第144話 深草チーム作戦会議(2)
そして未亜さんだ。
「私と美洋は岩場や陸地の採取メインで考えています。勿論突きとかもやってみるのですが、基本体力は高校生や男子には勝てないのです。
あと、あの巨大な網は高さ1.5メートル、長さ30メートルの長い網なのです。竹を砂浜等に差し込む事で固定出来るようになっています。
あれをのの字型にセットして、中央に入った魚を捕まえようという作戦です。
潮の満ち引きを使うので恐らく1日1回だけ、ただ上手く行けば大物をがっさり獲れるんじゃないかと思うのです」
「すだて漁、というそうです。前何かの雑誌に書いてあって、一度やってみたいと思っていたんです。本当は遠浅で潮の干満が激しい湾内等でやる漁ですけれど、今回行く場所も1メートル位は潮の差があるようなので」
美洋さんはさらにメモ帳に簡単な図を書いて説明してくれた。
「ただ今日は時間的にちょっと無理なので、潮の流れを見て明日から仕掛ける予定なのです。それまでは釣りとセルビンの手伝いをするので、明日の設置は手伝って欲しいのです」
確かに上手く行けば泳いでいた魚を一網打尽だ。
「確かにこれで獲れれば面白いかも」
彩香さんも興味津々という感じ。
「浪漫なのですよ。ただ本場のすだて漁だとアカエイとか微妙に危険な魚も入るので、注意は必要らしいのです」
でもひとつ疑問が。
「最後にのの字の○の中に残った魚はどうやって捕るの」
「先生のたも網2本を持っていって、掬っては袋に入れるの繰り返しなのです」
最後は原始的な訳か。
でもそれも楽しいな。
「ただ上手く行くかは潮と場所と運なのです」
まあそうだろうけれど。
でもそうなると。
今日は何とかして僕が釣らないと魚無しか。
頑張らないとな。
頑張っても釣れない時は釣れないのだろうけれど。
そういう意味で一番確実なのはセルビンかな。
でもセル瓶というと……
「そう言えばセルビンの中に入れるエサ、最初はどうするんだ。何か獲れてからはそれを切り身にして入れれば良いだろうけれど」
「最初は皆で岩場や潮だまりを捜索なのですよ」
「いや、実はエサはあるぞ」
寝ていたはずの川俣先輩。
いつの間にか輪に加わっている。
先輩はにやにや笑って口を開いた。
「セルビンのエサなんてタンパク質の匂いがすればいいんだ。だから最初は味噌と小麦粉を失敬して、味噌団子を作ってしかけておけばいい。正規のエサより若干弱いだろうけれどさ。小麦粉を混ぜるのはゆっくり溶けるようにするためだ」
「何故にそんなマニアックな技を知っているのですか」
知識量を誇る未亜さんも驚いている。
「何をかくそう去年の合宿で私が使った手だ。あれは伊豆だったけれどな。ではもうちょい寝る」
先輩、ふらっと倒れてそのままシャットダウン。
「気配も音も最大限に殺したまま動くので気づけないですよ」
未亜さんの意見に皆で頷く。
まさに猫だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます