第70話 恐ろしい罰ゲームの噂

 そんな訳で。


「歩道を使えるところは歩道を使います。まずは自転車に馴れる事が目的ですから無理しないで。安全第一で行きますよ」

 との事で。


「今日はケイデンス70キープとかペダルの位置は足の親指伸したの膨らみ辺りとか煩い事は言わないからな。まったり行こう」

 知らない単語が出てきた。


「先輩ケイデンスとは何ですか」

「1分間にペダルを回す回数。70くらいで安定して走れるとなかなか気分いいんだ。テンポが60後半の曲をスマホで流しながら練習すると楽だぞ。ただし自転車道とか走りやすいところでな」


 なるほど。

 そういう専門用語がある訳か。


 そんな訳で自転車で走り出してから10分程度。

 早くも目標地点に到着してしまった。

 目標地点とはショッピングプラザ葉耶麻ステーション。

 まあちょっと観光向けっぽいショッピングセンターだ。


「思った以上にあの自転車、速かったのです」


「気を抜いても時速20キロ位は出るからな」


「それで未亜の行きたかったパン屋さんとはどこですの」


「こっちなのです」

 出入口から奥へ向かってわりとすぐのところにそのパン屋のブースがあった。


「本当は5キロくらい走れば本店があるのです。でも今日はこっちの店で我慢するのです」


「それでお勧めは何ですか」


「有名なのはエシレバターを使った食パンなのです。でも私はカンパーニュとかリュスティック系が好みなのですよ」


 確かに美味しそうだ。

 ちょっとお値段高めだけれど。

 先輩がにやにや笑っている。


「ここのパンとあとマーラウのプリンは高等部では罰ゲームとしても有名らしいぞ。美味しいけれどほどほど遠くて高いからな。ここはまだいい。マーラウは店自体はここより学校に近いけれど、プリン1個で800円くらいする。確かに美味いけれどな。そんな訳で恐怖の罰ゲームとして恐れられているらしい」


 それは確かに恐ろしい罰ゲームだ。


「そんな罰ゲーム当たったら、奨学生は給食以外の食事抜きですね」


「しかも1個という事はまず無い。人数分だぞ」


「ウィークディは給食のみになってしまいます」


「まあうちの部はやらないけれどな」

 頼むからやらないままでいて欲しい。

 奨学生には死活問題だ。

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