第223話 夕方の部もあるのです

「さて、そろそろ悠が疲れてきたので。一度休憩に戻るのだ」

 思い切りバレていた。

 そして思い出す。

 亜里砂さんはこっちの考えを読める事を。


「えーっ、まだやっと半分なのに」

 彩香さん、タフだな。


「ここからは夕方の方がいい場所が多いのだ。それに昼間は暑いのだ」


 亜里砂さん、ありがとう。

 そんな訳で、今度は地上を真っ直ぐマンションへ。

 3時間ちょいかかった部分が5分でマンション到着だ。


「このマンション、いい場所だね。駅からも近いし」

 玄関ホールへ入って彩香さんが言う。


「父が色々便利だからという事でここにしたのだ。でも買ってすぐ海外転勤になったのだ」


「勿体ないね」


「だからこういう機会にフルに使うのだ」


 部屋に入って。

 冷房かけて一休み。


 ◇◇◇


 そして午後6時。


「そろそろ準備をして出発なのだ」

 という事で。

 今度は外を駅とは違う方向に歩いて、橋を渡る。

 川の渡った側に観覧車とジェットコースター等が見えた。


「遊園地なの、そこ」

「ちっこい遊園地なのだ。楽しいけれど、もう少し涼しい季節の方がいいのだ」


 そんな感じで歩いて、大きい建物の中へ。

 亜里砂さんは何か明らかに目当てがある感じでフード店主体の建物の中を歩いて。

 ハワイっぽい一角の入口にある沖縄アイス屋さんで立ち止まった。


「ジュニアのトリプルで、塩ちんすこう、ウベ、いちごショートケーキ、カップで」

 これも牛丼屋の時と同じ、慣れた感じで頼む。


「私はアイスは余り強くなくて、ジュニアでもトリプルだと頭がキーンとなるのだ。今日は3人いるから安心して食べられるのだ」


「でも悪いよ、割り勘で出そうか」


「2人には御飯のおかずを持ち込んで貰っているので、これであいこなのだ」

 という感じでアイスを注文。

 その場で食べる訳でなくテイクアウト。

 そしてエレベーターで屋上へ。


 屋上は庭園風になっている。

 その端っこの方へ行って。

「まずは夕日と夜景なのだ。暑いからアイスを3人で食べながら見るのだ」

 と3段のウッドデッキの最上段に座る。


 亜里砂さんを中心に3人で座って夕景を見る。

 確かにいい場所だ。

 駅、遊園地、帆船、ビル群。

 それがシルエットになって夕日に照らされている。


「自然な風景もいいと思うのだが、こういうごちゃごちゃした風景も好きなのだ」

「確かにこれも綺麗だね」

 彩香さんが頷いた。

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