第62話 解説その2と質問
ふっと火の玉が消えた。
そしてがさっ、という足音がする。
僕は左足を軽く引く。
いつでもどっちにも動けるように。
「いや、悪かったですね。私ですよ」
その声で誰かすぐわかった。
未亜さんだ。
ただ、まだ力は抜けない。
「そんなに警戒しなくても大丈夫なのですよ。何かしようとは思っていないのです。
昼に続く解説編その2でもしようかと出てきただけなのですよ。
私は元々睡眠が短くてすむタイプなのでして」
そう言えば昼間もそんな事を言っていたな。
そんな事を思い出す。
「取り敢えず脅かしてしまったのは申し訳ないです。ちょっとばかり説明無しでやり過ぎたかなと反省しているです」
ん、そういう事は?
脅かした、と言ったのは足音の事だけじゃないだろう。
とすると、ひょっとして……
「あの火の玉は未亜さんですか」
「ええ、私の術なのですよ」
未亜さんは頷いた。
とすると、更にひょっとして……
「前にここでテントを張っていた時、出てきた火の玉ももしかして」
「ええ。私なのです。美洋が外泊なんてしたので念の為確認しに飛ばしてみたのですよ。あれを使えばある程度の情報が探れますので」
未亜さんはあっさりとそう認めた。
で、ちょっとだけ疑問。
「昼の話ですとそういう面を見せるのはもっと先なのかと思えますけれど、どうして今それを話すんですか」
「ちょっとだけ、確認してみたくなったからなのです」
未亜さんはそう言って。
不意に目の前に火の玉が2つ現れた。
その光で未亜さんの表情が見える。
細い笑っているように見える目が、ちょっと笑っていないように見えた。
何故かはわからないけれど。
「例えば私は火の玉、まあ狐火と言いますけれど、これを使ってかなり遠方の出来事を見たり聞いたり出来ます。
こういう不可思議な術を使える私を、悠君は怖いと思いますか」
いつもと同じ口調に聞こえる。
でも僕はどこか切実な、真剣な何かを感じた。
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