第91話 朝食を作ります

「それではこちらも朝食の準備をしましょう。朗人先輩がいないので自信が無いですけれど」


 高校側の男子生徒がそう言った。

 名簿から考えてこの人が津々井先輩、昼から同じカヤックに乗る人だ。


「了解。材料を準備します」


 僕と彩香さん、美洋さん、彩香さんが立ち上がって車へ。

  ○ クーラーボックス内の『土曜朝居残り組』と大書した袋

  ○ 分厚くて深さのあるフライパン2つ

  ○ 食器類色々

  ○ 水のペットボトル

を持ってくる。


「手伝います。どうすればいいですか」

 女性の先輩がそう言ってくれる。


「この中に全部やり方まで書いてあるそうです」


 袋を開けると中にパソコン打ちらしいメモが入っていた。


『土曜朝居残り組朝食 チーズフォンデュの作り方

 ① フランスパンは斜めに、厚さ2センチ程度になるよう切って下さい

 ② 24センチフライパンに牛乳の小パックを全部入れ、沸騰寸前まで熱します

 ③ 入っているピザ用チーズを、袋1つ全部投入します

 ④ チーズが溶けたら『とろみ』の瓶を振って、中身を鍋の中に入れます

   なお瓶の中身は片栗粉と水と白ワインです

 ⑤ とろみがついたら完成です。タッパーの中に入っている茹でた野菜やソーセージ、フランスパンをチーズに浸して食べて下さい

 ⑥ 鍋は洗わなくて結構です。このまま朝出組の昼食メニューを作ります。

   出来れば少し中身を残しておいていただけると助かります』


「何かうちの通常メニューとかけ離れたお洒落さだな」

 津々井先輩がそう呟く。


「そうなんですよ。クッチーは料理が上手ですから。色々出来るしアレンジも上手いんです。何度もいっしょに合宿に行ったのに、結局真似出来ませんでした」


「そちらは料理担当、先生がなさっているんですか」

 おかっぱのいかにも女子高生という感じの先輩に尋ねられる。

 確か坂口先輩って名前だったかな。


「ええ。こっちは完全に先生任せです。野草料理とか釣った魚の料理とか。ただこの前のハイキングでは今川下りをしている川俣先輩がインド風炊き込み御飯を作ってくれましたけれど」


「いいなあ。こっちは少しでも料理が出来るの、朗人先輩だけだから」


「このメモは後でいただきます。朗人ならきっとこれで再現出来ると思うのです」


 小柄な方の女性の先輩がそう言ってにやりとする。

 こちらは流山先輩だ。

 話を聞く限り、どうも高校組は料理で苦労しているらしい。

 料理を少しでもする朗人先輩に全員で頼っている状態のようだ。

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