第72話 はじまりは快調です

 天気は最高。

 そして風が心地いい。

 学校から10分走ればもう海。

 キラキラと陽光を跳ね返していて気分は最高。


 今日走る太い道は自転車走行可の歩道がずっとついている。

 そこを人が歩いていないのをいいことにメーター読み20キロ以上で走る。


 ちなみに先頭は美洋さん。

 思い切りよく飛ばしまくっている。

 片側が海の場所が多いから信号で止まることもない。

 それもあってとっても快調。

 その後を未亜さんが追いかけて、彩香さんと僕はマイペースでという感じ。

 マイペース組でも普通に走っている時は時速20キロ超え。

 これは楽しい。


 快調に飛ばして蒲倉を超えて海沿いの公園で最初の休憩。

 先行した2人も公園内の砂利のところに自転車を入れて待っていてくれた。

 ディパックからペットボトルを出して休憩だ。


「もう枝ノ島が見えますね」

 確かにずーっと道路の延長からちょこっと飛び出て枝ノ島が見える」

「行きの半分は来ましたからね。あと30分走ればつくはずなのです」


 一方彩香さんは足下の海方面を観察中。

「ここの公園の海沿いで魚は釣れるかな」


 どれどれと覗いてみる。

 確かに川の出口でちょっとコンクリの突堤みたいなのが出ているけれど。

「うーん、ちょっと浅いかな。今回はトンネル経由で通らなかったけれど、葉耶麻の港の方がいいんじゃないかな」


「自転車で釣りに来られれば先生の車に頼らなくて済みますね」

 そうか。そうすれば先生が来れない休日でも釣りに行けるな。


「クーラーボックスとか装備をどう積むかが問題なのですよ」

 未亜さんの冷静な意見。

 確かにそうだ。


「バッグ型のソフトクーラーでも買えば何とかなると思いますけれど」

「それと短くなる竿と、色々買い足すと結構費用がかかるのですよ」

 未亜さん、しぶどく冷静。


「うーん、毎週末魚祭り計画は難しいですか」


「先生がいない時位は活動お休みでもいいと思うのですよ。自転車があれば買い物にも出られるのですから」


 未亜さんはきっと正しい。

 こうやって暴走しがちな美洋さんをコントロールしていたんだろうな。

 そんな2人の関係性がふと見える。

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