白銀の少女とガルディアアイン
世界の尻尾
序 章
0.1 序章 喪失した記憶
初稿:2018.04.21
辺り一面真っ暗な闇。
そこへ差し込む、月明りと満天の星の微かな光。
その光のおかげで、辛うじてこの場所が森のなかだということが判る。
俺は闇の森をひたすらに走り続けていた。
木の根や転がる岩に、足を取られないよう必死である。
二人の男に追われているのだ。
一人は、身なりの良くない薄汚れた綿の服を着た男。もう一人は、縁に豪華な金刺繍があしらわれた黒いローブの男。
薄汚れた綿の服を着た男は、湾曲した剣を握り、明らかな殺意を向けている。
何故追われているのか理由は分からない。
――少し前……。
目が覚めたとき俺は、この暗闇の森にいた。
少し肌寒い。
高く覆い茂った
「ここは……、どこだ……」
記憶を辿って見ようと思ったが、辿るための記憶が無いことに気付く。
「俺は……誰だ……」
いくら考えても、自分の顔どころか名前でさえも思い出すことができない。
慌てて自分の姿を手探りで確認する。
良く見えないが、身に着けている服がビジネススーツであることは理解できた。手に持っている物は、黒い革製のビジネスバッグだ。
仕事中だったのだろうか。こんなに暗い森に、俺は一体何の目的で来たのだろう。
ビジネスバッグの中身を見れば、何か思い出すかもしれない。
開こうとした瞬間、背後で誰かの話し声が聞こえた。
振り返るが姿は見えない。そこには暗い闇があるだけだ。だが、声だけは確かに聞こえてくる。
とても小さな声で、話の内容までは聴き取ることはできない。
人の声を聞き、不安感から僅かに解放され安堵した。ここがどこなのか、尋ねれば判ると思ったからだ。
「あ、あの、すいません」
俺の声に反応して、前方の黒い茂みが揺れる。
次の瞬間、茂みから突然男が飛び出す。
「キェェェ!!」
奇声を上げるその男に驚いて、俺は思わず後ずさりをした。何が起こっているのか判らなかったが、右手の湾曲した剣を振りかぶったので、反射的に持っていたバッグで防御態勢を取った。
振り下ろされた剣は、バッグに激突して鈍い音を立てる。
その衝撃で大きく態勢を崩し、よろけた俺は近くの
「ぐぁ……」
激しい痛みが全身を駆け巡る。
肩を抑え痛みを堪えながら二人の男の方へ視線をやる。
奥の黒いローブの男は、黙ってその様子を見ている。斬りかかってきた男は剣を構え直し、再び襲い掛かって来ていた。
こ、殺される……、とにかく逃げなければ。
急いで立ち上がり、暗闇の森を闇雲に走り出した。
――そして今に至る。
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