第213話 ウォーカーズ・ハイ?

 私鉄の駅の前を通った。

 時計を見る。

 午後8時ちょうど。

 ちょうど1時間だ。


「やっと1駅なのだ。どうする、電車に乗るか?」

 亜里砂さんは少し疲れている模様。

 汗をふきふきという感じだ。


「うーん、やっと調子が出た感じなんだけれどな」

 逆に彩香さんは絶好調。


 なら。

「とりあえず次の駅までは線路と並行して歩くから、1駅だけ歩いてみるか。それならまだ電車はあると思うし」


「うん、そうだな。それ位ならまだまだ大丈夫」


「なら行こっか」


 今度は彩香さんが先頭で歩き出す。

 道は一応歩道があるけれど車も多い。

 あまり歩いて楽しくない道だ。

 しかも暗いし。

 更に歩道が無いトンネルが出現。

 狭くて車がすぐ横を走っていて怖い。


「うーん、我ながらしょうもない事をしているような気がするのだ」

と亜里砂さん。


「取り敢えず隣の駅までは行きましょう。そうしないと身動きが取れませんし」

 そう言いつつ怖いトンネルを早足で抜ける。


「これだと足が鍛えられて太くなるのだ。ハモンセラーノ後ろ足1本分の原木サイズになるのだ」


 おいおい。

「まだ余裕あるな」

「最後に牛丼買って帰る程度はあるのだ」


 ベジョータもまだまだ余裕がありそうだ。

 そしてトンネルを過ぎて少し行ったあたりから。

 広い歩道が出来て歩きやすくなった。

 周りも街っぽくなってきたし。


「大分歩きやすくなったね」

 彩香さんは気分良さげに歩いている。

 そんな感じで30分ちょっとで次の駅に到着。

 予定より若干ペースは早い。

 今のところは。


「さて、次の駅まで当初予定のコースだと約2時間です。安全を期して線路沿いを歩くか、一気に最短を歩くか。最短ルートでも2キロ程度歩けばどこか駅には出ます」


「電車の時間は」

「まだまだ大丈夫です。予定通り歩ければ1時間くらいは余裕があります」


「なら行くぞ。予定通りで。何故か足が軽くなってきた」

 おいおいベジョータ、大丈夫か。


「じゃあ大丈夫だね」

「当然」

 本当か、と思うけれど口には出さない。


「なら行きますか。JRの駅まで行ければ運賃が大分安くなりますから。桜本町から行けますよね」

「ああ。みなとみたい線のみなとみたいが一番近いが、桜本町からも歩いて6分程度なのだ」

 という事で。


 仕方ないので僕は2人についていく。

 なお僕の方の足の調子は全く問題無い。

 確かに調子が出てきたかなという状態だ。

 休みなく歩いているから何処かで一度休憩した方がいいかな。

 それとも歩けるうちに歩かせた方がいいのかな。

 そんな事を思いつつ歩いている。

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