アンドロイドは電子の神を信仰するか

糸尾敦也

月曜 A.M.9:00

 俺は間違えなかったはずだ。

 もし、俺の人生に間違いがあったとするならば、それは生まれたことだろう。


              〇


 靴を見れば、そいつのことがだいたいわかる。

 単に高い靴を履いてるかどうかだけじゃない。

 履きなれているかどうかも、ちゃんと見ればわかるもんだ。

 単なるずぼらな奴だって、靴はちゃんとしたものを買ってることが多い。

 一定以上の値段がする奴を買った方が、結果的に楽だからな。

 カフェテラスで人を待ちながら、道行く人の靴を観察する。

 あの物乞いはプロだな、なんて思っていると異様な靴が目に入る。。

 それは初めから脱ぐことを考えられてないような、足と一体化している靴だった。

 どんな奴が履いているのか、と顔を見てすぐに興味を失う。

 なんてことはない、アンドロイドだ。

 最近、街で急に見始めるようになったそれを、俺はよく知らないでいる。

 人そっくりなそれは、後頭部にわざとらしくついているゼンマイでしか見分けられない。

 いつからか現れて、人間社会の中に溶け込んだのだ。

 アンドロイドは何をするでもなく、ただ街を歩くだけだ。

 それはさながら人を監視しているようでもあった。

 もしかしたら、俺たち人間はあいつらに侵略されたのかもな。

 馬鹿な考えが頭をよぎる。

 本気で思っているわけではない、暇が過ぎて頭がどうにかなっているのだろう。

 すっかり冷めたコーヒーを尻目に、無料の水を飲み干す。

 金のない学生みたいな真似したくはないのだが、待ち人が来ないのだから仕方ない。

 店員の冷えた目から逃げるように、俺は靴の観察に戻った。

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