第12話 メルシア

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「あなたは、これからどうするの?」

「・・・私には・・・あの地、遺跡を探索する目的があったようなのですが、今はそれを思い出すことが出来ません。・・・しばらくは記憶の回復に努めようと思います」

 地上への帰還は順調に進み、レイガル達は日暮れ前にはギルドに戻ることが出来た。ちょうど夕食時ということもあり、回収物の清算を終えたエスティは第二層で助けた女性メルシアを食事に誘い会食の席を設けていた。

「そう。もし良かったらだけど・・・メルシア、あなた私達の仲間にならない?実を言うとそこのレイガルとは昨日にパーティーを組んだばかりなの。どうせ、パーティーを組むなら二人より三人が良いのは当然だし、あなたのような根源魔法の使い手は貴重な戦力となる。どうかしら?記憶の回復をただ待つよりかは、探索をすることで刺激され思い出し易くなるかもしれない。悪くない選択と思うけど?」

「私を・・・手助けしてくれるというのですか?」

「取引よ、あたし達が遺跡に潜るのは報酬が目的だけど、遺跡の奥に向かうには仲間と戦力が必要。あなたの目的は、おそらく根源魔術士として遺跡に掛けられている古代の魔法の調査だと思われるけど、深部に向かうにはやはり仲間と戦力が必要。利害が一致しているというわけ。それにあなたも生きて行くにはお金が必要でしょ?私は仲間に対しては報酬の取り分はきっちり平等に分けるわよ!もっとも、リーダーは私だと認めて、指示には従ってもらうけど。どう?」

「・・・ありがとうございます!エスティさん・・・私を仲間に加えて下さい」

「ええ、もちろんよ!レイガルも賛成してくれるわよね?メルシアを仲間に迎えることに!」

「ああ、歓迎だ!」

 エスティの問いにレイガルは当然とばかりに頷く。ミノタウルスに敗れてはいたが、本来メルシアは〝火球〟を扱えるほどの腕前を持った根源魔術士だ。あれは一人で相性の悪い体力に優れた敵に立ち向かった結果であって、接近を遮る前衛、すなわち自分がいれば彼女は後方からその力を充分に発揮してくれるはずだ。エスティがメルシアを勧誘したのも単純に記憶障害を患った持った彼女に同情しただけでなく、純粋にパーティーに必要な戦力や知識者として判断したからだろう。とは言え、メルシアの腕前が駆け出しの魔術士だったとしてもレイガルは賛成したと思われる。美女を拒む理由はないのだ。

「ふふ、あなたなら絶対にそう言うと思ったわ!メルシア、そこのレイガルは一見は真面目そうだけど、中身は結構スケベだからね、隙を見せちゃ駄目よ。変なことをされたら我慢せずに直ぐにあたしに相談しなさいね!」

「おいおい、俺は人並みにスケベな男かもしれないが、嫌がることはしたことはないぞ!」

 一部の事実は否定のしようがなかったが、レイガルは後半については歴然とした抗議を行う。

「・・・そうね。それは認めてあげる。まあ、一応気を付けてねメルシア!」

「了解しました。これから、よろしくお願いします。エスティさんにレイガルさん!」

「ああ、もう仲間なんだから敬称は付けなくていいわよ。それに意見があるなら、今のレイガルみたいに遠慮なく言ってね。必ずしもそれを受け入れるとは言えないけど、聞く耳は持つつもりだからね!」

「ええ、エスティ・・・忠告をありがとう」

「うん、そう。それでいいわ!じゃあ、この場はリーダーであたしの奢りで乾杯にしようかしら?」

 メルシアの反応を喜びながら、エスティは給仕にワインを三杯注文する。

「縁あって仲間になったメルシアとレイガルに乾杯!」

「同じくメルシアに、そして太っ腹なリーダーに!」

 ワインが運ばれると音頭をとったエスティに続いてレイガルも続く。ワインは麦酒に比べると割高な酒だからだ。

「危機を救ってくれ、仲間として迎え入れてくれたエスティとレイガルに!」

 最後にメルシアが宣言して三人は乾杯を交わした。

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