第3話 清三と師と私

「短い間だけど有意義だった。ありがとう。」

 共に研究をしていたT.K.リリー教授が研究室から荷物を出してしまうと、アランは用意した専用ケースにシャーレに乗った清三の筋肉組織を収納した。誰にも見つからないように細心の注意を払いながら。

(どうせ処分されてしまうのだから問題ないだろう・・・)

 そう自分に言い聞かせながらアランは帰途についた。彼はたとえ発表できなくとも清三の研究には生涯を費やすだけの価値があると考えていた。

 帰りの飛行機の中、アランの頭に師の顔が浮かんだ。師は跳躍学の体系を完成させた偉大な人物であった。アランは師に跳躍の素晴らしさを教わった。

 しかし、4年前のある日、師はアランに何も伝えぬまま突然に姿を消したのだ。師の妻から行方不明の届けが出され捜索がなされたが何も見つからなかった。

 あの日はいつもと変わらぬ一日だった。大きな停電があったことを除けば・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る