破邪ノ英雄は幸せを望むそうです(仮)
抹茶
物語は、此処から始まる
序章
第1話 プロローグという名の説明会
戦歴73年。
100年以上も続く国々の戦いは、今も尚、収まりを見せなかった。
『わああああああああ!!!!!!!!』
戦場に木霊する兵士達の叫び声と、剣が衝突する金属音。魔法の飛び交う光景。
鮮やかな色を見せる魔法は、衝突した途端に災害を齎す。
1万人に1人の割合でしか存在しない魔法を操る人、魔道師。その存在が戦場を大きく左右するのは、想像も容易い。
「我が敵を大いなる炎の柱にて焼き尽くせ!炎柱!!」
炎を散りばめた球体は、衝突とともに炎の柱を築いた。荒れ狂う炎の柱は、周囲にも絶大な熱気を撒き散らしながら、その姿を薄くしていった。
巻き込まれた兵士は、そのほとんどが命を散らしていく。この一発だけで、1軍の半数から全てが死に絶えてしまうのだ。
「ぎゃああああ!!」
「熱い!!熱いよぉっ!!!」
生き延びた兵士達も、その後死に絶える運命しか待っていない。
魔法に対する耐性は、何一つとして確立されていないのだ。
衝突する2つの軍の片方、右側の兵士達には、剣と馬の紋章が鎧に刻まれている。この紋章は、帝国を表す紋章だ。
対して、もう片方の左側の兵士達の鎧には、杖と盾の紋章が刻まれている。此方は、教王国を表す紋章だ。
兵士の数が多く、主に騎兵によって戦場を駆け抜ける帝国に対し、教王国は、魔道師と重鎧の大盾兵を使って戦っている。
戦況は、教王国が優勢だ。
なにしろ、帝国の騎兵は盾に拒まれ、そこを魔法の範囲攻撃で潰されている。
これは、圧倒的に帝国には不利な戦いだ。
しかし、魔道師が圧倒的に有利かというと、兵士達にも特徴がある。
「
1人の兵士がそう叫ぶと同時に、その手に握る剣が淡く水色に輝いた。
その直後、一瞬で剣が振り下ろされ、盾は真っ二つに割れた。
輝きも同時に失せ、兵士は一瞬の硬直の後、盾兵に止めを刺し、その屍を超えて進んだ。
これは、魔法に対を成すように存在する、
この2つ以外にも、様々な剣技が存在するが、主にこの2つを取得しているのだ。
この2つ以外の剣技には、全てにおいて長い鍛錬が必要となる。よって、その取得出来た剣技には、全ての国公認の階級が設定される。
斬撃と刺突を1として、設定されるその階級は、最高で10まで存在している。しかし、斬撃の1つ上である、2の剣技の中で最も取得が簡単な『テューク』という技の取得に、早くても1年は掛かるのだ。
また、剣技の中には盾による技も含まれている。
「おりゃあああああ!!!」
叫び声をあげながら剣を振り上げた兵士は、盾を持つ兵士に向けて振り下ろす。
それに対して、盾を持った兵士は、その盾に淡い紫の光を灯した。
「フンッ!!」
気合の入った短い息が零れると同時に、盾と剣は衝突した。
結果、盾には1つも傷が付かず、剣はその刀身から折れ曲がったのだった。これは、盾によって攻撃を防ぐ、『パリィ』という技。剣技の階級で表すと、2に部類される技だ。
この技も、取得はかなり難しく、取得出来る者は少ない。
「ハッ!!」
剣を折られた兵士は、なす術無く、盾の突きによって吹き飛ばされた。
剣技にも、弱点は存在する。それは、発動後の硬直だ。
剣技は、その”剣技”として1つの決められた動作が設定されている。
斬撃の場合は、素早く振り下ろす、が動作だ。剣技というのは、その動作を補正してくれるのだ。
勢いを速く。威力を高く。剣筋を確かに。
その補正によって生まれるのは、身体への反動。一瞬で高速に動いた身体は、その速度と時間に比例して硬直してしまうのだ。
混沌とした戦場。荒れ果てた大地。欲望渦巻く国内。殺意飛び交う魔の森。
命の価値がほとんど考えられていないこの時代、この年。
107年続いたこの戦争に、英雄は現れた。
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