第11話 タリアの慟哭 2/4



 マリアスの言葉に私もメリナも固まってしまいました。その言葉を理解することを頭が拒否しているみたいです。ふとメリナの様子を伺います。メリナは笑顔でしたが、その手をきつく握りしめ震えていました。顔も血の気が引いています。


「まあ、それは素敵ですわね、それで相談というのはどういうものなのですか?」


 メリナは健気にもそう言います。


「こんなこと言うのも変だけど、また会えるかどうか分からないけど、もし会えるならなんといえば女性に興味を持ってもらえるかな?」


「そうですね…こういうのはどうでしょう。」


 マリアスは無邪気な顔でメリナに問いかけます。なんと残酷な事でしょう。メリナは愛する彼が…自分以外の女性の口説き方を真剣になって考え、彼に伝えます。マリアスはそんな彼女にありがとうと笑顔で礼を言っています。


「今度彼女に会えたら自分の気持ちを正直に話すよ。」


 こんな会話はもう聞きたくはありません。あまりにも彼女にとって惨い仕打ちです。すぐさま話題を変え、この場をお開きに持ち込みました。






「メリナ、まだ諦める段階ではありません。あくまで見ず知らずの女性です。この王都で再度再開する可能性は低いでしょう。だから落ち込まないで、あなたもマリアスにご自身の気持ちを伝えるのです。」


「タリア…ありがとう。そうですね、まだ彼と一緒になれないと決まったわけではありませんよね。」


 メリナは不安そうにつぶやきますが、幸いなことに私たちは貴族です。庶民には馴染みが薄くとも貴族、それも大貴族の次男ですので妻を1人だけ迎える可能性はほぼ皆無です。さらに言うなら身分的にもメリナは釣り合っています。そして、私たちの同年代の貴族はほぼ顔見知りですので、仮にその女性に会えたとしても、マリアスがその方を知らない以上貴族の可能性は低いでしょう。つまり相手方は庶民の可能性が高く、マリアスと婚姻できるとしても正妻に迎える可能性はほぼありません。


 つまりまだメリナが彼に嫁ぐ可能性はあります。それも、最有力の侯爵家令嬢ですので、ラプス家も彼の家との繋がりを持てますので、むしろ確率はかなり高いのではないでしょうか。後はメリナがはっきりと気持ちを伝えるだけだと思いますわ。








 …しかし、現実は貴族の権力争いに巻き込まれ、より悲惨な結果になってしまいます。



 





 今日はパーティーの日、不思議なことにパーティーと呼ばれていますが、お題目は貴族の子息令嬢のデビュー前の交流目的と言われていますが、明確に何のために開かれているのかは歴史を紐解いてもあまり分かっていません。およそ70年前に始まってから今まで続き、伝統となっているようです。


 そんな豆知識を思い出しながら会場に向かいます。いけませんね、メリナのことが気になり過ぎて気を紛らわそうとしても、ふと彼女のことを考えてしまいます。幼いころからの友人ですので彼女のマリアスへの恋は知っていますし、成就してほしいです。


 大人は大人同士で交流を深めますので、私はリーナの手を引いて会場に入ります。マリアスはまだ来ていないようです。メリナを探していると、誰かと話をしています。あの方は確かビトレ公爵家のダリオ様ですね…いい噂を聞かない方ですので心配です。近くで様子を伺いましょう。


「リーナ貴方はここに居てください。私は少し離れます。決してここから動かないでね。」


「どこかに行くんですか?お姉さま。」


「少しメリナの様子を伺ってきます。今彼女と話している方はあまりいい噂を聞きませんので。あなたは付いて来ては駄目ですよ。」



 そういってメリナの方に向かいます。













「それではメリナ嬢私はこの辺で、他に挨拶しなければいけません。」


「はい、ご機嫌ようダリオ様。」


 私が着く頃にはダリオ様は離れて行きました。しかしメリナの表情は優れません。


「ご機嫌ようメリナ、ダリオ様とは何かありまして?」


「ご機嫌ようタリア、ええ…ダリオ様にあなたへの取次ぎをお願いされました。」


「私に…?何かしら…」


「分かりません。しかし、あまりいい予感がしませんね…こういう場ですからもしかすると…」


「私との婚姻の申し出ですか…?確かに私たちは年も近いですが…」


「あの方は今年13歳で学院に入学する年です。もうそろそろ婚約者も決める時期に来ています…」


「しかし、あの方は既に婚約者がいたはず…ガハマカタラ王国の方でしたか?」


「…高位貴族ですからね、ただ話がいくとすればフリオ様に正式な使いを立てるでしょう。しかし、あの方が何故直接話をしようとしているのか…」


 この国では、恋愛結婚も政略結婚もあります。ダンタリオン事件のあと、国の混乱期に身分を超えた恋愛をする高位貴族が多く、その名残で恋愛結婚も認められています。しかし、貴族である以上政略結婚も当然あります。ですので、半数近くの貴族は13歳までに自分で婚約者を見つけられなければ、近い年の子息令嬢を婚約者として迎えるように家が動くということも出てきます。


 私も覚悟はしていますが、なるべくなら恋愛結婚をしてみたいです…


 そんな会話をメリナとしていると、彼の声が聞こえてきました。



 

「君に一目ぼれしました。私の妻になってください。」



「「?!」」


 メリナと二人で声がした方に振り向きます。そこにはマリアスとリーナが居ました。まさか、彼が言っていた女性とはリーナのことなのですか?!


 迂闊でした。あの時は、すぐに話題を変えることに意識が向いていてその女性の容姿を聞くことを忘れていました。もしそれを聞いていたのならリーナを連れてくることを回避していたのに…


「あ、あの…その…そう言っていただけるのは嬉しいのですが、まだあなたのお名前すら私は存じ上げておりません…」


「?!これは失礼しました。私はラプス家の次男、マリアス・ラプスと申します。」


「?!(マリアス様?!メリナ様の想い人!?)」


「あなたのお名前を教えて頂けませんか?」


「…カトリーナ・フォーチャー・トレーターです…」


「カトリーナ殿、あなたを始めて見た時に生まれて初めて胸が高鳴りました。あの場では何とかそれを落ち着けようとしていましたが、時がたつごとにあなたのことが頭から離れませんでした。そしてもう二度と会えないと思い一度は諦めていましたが、今日あなたに会えて本当に嬉しかったです。もうこの思いを止められません。ですのでもう一度お伝えします。一目ぼれしました。私の妻になってください。」


「~~~っ///」








 まずい!よりによってこのタイミングで…メリナは…



「……」


 彼女は目に涙をためてうつむいています。想い人があれだけはっきりと別の女性に好意を示したのです。それも当然でしょう。リーナの方も恐らく男性に告白されたことは初めてのはずです。顔を赤くし、言葉が出ない様子です。

どうすればいいのでしょう…


「素晴らしい!」


 そんな声が聞こえ、そちらを向くとビトレ公爵が笑顔で拍手しています。


「いや~若者の初々しい場面を見るとこちらまでドキドキしてきますな。年甲斐もなくはしゃいでしまいましたな。ラプス家のマリアス君に見初められるとは、優秀なご息女をお持ちですなトレーター男爵。」


「はい、恥ずかしながら自慢の娘です。」


 アイギス様が公爵から声を掛けられ、戸惑いながら答えます。


「彼ならば貴公の家に婿入りすれば、ますますトレーター家の繁栄につながるでしょう。そして、お嬢さんも幸せ者だね。こんな情熱的な告白をされることなんてなかなかないよ。返事はどうするんだね?」


「え?…あの…その…」


「おっと、いけない…こんな風に質問されては答えられないね、特にこんな人前では、それに君の顔を見れば答えなど一目瞭然さ、お集りの皆様方そうでしょう?!」


 パチパチパチパチパチッ!!


 会場にいる人間がみな拍手を送っています。


「ラプス侯爵、トレーター男爵、そして寄り親であるフォーチャー侯爵、このビトレ公爵家が当主ミリオンが全力で応援させていただきますぞ。」








 やられた!まさかここで公爵が出てくるとは、しかもあのような事を国中の貴族が集まるこの場で宣言するとは…これでは二人が結ばれないと公爵家のメンツをつぶすことになる。有力侯爵家同士がこれ以上権力を持たないようにするためですね。



 これではメリナがマリアスに嫁ぐことははるかに難しくなります。侯爵家の娘が男爵家に婿入りしたものに嫁ぐとなると、様々な妨害が予想されます。また人情の面でもいらぬ誤解を受けるでしょう。いくらメリアとリーナが仲が良くても、略奪愛だとルーティラ家の評判に傷がつく、当主のクリオン様の正確ならばこのような事を許すはずがない…


 同様のことに思い至ったのかメリナの顔色は既に生気を感じれないほど青くなっています。このままでは倒れてしまう!この場から離れなければ。


「メリナ、少し部屋で休みましょう。」










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 まさか、マリアス様の思い人がリーナだとは…であれば、まだ私がマリアス様と結ばれる可能性も十分にあり、カトリーナとも仲が悪くありませんので、安心しました。あれだけの告白を私が受けられなかったのは残念ですが、まだ希望があります。


 そう思っていましたが、意外な人物が出てきました。三大公爵家のビトレ公爵です。彼は二人の恋を応援すると言いました。しかもビトレ公爵がさりげなく「男爵家に婿入り」と話しました。貴族の集まるこの場での宣言されたということは、侯爵家も実現するために全力を出すでしょう。


 恐らく侯爵家が下手に有力な家と繋がることによって、権力を拡大することを防ぐためでしょう。その点男爵家に婿入りとなれば、それほど力を持つことになりにくいですからね…しかしこれでは、私がマリアス様に嫁げる可能性は…ほぼ確実にビトレ公爵家の横やりが入るでしょう。それに父上は合理主義ですから、私が男爵家に行くことを許可したりはしないでしょうし、もっと有力なところに嫁ぐことになるでしょうね…


 マリアス様と結ばれる可能性が皆無であると悟り、まるで地面が急に無くなったかのような、自分が経っているのかも分からないという感覚が襲ってきました。


「メリナ、少し部屋で休みましょう。」


 タリアが、そういって体を支えてくれます。私たちは会場を後にし、控室に向かいます。






「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」



 タリアが私に懸命に話しかけてくれているようですが、その言葉を理解することが出来ません。よほど私は動揺しているのでしょう。マリアス様と結ばれることは無い…そう考えるだけで私の中の醜い心が語りかけてくるようです。



(何故私ではないの?今までずっと一緒にいたのに!)


(急に出てきたあの女に愛する彼を取られたのよ!)


(このままでいいの?!)


(あんなマリアス様の嬉しそうな表情(かお)を見たことがない。)


(何故私にあの表情(かお)で微笑んではくださらないのですか?)


(私の何が劣っているというの?)


(これも全部あの女さえいなければ!)


 様々な憎しみが心に渦巻いてきます。私がこれほど醜い女だったなんて…もう何時間こうしていたでしょうか?ものすごく体が気怠いです。タリアももう声を掛けてきません。私を心配そうな顔で見ています。


 もうそろそろパーティーが終わる時間のはず、


「タリア、私はまだここで休んでいます。あなたはパーティーに行ってください。」


「しかし…」


「パーティーの最後には、陛下の挨拶があります。もしその時あなたが居なければ、フォーチャー家に迷惑がかかるかもしれませんよ?」


「…………」


「私のことは心配しないで、落ち着いてきましたから、少し一人にして頂けますか?」


「分かりました。何かあればすぐに誰かに言うのですよ?すぐに戻ってきますからね。」


「はい。」







 タリアが退出したのを確認し、私は今まで我慢していた分泣いてしまいました。















 どれだけ泣き続けたことでしょう。涙も乾いて化粧が流れて酷い顔になってしまいました。お色直しに向かいます。そして部屋に帰って少しした後、タリアとリーナが入室してきました。


「………」


「………」


「………」


 しばらく無言が続きましたが、リーナが口を開きます。


「あの…メリナ様…うぅ」


 彼女はその両眼から涙を流しながら、必死に言葉を探しています。複雑な心境なのでしょう。しかし決して逃げずに私に何かを告げようとするその姿をみると、何故だか荒れていた心がどんどん静まっていきます。そうです、彼女には一切非はありません。ただ彼に思いを寄せられていただけ。


 もともと彼女と会ってそれほど時間を掛けずに私たちは仲が良くなりました。その人を寄せ付けることが出来るのが彼女の魅力なのでしょう。引っ込み思案な私には持ちえないものです。そう考えると私は自然と言葉を口にしていました。


「リーナ、おめでとうございます。」


「「?!」」


 今は自然と笑みが浮かびます。そうです、私はマリアス様が好きです。それと同時に彼に幸せになっていただきたいのです。


「彼があなたを見つめている表情は私では見せて頂くことは出来ませんでした。だからあなたならば彼を幸せにできるでしょう。」


「でも!それではメリナ様はどうするのですか!あれだけマリアス様を慕っていたのに…」


「今でもお慕いしていますよ?でもあの方はあなたを選んだ。ならば私はあなたを応援します。だって、彼の幸せを一番願っているのは私ですから!貴方は彼と絶対に幸せになりなさい。」



(いいの?マリアスが彼女の者になってしまうよ?君と結ばれることはもうないんだよ?)


(良いのよ、彼に選ばれることは無かったけど、彼の幸せを私は願い続けてみせます。)


 彼(マリアス)の幸せを願うこの気持ちだけはだれにも負けてなるものか!







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 メリナ…あなたはどうしてここでそんな満面の笑顔を見せることが出来るの?



 彼女の一途な恋心を改めて感じ、私もリーナとマリアスが幸せになることに協力を惜しみません。絶対に二人には幸せになっていただきます。そして、メリナはマリアスの趣味などをリーナに話していました。こうして、王都のパーティーは終わりました。





 あれからリーナはマリアスとの婚約が正式に決まり、マリアスの横に立てるようより一層普段の勉強や礼儀作法の習得に力を入れています。またマリアスも、トレーター家の家業を手伝うことに必要なことを勉強しているようです。


 メリナに関しては、やはりあの時に初恋が終わった影響か、以前のように少し体調を崩したみたいですが、これからのことに前向きに向かっていると手紙が来ました。どうか彼女にも運命の出会いが訪れることを願っています。







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 お久しぶりでございます。タリア・フォーチャーと申します。あのパーティーから2年経ち、今年ルバーネット学院に入学します。来年はリーナが学院に来る予定ですが、正直に申しまして、合わせる顔がありません。



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 あれは去年のことです。我がミトリーの近くにある大樹海からモンスターの氾濫が起こりました。そして街を守るため、お父様が防衛軍を急遽編成しました。我が家の私兵と、寄り子の子爵家からの応援に駆け付けた舞台合わせて2000名に及ぶ軍です。討伐者から氾濫の兆候ありとの報告を受け、僅か2日ほどの準備期間でこれほどの組織を編成できたのも、日ごろ氾濫に対して備えていた我が家の家訓の賜物と言えます。


 また、日ごろ備えている我が家の私兵だけにとどまらず、寄り子のジープ子爵家からも300名の増援が得られ、その他の家からも続々と増援が到着しました。しかし、トレーター家は私兵というものを持っておらず、当主であるアイギス様が出陣することになりました。アイギス様は、王国でもトップクラスの武人ですので、彼だけでもありがたいのですが、ジープ子爵が、


「トレーター家からの出るのはアイギス殿だけなのですか?仮にも1つの部隊を預かる貴公が、ただ一人だけしか出ないというのは如何なものでしょう?」


 このジープ子爵はアイギス様に何かと無理難題を言います。男爵でありながらお父様に信頼されている彼を疎ましく思っているのでしょう。


「無理を言うなジープ子爵、彼は領地を持っておらず、故に私兵を持つことも出来ない。」


「しかし御屋形様、このミトリーの一大事にいくら何でも1人とは…他の家の者も納得しますまい。アイギス殿ならば討伐者などを雇うことも出来たでしょう。」


「準備期間がない現状では仕方あるまい。それに彼には軍の編成に昼も夜もなく動いてもらった。」


「部隊を預かるものとしては当然ですな。しかしそれでも貴族の一員としてはどうでしょう?今回のことに備えて常にお抱えの者を何人か抱えていて然るべきではありませんでしたかな?」


「それでは貴公は何をトレーター男爵に求めているのだ?」


「トレーター男爵家の奥方は当代随一の魔術師と聞き及んでおります。夫人の助力を願えませんかな?」


「何をおっしゃっているのですジープ子爵!?彼女は軍属に無い!!」


「それは十分承知していますよアイギス殿、これは先ほど手に入れた情報ですが、私どもにもお抱えの討伐者が居ます。情報収集の任を与えており先ほど持ち帰った情報ですが、どうやらドラゴンのようなものを見たということです。」


~~~~~~


「皆さん落ち着いて、それが本当かどうかは分かりませんが、我々の私兵とて我が街の住人には変わりありません。いたずらに消耗するのはぜひ避けたい。御屋形様の所の兵も同じかと思います。もし情報が本当ならば、卓越した実力者が必要になります。アイギス殿だけではなくもう一人は欲しい、特に魔術師ならば空を飛ぶドラゴンにも対抗できます。今出し惜しみしていたずらに兵を喪うことになれば私はあなたを許すことが出来ないでしょう。」


「そこまでだジープ子爵、ティア殿が手練れの魔術師であるのは事実だが、彼女はただの一般市民である。我々は守る立場であり、まず助力を求めるのは討伐者や国や近くの領主である。」


「なるほど、では失礼ながら一人こちらで用意した方をお招きしてもよろしいですか?」


「そのものはこの場に呼ぶ価値があるのか?」


「ええ、許可さえ得られれば。」


「ならば参考程度に聞こう。そのものを呼んでまいれ。」


「実はもう呼んであります。お入りいただいて結構ですよ。」


「失礼します。」


「「「「「「!?」」」」」」


「ティア!?」


「ごめんなさいあなた。話は聞かせていただきました。私も協力させてください。」


「ジープ子爵!?どういうことだ!?」


「私は無為に人が死ぬのを止めたいだけです。」


「ティア!君には今回出撃する義務はない。それに私に何かあった時君までいなくなればリーナはどうする!」


「…御屋形様、発言をお許しいただけますか?」


「…ティア殿、許可する。」


「ありがとうございます。本当に子爵様が仰ったようにドラゴンが現れたのならば、我が夫アイギスでは相性が悪すぎます。恐らく多くの兵と共に討ち死にしてしまうでしょう。一人だけなら逃げられると思いますが、あなたは絶対にしないでしょう?それならば私とあなたが組めば討伐も可能なはずです。」


「しかし、」


「アイギス殿、奥方をこの場に独断で呼んだ件は謝罪します。しかし、ティア殿の助力なしでは時間の限られている現在打つ手がないのが現状です。もちろん最前線に出すわけではなく、あくまでもドラゴンが出現した時に限り、ご助力いただくということで如何でしょう。当然私から言い出したことなので、奥方には我が私兵の精鋭をつけさせていただきます。もしもの時は盾になってでも奥方が逃げられる時間を作れるでしょう。」


「子爵様もこう仰ってくださっています。どうか御屋形様、私も共に往く許可をお願いします。」


「…確かに現状それが最善であることは理解できる…ならば、ドラゴンが現れた時に限り助力をいただく。そしてジープ子爵だけではなく私の私兵からも護衛を出そう。男爵、君の意見は?」


「………」


「あなた、私もあなたと共に往きます。私の力は知っているでしょう?それにあなたも私を守って下さるのなら犠牲は最小限に抑えられます。それにあなたが居なければ私も力を発揮することは出来ないかもしれませんよ?私の力が必要ならば今この時をおいて他にありません。」


「御屋形様、万が一我々が討ち死にした場合、我がトレーター家とカトリーナはどうなりますか?」


「その場合、フォーチャー家が責任をもって後見人となり、彼女に対する補償は今後、彼女が天寿を全うするまで続くと約束する。もちろん彼女の幸福もそこには含まれる。全力で彼女を支えよう。そしてトレーター家が今後も存続できるよう取り計らおう。もちろん使用人たちもそのまま続けられるようにする。そして君たちが無事任務を終えればティア殿にはそれ相応の褒賞も出そう。」


「……分かりました。ティア、君は全力で守って見せる。」


「はい、よろしくお願いしますねあなた。」



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 そして、彼らは悲劇的な結末を迎えます。















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