第290話 思った以上に盛況です
「これは、ひょっとしたら客がくるかもしれないのです」
という未亜さんの勘を信じて、クッキーの方は量産体制に入る。
ミックスナッツは煎った直後で無いとあまり美味しくないので、その場その場で。
更に。
「この団栗、自分で煎ってみてもいいんですか」
との事で。
「はいどうぞ」
とフライパンを渡し、料理用ガスバーナーに火をつける。
更に煎ったものを出すための紙皿も渡して。
クッキーは薄いのでホットプレートでもそこそこの時間で焼き上がる。
出来たものをやはり紙皿に入れて、来た順に2個ずつ渡して。
そしてポスターに記載した最初のできあがり時間の9時10分。
予想外に客が多くなった。
まあそれでも20人程度だけれど。
できあがり順に炒りたてナッツやクッキーを渡して。
いい感じに客が流れていって、9時30分過ぎに客の入りが少し落ち着くまで。
焼いたり煎ったり茶を用意したり、結構忙しい。
しかも食べた客が団栗やくるみを煎って割って食べるなんてのに挑戦しているし。
既に机の半分以上は体験客がガスバーナーで煎っていたり、割って食べていたりする状況だ。
有り難い事にパネルを読んでくれている人もいる。
「これは10時10分の回も全員体制の方がいいかな」
「そんな感じがするのです。なら、最初は亜里砂と彩香、10時ころまで休憩で、ささっと近くを見てくるのです」
昨日急遽作った野草茶パックも、30パックのうちすでに3パック使った。
そして4パック目は僕が現在煮出している状態だ。
先輩は先輩で体験の方に目を光らせている。
何せ体験用に用意した料理用バーナーのガス缶は合宿や先生個人山行で使ったものの残りもの。
中途半端に使って野外活動に持っていけないものを主に使っている。
だから気を抜くと中のガスが空になったりする訳だ。
今のところは大丈夫そうだけれども。
「うおー外れた。渋っぶーい」
僕が用意した外れ団栗を食べたらしい声が後ろから聞こえた。
シイの団栗は基本的に細長で、外れ団栗は丸っこいのですぐわかると思うのだけれども。
あんがいわざと食べられない方を試していたりして。
「この団栗やクルミの実、見本として持ち帰っていいですか」
「クルミの実は1個だけ、団栗は片手で一つかみくらいまではいいですよ」
なんて扱いもあったりして。
客は生徒がほとんどだけれど、たまに先生とか父兄らしい大人も来る。
うちや彩香さん、亜里砂さんの家は親は来ないけれど。
「このクッキーは材料の全部が団栗なんですか」
「砂糖とバター、あと2割ほど小麦粉を使っています。本当は小麦粉無しで全部団栗でも作れるのですが、団栗からデンプン粉を作る手間が大分かかるので」
そんな質問にも答えながら、取り敢えずお茶を出したり。
あと体験組の出した団栗の殻とかも片付けたり。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます