第5話 破邪ノ英雄と親友、そして戦い?

此処は雲よりも下で、地上からは遥かに離れた空中。

そんな場所で、俺とシュンは浮遊していた。

シュンの背には”妖精の羽”があるように、俺の背には『龍のドラゴン・ウィング』が存在する。


これは、俺とシュンがそれぞれに配下を持っていることが関係するのだが、今は割愛させていただこう。

久しぶり(といっても、俺にとっては1日ぶり程度でしかないのだが)に俺と再会したシュンは、本当に嬉しそうに笑顔を浮かべていた。


「シュンは、これから勇者を続けていくつもりか?」


「いや、俺はレイと一緒に行くよ。レイが出て来るまでにこの世界を”視る”ことは出来たから。それに、レイは俺の知識が必要だろ?」


当然のように告げてくるシュンに、やはり嬉しく感じるのは不思議では無いだろう。

フッ、と笑みを浮かべた俺は、シュンと同じように、当然のように、告げた。


「ああ。頼むよ?」


「おお!」


これが、運命の歯車の、最初のパーツだ。


「それで、まずは現在の天空城が位置しているのは何処だ?」


天空城は、三年に一度の周期に大きく移動する。それは、俺が同じ場所に留まらないように設定しているからだ。


「ん?まずは、この時代の国の情報を教えるよ。まず、神歴に存在した4つの国は、覇王国<シュビリオン>以外が分裂して独立した国が作られているんだ。全部で9に増えた国々は、今の所は平和に動いているよ。この9つの国で、最も国力において優れた3つの国を、三大王国と名付けている。それが、シュビリオン覇王国。レイデーン王国。スバルツァ教国。この3つさ。ちなみに、軍事力だけで考えるなら、獣人連合国も三大王国に並んでいる。此処までは大丈夫?」


「ん?ああ、まあ大丈夫だぞ。ただ、シュンはなんでそんな喋り辛そうに話してるんだ?一人称も、僕だっただろ?」


そう俺が指摘すると、シュンは恥ずかしそうに頭を掻いてから、1つ頷いた。


「これは、少しでも勇者の気品?存在を引き立てようと思ったんだよ。でも、レイがそうしてほしいなら僕はコッチにするよ」


「そうか?では、そうしてくれ」


「うん!で、話しの続きだけど、まずはこれを相手にしよっか?僕も、久しぶりにレイの力を見たくなっちゃったよ」


そう言ってレイが振り返った先には、一振りのが浮遊していた。

禍々しい、黒と紅の色を放ち、明らかな敵意を俺達に見せている。


_ふむ。やはり、武器であろうが此処まで力を蓄えれば意識も存在するか。


そんな事を考えながら、俺はシュンの顔を見た。


「いいだろう。久しぶりに、俺も戦いたくなった。流石に、”今の”シュンには厳しいだろう」


「そうだね。じゃあ、此処は僕の親友であるレイに任せるとするよ」


「任された」


短くそう返事をした俺は、シュンよりも一歩分前に飛行した。


風が吹き、時が止まったような静寂は、大剣によって打ち消された。

突如、高速で俺に向かって飛来した大剣を、咄嗟に召喚した剣で防いだ。


キイィィィン!!


高い金属音が響き、熱気の篭った火花が散る。

俺の手には、神々しく輝く一振りの剣。対する大剣は、禍々しい輝きを放っている。

しかし、まだ俺の召喚は不完全のようで、勢いに負けている。


「ッ!デュランダル!!」


その起句を唱えた途端、大剣との力は拮抗した。


「流石、デュランダルと同等の剣だね!」


呑気にそんな事を隣から言うシュンに、一瞬イラッとするがこれも何時ものことだ。

こんな事で怒っていたらシュンの親友などやっていられない。


ただ、意見としては俺も同じだ。まだ幾つか切り札は残っているが、素の俺とデュランダルに拮抗出来る力と思念を持つというのは珍しい。


_まあ、それが禍々しい剣でなければよかったのだがな。


そんな事を考えながら、俺は左にステップを踏んだ。

相手がいなくなった大剣は、その勢いのままに振り下ろされ、空中で1回転した。


「フンッ!!」


そんな大剣に対して、横からデュランダルで穿つ。

淡い水色に包まれたデュランダルの威力は、大剣に刃こぼれを起こすのには充分なようだ。


_1階級基本技<斬撃スラッシュ


「さらにっ!」


一声掛けてから、俺はさらにデュランダルに淡い輝きを灯した。


_3階級連続技<斬撃孤ムーン・スラッシュ


デュランダルを振り下ろし、その勢いのままに切り上げる。

たった2連撃ではあるが、同じ箇所をかなりの威力で斬りつけられた大剣には、確かな傷が付いている。


だが、では終わらない。


_6階級秘儀技<黄銅乱舞>


円を描くようにステップをしながら、一瞬で切り裂いていく。

狙うは、当然のように大剣の付いている傷の部分だ。


_4階級単発技<波動斬>


さらに、広範囲に及ぶ波状攻撃をお見舞いする。

横薙ぎに剣を払うと、蒼い色の幻影が現れ、それが大剣を通過する。

その直後、まったく同じ場所に斬り付けられた後が出来るのだ。



大剣との戦いは、最終局面に入っていた。

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