第90話 川下り前の準備中

「おはようございます」


 マイクロバスからぞろぞろ降りてくる。

 流石高校生、こちらより少し体格がいい。

 ただ女子中心で全体として優しそうな感じではある。


「おはようごさいます。宜しくお願いします」

 とこちらも挨拶して。


 そして先生らしき大人の女性も下りてきた。

 草津先生と同様小柄だけれど、見かけはもっと大人しそうだ。


「初めまして。秋津学園の小暮と申します。いきなりの2日間ですけれど宜しくお願いしますね」

「深草学園の草津です。こちらこそ宜しくお願いします」

 とそれぞれ挨拶した後に。


「さて、まずはカヤック組立を優先しますよ。高校生の方がパワーある筈でしょ。女子がやっているところは朗人君、文明君代わってあげて」


 そして小暮と名乗った先生は僕の方へ来る。


「ポンプ代わりますよ。ちょっと失礼して」


 そんな言葉の丁寧さと裏腹に容赦無く僕と場所を入れ替わる。

 そしてガッシガシと空気を機械のように入れ始めた。

 向こうでは普通に空気を入れている高校生男子2人。

 そして小暮先生と同じようにマシンのように空気を入れている草津先生。


 僕は理解した。

 この一見大人しそうに見える小暮先生。

 きっと草津先生と同類の体力超人だ。

 まあそんな訳で。

 カヤック組立の代わりに、パドルとかライフジャケットを用意する。

 ヘルメットまで準備したところで。


「それでは午前中組、集合して下さい」

 草津先生の声で指示が入った。

 午前中組は深草学園うちは先生と川又先輩だけ。

 なのでこっちは黙々とテントやテーブル等を用意する。


「やっぱりクッチーがやると色々キャンプも文化的ですね。テーブルまで用意してあって」


 小暮先生がそんな事を呟く

 クッチーというのは草津先生の事だろうか。


「小暮先生と草津先生はどんなお知り合いなんですか」

「大学時代に同じサークルにいたんですよ。私がちょっとだけ先輩ですけれど」


 山岳部だったっけか。

 小暮先生体力超人疑惑が更に深まった。


「クッチー、いや草津先生は体力もあるけれど色々器用でね。料理なんかも上手ですし裁縫とかも出来ますし。私もあれくらい出来ればいいんですけれどね。

 今でも時々合うので色々話をして、同じように中高一貫の学校の先生になって、同じような野外活動をしていると聞いていたので。

 今年更に上の元先輩達からカヌーを借りられたのを機会に、こうやってお試し会をしようという話になったんです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る