終わったら礼をして下がる。こんな感じだな。

 まあ日本の神様は心が広いから、多少は適当でも大丈夫だけどさ」


 そんな感じで参拝を終える。


「何をお祈りしたんだ」

「私は秘密なのだ」

「私は今年も皆と一緒にいられますように、かな」


 僕も同じだな。

 言わないけれど。

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