第八章二節If ファースト・○○○(後編)
うふふ、龍野君。
必死になって私を味わうのは、見ていて心地が良いわ。
何せ、「与える者」と「与えられる者」がはっきり分かれた様子を、この目でつぶさに見られるのだから。
さて、後ろに腕を回して、龍野君の頭を抱えたのだけれど……気づいているのかしら? いえ、全くもって気が付いていないみたいね。
だったら話は簡単よ。
少しドレスの紐を緩めて、胸元をはだけさせれば……うふふ。惹かれるかしら?
(あんっ……)
惹かれたみたいね。
それにしても、今や立派な
けれど、ここまで堕ちても、私に痛みが来ないようにしてくれる。やっぱり、龍野君は
さあ、私は貴方に、私を許すわ。
めいっぱい堪能してちょうだいな、龍野君。
五分後。
うふふ、むしゃぶりついているのね。
お母様にお願いして、体を磨き上げた結果がこれね。ああ、ゾクゾクするわ。
けれど、苦痛を取り除くべき所がまだあるはずよね?
私は手を這わせ、龍野君の男の象徴を優しく握る。
ビクリとしたわね、龍野君。貴方の本能は、危険をちゃんと認識しているのね。けれど、大丈夫よ。
何故なら、今回は痛覚を与えることを目的としないのですから。
指先で握っているソレを操って、龍野君に適度な刺激を送る。
ビクンビクンと、ソレは震える。それに龍野君も、ピクピク震えているわね。
最早言葉も発せないのでしょうけれど、それでいいのよ、龍野君。
私は龍野君のタガを外すことを、望んでいるのですから。
ふふ、少し手を上下するだけで、一段と……。最早男としての威厳は無いわね、龍野君。
安心なさい。私は龍野君の体を辱めたいのだけれど、心を辱めたいわけではないのよ。むしろ貴方は、自らの優位を知ることになるわ。
何故かって? 私が貴方を仰ぎ見るからよ、龍野君。うふふ。
さあ、龍野君。そろそろ貴方は、私を存分に味わいなさい。
そう言って私は、手による
うふふ、ビクビクしているわね龍野君? まるで震える小動物みたい……。
けれど立場は逆転するわ。少なくとも、見た目はね。
私は目的を達成しようとしているわ。龍野君から奪い取るという結果で、ね。
その為のダメ押しを、今、するわ。
私はドレスを脱ぎ、我が身を大気にさらした。
「龍野君。そろそろ貴方は、自由に振る舞えるわ。だから、心を決めて飛びつきなさいな」
けれど貴方は、最早本能のみで行動する状態。だから私が、お膳立てを済ませておいたの。
あはっ、ふらつきながら私に歩み寄るのね。
今はどんな目をしているのか、見せて頂戴?
あん。押し倒されちゃった。
けれど、うふふ。お陰で目を見ることが出来たわ。
見事なまでにギラついているわね。
これでパブロフの犬を飼う事に成功したわ。けれど、目的に利用する為じゃない。
あくまで私を味わってもらうための過程よ。
貴方の為に磨き上げたのですもの、腐らせておくのは勿体ないわ。そうは思わなくて? うふふ。
話を戻して。
今の私は、靴下を除いてむき出しの状態よ。
だから龍野君が望めば、一瞬で
さあ、龍野君の動向を見守る他は無いわ。
私は余裕を
あら、速いわね。もう脱いだのね?
そして私の腰をがしりと掴んだわね。
今度は私が唾を飲み込む番だわ。
あんっ。ついに望みを果たしたわね。体は果てていないけれど。
つっ……それにしても、血と痛みはあるものね。これこそが、儀礼の代わりなのね?
まあ、血はともかく、痛みはすぐに上書きされてしまうのだけれど。
「…………」
ふふ、龍野君。ぎこちないわよ? 初めてなのだから、仕方ないのでしょうけれど。
私は一度龍野君の脇の下から腕を伸ばし、龍野君の後頭部を抱えてキスさせる。
んっ。やっぱり、小学生以来の感触ね。
けれどあの時とは違うわ。圧倒的に、昂っていられる。まるで麻薬ね、うふ。
「んっ……ぷはぁっ」
名残惜しいけれど、窒息死はしたくないのよね。
それにしても、唾液が糸を引いているこの光景。龍野君はどれほどゾクゾクするか……私に入り込んだこの子で確かめるとしましょうか。
うふふふ、ピクピクしてる。いつ欲望をぶちまけてしまう……いえ、ぶちまけてくれるのかが楽しみね。
全ては龍野君次第……じっくり味わうか、激しく
「いいわよ……貴方のお望みのままに。龍野君」
何度ダメを押す必要があるかわからない、この状況。けれど、これでいいの。
主導権はあくまで私にあるのだから。
まあ、自然の摂理よね。「していれば会話不能になる男」と「しながらでも会話可能な女」、合意の上ではどちらが上か、はっきりしているのですから。
ん……っ? あは、龍野君、動き始めたのね?
私の中を味わいながら、
いいわよ、存分に味わいなさいな。
「ふあっ……あっ……」
いけないわね、私。我慢の限界で、声を漏らしはじめてしまっているわ。
けれど龍野君は遠慮しない。してもらっては困るのだけれど。
「あっ……龍野、君っ……」
そろそろ私は限界ね。それに龍野君のも破裂寸前ですもの。
この調子だと、同時かしらね?
「きて……っ……」
私は腕を、龍野君の肩の上に回す。
そろそろ貴方に屈服させられたいのよ、私は。
「…………」
龍野君は無言のまま、私の後頭部に手を添える。
「…………ッ」
そして静かに唇を合わせてきた。
ああ、どんどん魔力が流れ込んでくる。龍野君の、新鮮で、温かい唾液と共に。
「…………ぷはっ」
っ……名残惜しいわ……。
けれど大丈夫。次にはもっと温かいものが、魔力と共に流れ込んでくるのだから。
「…………」
顔が真っ赤ね。
もう限界かしら……? けれど私が……ッ……!
「ああ、らめっ……!」
ふあっ、はあっ、はあ……。
紛い物とは比べ物にならない感触……やっぱり、想い人によって達するのは、格段に違うわね。
「…………」
んっ、ビクビクと震え始めた。膨れてもいるわ。
さあ、龍野君……貴方の魔力、いただきます。
「…………!」
……ッ!
じわりとした温もりが、私の中を駆け巡る。
私は先程の感触とは違うこの感触を味わい、また、私の中にとどめんとする為……龍野君をしっかりと抱きしめていた。
現実にはこんなことに意味は無いのでしょうね。けれど、私の本能が求めているの。
龍野君の筋骨隆々の体を、しっかり抱きしめたい、とね。
けれど龍野君は、一瞬微笑んだ後――再び私を見下ろした。
「あんっ。もう、またしたいの?」
これは予想以上ね。
龍野君が、そこまでの
それでも、私はゾクゾクしている。
さあ、この二人だけの宴……どうなることかしらね?
*
二回目。
「…………」
「もう、これでも……落ち着かないの、龍野君?」
三回目。
「…………」
「まだまだ、余裕、だけれど……貴方は、いつ落ち着くの……?」
四回目。
「…………」
「はぁっ、はぁ……。そろそろ、目が、霞んで……」
五回目。
「…………」
「くっ、はぁ……呼吸、がっ……」
六回目。
「…………」
「ねぇ、龍野君……いつ、落ち着く、の……?」
七回目。
「…………」
「駄目、そろそろ、意識が、本当に……っ!」
八回目。
「…………」
「駄目っ、やめ、やめて……!」
九回目。
「…………」
「…………」
私はここで意識を失ってしまったわ。
十回目。
「…………」
「…………」
このことは、体には刻み込まれていたのですけれど、おぼろげなのよね……。
その後。
私達は日付が変わるまで、抱きしめあっていたわね。
最終的に龍野君の思いのままにされてしまったのが少し悔しかったわ。
けれど、ごちそうさま。
一度体を清めて、それから本格的に自らの体を癒さなくてはね。
私は眠っている龍野君にキスをして、静かに腕の
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