第63話 今夜は、おやすみ
ちょっと考えて。
出来るだけ正確かつ正直に答えようと僕は決める。
「全く怖くないかというと、狐火そのものは若干は怖いかもしれないです。知らないものであるという意味において。
でもだから未亜さんが怖いかというと、そういう事は無いですね。
術を使えようが未亜さんは未亜さん。美洋さんが信頼しているのは見てわかっていますし、美洋さんの目が間違っているとも僕は思いません。未亜さんがこの部に入ってから今までの言動も嘘だとは思えない。
もう一度結論を言います。狐火は確かに見たらぎょっとはします。でも未亜さんを怖いとは思いません。以上です」
未亜さんはにこりと笑って頷いた。
「どうも。ご理解ありがとうという処なのです。これで大分安心出来たのです」
ウンウンという感じで未亜さんは頷きながら続ける。
「本当はもう少し黙っているつもりだったのです。でももし色々な事が明らかになって、悠君がそれを受け入れられなかった場合。
きっと美洋が悲しむのです。彩香も悲しむと思うのです。
だから後に思い切り悲しむより、今確かめて駄目なら駄目とはっきり切りたかったのです」
僕はちょっと考える。
あえて未亜さんが自分を前面に出して確認した事の意味を。
結果、至極簡単な結論に至る。
「友達思いなんですね、未亜さんは」
「そういう訳ではないのですが、美洋は私にとっても特別な友達なのです。だから出来れば美洋を悲しませたくないのです。
でもそのせいで悠君を試すような事をしたのは申し訳無かったと思うのです」
僕は首を横に振る。
「いいや、僕はそれを悪いとか不快だとかは思わない。未亜さんはそれだけの必要があって、自分の責任で自分を盾にしてそれを確認しただけだろ。むしろいいな、とさえ思えるよ」
むしろ僕としてはかなり好きな考え方だ。
ただ好きという言葉を異性に対してつかうのは抵抗がある。
例えそれがLikeの意味であっても。
どうかそれを自意識過剰と言わないでくれ。
「まあそんな訳で、今後とも宜しくお願いするのです」
「こちらこそ」
取り敢えず未亜さんと改めてそう挨拶した後で。
「さて。お礼ついでに別の術を披露させていただくのです。
悠君はこれからまっすぐ部屋に帰って寝袋に入って欲しいのです。
目を閉じて30秒、それでぐっすり眠れる術をかけてあげるのです」
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