第5話 結成
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「これが冒険者の登録証・・・」
「そう。これを持っていれば遺跡に潜る許可を得られるし、ギルドの宿泊施設や食事を割安で利用出来るの。そのあたりの仕組みはどっちのギルドも一緒。そして、私達が古井戸側の冒険者になって領主の長男側に付いた証でもあるわね」
手の平の収まるほどの木製の札を掲げて呟くレイガルに、向かいに座ったエスティが補足するように説明を加える。既に二人は先程それぞれ手続きを終えて〝古井戸〟に加盟する正式な冒険者となっており、ギルド内の食堂で食後の雑談に興じていた。
「認識証も兼ねているってわけか」
「ええ、更に登録証はそれを持つ冒険者の大体の実力もわかるようになっているの。名前の後ろに空白になっている部分があるでしょ?ここには後から功績によって焼印が押されるのよ。ギルドは冒険者を五段階の評価に分けていて、評価が上がるほど報酬から引かれるギルドの取り分が低くなる等の恩恵が与えられる。あたしは移籍者だから特典として評価は引き継がれるけど、レイガルは無印から始めることになるわね。まあ、パーティーを組んだ場合は報奨金の兼ね合いで一番評価の高い者を代表にするのが普通だけど」
「なるほど、・・・ちなみに山羊小屋に居た頃のエスティは何段階だったんだ?」
仲間となったのは数時間前だが、レイガルはエスティへ快活に語り掛ける。本来なら身構えてしまうほどの美貌を持った女性ではあるが、知り合うきっかけとなった事件で見事な啖呵を見せられている。遠慮した態度は却って気が短い彼女を刺激すると思われた。
「山羊小屋では三番目の格で認められていたわね。たぶん、一人だとそれくらいが限界だと思う。遺跡は積層構造になっているってさっきも説明したけど、地下に向かうほど遺跡に巣食っている怪物が強くなるのよ。迂回路を見つけようとしても、どうしても怪物を倒さないと進めない場所もあって、それで限界を感じていたってわけ。あたしも対人戦には自身があるんだけど、口から炎を吐く子牛ほどもある狼だか犬を正面から相手に出来ないからね」
「遺跡の中にはそんな化物がいるのか・・・しかし、そいつらは良く生きているな。古代文明が栄えていたのは五百年も前の昔だろう?」
「それについては学者達の間でもかなり前から色々と議論が盛り上がっているわ。最近では遺跡の内部にいる怪物は古代人達が残した番人という説が一番有力みたい。滅びることを回避できないと判断した古代人は自分達の都市、つまり遺跡を後の世の人間や他種族に荒らされないために、魔法文明で創り出した怪物達に護らせているらしいわ。・・・無駄だったようだけど」
「俺達は墓荒らしみたいなものか・・・しかし、何百年も生きることが出来る怪物達を創りだせるなら、それを自分達に応用すれば滅びずに済んだんじゃないか?」
「・・・確かにレイガルの言う通りだけど・・・あたしにそんなこと言われても困るわね」
「いや、そうだな。話が逸れていた。いずれにしても稼ぐには遺跡の怪物を倒す必要があるわけだな!」
問われるまま質問に答えていたエスティだが、レイガルの推測が古代人の謎に及んだことで苦笑を浮かべる。彼の指摘は論理的ではあったが、一介の冒険者としては荷が重い内容だ。彼女も古代人が滅んだ謎には興味を持っていたが、ここで二人が推測を語り合ってもそれはあくまでも推測に過ぎない。レイガルも自分が脱線しつつあることを悟ると話を本筋に戻した。
「そう、私が一人で探索出来るような場所はあらかた行き尽しているからね。更に稼ごうと思ったら、これまで避けていた怪物を倒してその先に進む必要があるの。そんなわけでレイガルには期待しているわよ!」
「任せてくれ!と言いたいが俺は冒険者としてはまだ新人だからな。そのことは憂慮してくれよ」
「ええ、もちろんよ。いきなりやばそうな怪物に挑んだりはしないわ。あたしもあなたには遺跡内での立ち回り方を少しずつ学んでもらうもり、そんなわけで明日からは早速、遺跡の低層に潜るつもりだからね。これから最低限覚えておく必要がある知識を叩き込むわよ!しっかり覚えてね!まずはあたしの許可がない限り怪しい物には絶対に触らないこと・・・」
この後はエスティがしっかりと主導権を握り、遺跡内の様子や材質、注意すべき点、更にギルドの習慣、報酬の受け取り方法等の知識を暗くなるまでレイガルに叩き込むのだった。
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