第308話 伝えること
「そう言ってくれると嬉しいけれどさ。でも悠達も2年になったら気づくと思う。そうするのは先輩としての義務とかそういう物じゃ無い。やりたいから、伝えたいからそうしているんだってさ。
私は先輩達や先生に、日本の野遊びがこれだけ楽しいという事を伝えて貰った。
だから先輩としての私がすべきというかしたい事は、同じように楽しい事、面白い事を後輩に教える、伝える事なんだ。これだけ楽しいぞ、こんなに面白いぞ、こんな可能性もあるぞって。
4月から始まったこの活動ももう4分の3が過ぎようとしている。その中で楽しさとかを私は伝えられたかな、って。
色々難しいけれどな」
そんな先輩の気持ち。
僕らは後輩という存在がいないからまだわからないのかもしれない。
それでも今の僕が自信を持って言えることがある。
「先輩が自分をどう評価しているかは別として、活動の楽しさは間違いなく伝わっていると思いますよ。そうでなければ1年生がこううじゃうじゃと、いつの間にか5人も集まってこないと思います。違いますか」
「そう言ってくれると嬉しいな」
川俣先輩はそう言って微笑んでくれた。
そこに。
「ひっひっひ。無駄遣いをしてしまったのだ」
亜里砂さんの声。
皆さんが戻ってきた。
亜里砂さんと美洋さんが何かを手に持っている。
「何か買ったのか」
「山バッチなのだ」
山と白い壁と赤い屋根の山小屋、そして『氷』の旗の入ったカラーのバッチだ。
「まだ山頂まで行っていないのにか。気が早いな」
「山頂は山頂で別のバッチを買うのだ。山に行くたびに揃えて部屋に飾るのだ」
はまっているなあ、亜里砂さん。
「それじゃそろそろ出発しましょうか。あと1時間もしないで山頂までいけると思います。山頂に着いたらちょっと早いですけれど昼ご飯にしましょう」
そんな訳で。
防寒具を脱いでザックにしまって。
そしてザックを担いで。
「さて、塔ノ岳についたら飯なのだ!」
と亜里砂さんの台詞で僕達は歩き出した。
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