コロナ対策 現金支給のメリットとデメリット

 前回のエピソードで日本政府が全国民に対し5万円越えの現金支給を実施するという案が浮上したと書いたが、現在では一律10万円案が最有力となっている。


 そこで今回はこの現金支給のメリットとデメリットを深堀していきたい。


 今回議論されている現金支給には専門家や世間の間でも賛成と反対の声が大きく上がっている。もちろん無条件で貰えるならそれに越したことはないので、世論の賛成の声が大きいのは間違いない。


 では、反対の声の内容はどうだろう?この時期に現金支給しても将来の不安から貯蓄に回す人が多いので経済効果は少ない。この意見が大半だ。


 確かにそれは過去に実施した対策からも証明されている。直近でいえば2009年のリーマンショック不況による定額給付金だ。65歳以上及び18歳以下は2万円、それ以外は一律1万2千円を政府がばら撒いたが、このお金が家計の支出に上乗せされて使われたというデータは取れなかったようだ。つまり通常の家計や貯蓄に使われ政府が期待するような使い方はされず、ばら撒いた数兆円のお金が市場に流通することはなかったということだ。


 では1999年に実施された地域振興券のような買い物にしか使えない商品金という案も出ているのでそれも考察してみようと思う。


 地域振興券は地域活性化が目的で自分の住んでいる周辺の地域のお店にしか使えないという物だが、確かにパッと見では現金ではないので使わないと損をして貯蓄には回せないと思われるだろう。


 しかし実際はそうではない。例えば地域振興券でお米を1万円分買ったとしよう。お米は生活必需品なので地域振興券があろうがなかろうが生きるためには買うしかない。なので地域振興券でお米を買って、元々家計として準備していた1万円の現金を貯蓄に回すと結局のところ現金支給と何ら変わらなくなる。


 そして地域振興券のネックはそれだけではない。住んでいる地域でしか使えないので地域活性化に繋がるのは間違いないが、田舎暮らしをしている人にとってはかなり深刻な問題がある。格安ディスカウントショップなどがない地域の人たちはそこで使えないからだ。


 田舎では殆ど定価でしか物を売っていない個人経営店が多い。だから田舎暮らしの人は週に1回など町に車で出かけて大量に買い物を行う。近場の店では一本120円のドリンクが町のディスカウントショップでは40~50円などで特売されているのだから当然と言えよう。


 町に住んでいる人はそのディスカウントショップで地域振興券が使えるのに、田舎暮らしの人は常に定価で売られている個人経営店でしか使えない。この不公平感も問題の大きなところだと思う。


 そして現金支給だろうが、地域振興券だろうが、今回は今までと違い10万円なのだから多少は今まで控えていた娯楽費などに回るのではないか?という声もあるのも確かだが、例えば旦那、嫁、子供二人で40万支給されたとしても、半年計画で家計に回されると、どう足掻いても貯蓄に回されてしまう。


 つまり、経済効果を狙うのならば通常買う予定の無いところにその10万円を使ってもらう他ならない。


 無論、現金支給の10万円はコロナで職を失ったり給料が激減した人に対する救済処置だという考えもできるが、それは飽く迄も生活支援であり、経済対策の意味合いは薄い。


 職を失った人へ一度きりの10万円を支給してもその場凌ぎにしかならず、結局のところ職が失われないよう経済を回すように現金支給されたお金が使われないと本質的には何ら意味を成さないのだ。


 私はこの問題を解決するのに一つの可能性を考えた。


 今までと違い今はSNSが普及しているという部分に目を向けて欲しい。SNSを通じて困っている人は声をあげ、世間の人がそこに今回支給されるお金を使うという行動の輪が広がれば少なからず効果は表れるだろう。


 この考えを所詮は楽観論だと考える人も多いと思うが、私はかなり現実的な効果があげられると思っている。何故なら人間の集団心理というのは構築されたシステム以上の成果があると既に多数の例で証明されているからだ。


 例えば生産終了が発表された懐かしいお菓子がSNSで話題になって大量に売れたり、とにかくSNSで拡散されると一気にモノが売れたり、店が繁盛したりする。これは宣伝効果というのも勿論あるだろうが、『皆が買うなら私も買いたい!』という、宣伝というよりも集団心理に影響した効果だと思う。


 このように、『ネットで困っているのを見たので現金支給で貰ったお金で買わせてもらいました!』などという声がSNSのあちこちで飛びかえば、それを見た人が真似をして、どんどんとそれが広がっていき、最終的には貯蓄に回すよりも困っている人が助かるお金の使い道をする報告が格好良いという集団心理が生まれれば、政府の狙い通りの効果が表れるだろう。


 現在テレビなどで芸能人が劇団員が劇場を開けないので廃業の危機にあるという声が多く上がっているので、まずはそれを危惧している人が知り合いの芸能人著名人に『現金支給されたお金で劇場に行ってきました!』と、SNSで報告してもらえるようにお願いしてみてはどうだろうか。


 恐らくそれを見た一般人が真似をして同様の報告をSNSでアップするのは想像に容易い。

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