シリアス×コミカル 悪役令嬢(えんざいかのじょ)のヒーローは、とある世界の廃課金者(せんし)です。

カロリー高め(メタボ)

シリアスパート1

第1話 悪役にされた彼女

 初めまして、知力低めのカロリー高めメタボともうします。


 普段は読専ですが、自分でも何か書きたいと思い今回投稿しました。


 今回はシリアスパートということで、題名通りコミカルパートという名の解決編があります。

 また、作中でおかしく感じることもあるかと思いますが、伏線であったり、知力が低かったりが原因ですので完結までお楽しみください。


 コミカルパートは書きあがり次第投稿したいと思いますが、何とか今月目指して頑張りたいと思います。




――――――――――――――――――――――――――――








 初めまして、私の名はカトリーナ・フォーチャー・トレーターと申します。

 我がトレーター家は先祖代々このルバーネット王国でモンスターテイムの技術者としてツニク大樹海の近くにあるミトリーの街に住んでいます。


 ツニク大樹海というのは王国の西側の広大な範囲を占める森で、様々なモンスターが住んでいます。

 奥に行くほどモンスターの危険度や、環境が厳しくなると言われており、モンスターを狩って生計を立てている討伐者の方たちも、大樹海の最奥がどのような場所かというのが分からないそうです。


 大昔に国を挙げて調査団が結成されましたが、帰ってきた者が居ないということで、謎に満ちた秘境となっています。


 話が脱線しましたね。


 我が家はそんな大樹海の浅い部分に生息するバーロという小型の4足歩行のモンスターと、サンドーコという大型の4足歩行のモンスターの調教で生計を立てていました。

 この2種類は、高い知能とおとなしい性格で人と共存できる数少ないモンスターであり、人や物を運ぶときに重宝します。

 

 そんな家業を営んでいた我が家ですが、100年ほど前、6代前のご先祖様、カトアリアス様が大樹海から誰も手を出すことが出来なかったティラノタイガーと呼ばれる白い猛獣をテイムし、人と共存できるまで育て上げていったわが家の歴史上で最も秀いた女性だったと伝わっています。


 そして、隣国のガハマカタラ王国が侵略してきました。

 当時我が国と敵国の戦力差は3倍以上あり、また宣戦布告もなくいきなり攻められたそうです。

 その時街の男性たちが徴兵されて行きました。


 後に残ったのは女性や子供たち、老人だけで、当時の棟梁であるカトアリアス様の父上も軍馬の調教師として従軍したようです。

 しかし、1月も経つうちに戦線も徐々に押し上げられ子供といってもいいような年齢の男性まで徴兵されるようになりました。

 当然我が家にも召集令状が届き、カトアリアス様の14歳になったばかりの弟のアンドレアス様にも兵役が課せられそうになりました。

 この国では16歳で成人を迎えますが、14歳の男性まで徴兵せざるお得ないほど状況が悪かったようです。


 弟を大変可愛がっていたカトアリアス様が、代わりに自らが出るとティラノタイガーを連れて兵舎に乗り込んだようです。

 そして無事に説得することができ、2年に亘って戦争に参加し、黒髪の戦士や白髪の格闘家とともに見事敵国の指揮官を討ち取りました。

 残念ながらティラノタイガーはこの戦争中に亡くなったと伝えられています。


 その功績をもって、我がトレーター家は男爵位を賜りました。

 それから3年の月日が経つうちに、カトアリアス様が亡くなり、黒髪の戦士も姿を消しました。

 

 残ったアンドレアス様と彼を支えた白髪の格闘家が家督を継ぎ、ミトリーの街を治めるフォーチャー侯爵家のお抱えになり、街の繁栄に尽力していきました。


 私の名にフォーチャーの名が入っているのは、当時トレーター家の嫡子であった私の曾祖父に、フォーチャー家出身の曾祖母が嫁いできたときに、フォーチャーの名前を許されたという経緯があるためです。

 それ以降も我がトレーター家は誠心誠意フォーチャー家に仕えてきました。

 ここまでが、我が家の成り立ちであります。


 そして、ここからが私の話です。

 あと数時間のうちに死刑に処される私の今際の言葉をお聞きください。







 私が生れ落ちて22年、トレーター家の一人娘として生まれました。

 当主である父アイギス譲りの茶色い髪と青い目、母ティア譲りの顔立ちと魔力量をもち、将来を期待されていました。

 また両親に私自身も大変可愛がって頂き、私もそんな両親の期待に応えるため、トレーター家として必要な勉学や礼儀作法、テイム技術やかつて黒髪の剣士から鍛えられたアンドレアス様にあやかって護身術、母から魔術を教わり日々研鑽を積んでおりました。


 魔術が使えたときにはご褒美として、いろいろな絵本を買っていただきました。


 石に刺さった聖剣を抜いて王になった少年の物語や、人間に恋した人魚の物語、そして、一番大好きなのが、フォーチャー家に仕えることになった事件、通称ダンタリオン事件と言われる、とりついた人間や周囲の人間を操る悪魔をアンディー様が討伐した物語です。


 我が家のご先祖様のことが絵本になり、私はとても誇らしい気持ちでした。

 そんな私のために絵本を読んでくれるお母様と、私たちを笑顔で見守ってくれるお父様に囲まれて、とても幸せでした。


 そして、10歳の時に王都で開かれたパーティーにフォーチャー家の方と同行し参加した時にラプス侯爵家の嫡子であられるマリアス様に見初められ、男爵家出身でありながら婚約者になることができました。


「君に一目ぼれしました。私の妻になってください。」


 と、初めて男性に言われ、風邪でもないのに顔が熱くなりました。

 両親も大変喜び、フォーチャー家の方からも祝福をいただきました。


 あの時が私の幸せの絶頂期だったのでしょう。

 

 そんな日々がずっと続くかと思われていましたが、11歳の時にあの忌まわしい事件が起こったのです。

 後にツニク大樹海の大反乱と呼ばれるモンスターの大量発生です。

 

 街を守るためにフォーチャー家が防衛軍を編成しました。

 そして、その軍を率いて、私の父と魔術師の母が出陣することになりました。

 トレーター家の人間は非常に身体能力に優れています。


 私の父も、王国でトップクラスの力を持つと言われており、また母も平民出身ながらルバーネット学院で魔術を磨いてきた手練れです。

 そんな父と母が共に出陣するということで兵士の方たちの士気も非常に高いものでした。


「リーナ、すぐに帰ってくるからいい子で待っているんだよ。」

「私たちがいない時でも訓練をさぼっちゃだめよ。」


 そういって出陣していきました。私も両親が帰ってきた時に成長した自分を見せたくて、訓練にいつも以上に精を出しました。

 しかし、それが両親を見た最後でした。二人は変わり果てた姿で戻ってきたのです。


「どう…して…お父様、お母様…ううっ…」


 数少ない生き残りの兵士の方によると、最強のモンスターの一角であるドラゴンが出現したというのです。

 それ一体で、街が崩壊すると言われるほどですが、大樹海の奥地に生息しており、人里にはほとんど現れないと伝えられていました。

 実際に大樹海の近くにあるこのミトリーの街でも最後にドラゴンか確認されたのは300年以上前、しかも、大樹海の上を飛んでいるのを遠めに見たという報告のみです。

 そんなドラゴンが現れ防衛軍は奮戦しましたが、約8割に及ぶ1500名の兵と両親の死と引き換えにようやく討伐という、ほぼ壊滅という状態になりました。


 そんな突然の家族との別れがあり、普段から目をかけて頂いていたフォーチャー家の当主であられるフリオ様が後見人となり、我がトレーター家は一時フォーチャー家預かりとなりました。

 そして、フォーチャー家とラプス家の話し合いにより、マリアス様との子ができた際に、二人目以降の子供をトレーター家当主とし、家を再興するようにとの温情をいただきました。


 ルバーネット王国では女性は例外を除き、家督を継ぐことができません。

 それに継げたとしても、両親がいない今私に弟妹ができることは無く、マリアス様との婚約も解消されてしまうでしょう。

 そんな両家の恩情と、家族を失った喪失感、そしてマリアス様に並び立っても恥ずかしくないように、ますます自己研鑽に励むようになりました。


 そして、13歳にルバーネット学院へと入学します。

 護身術の訓練は自分で出来ますが、魔術に関しては、母と同じこの学院で学びたいと考えていました。

 そして、マリアス様も1つ上の学年で勉学に励んでおられます。


 ここでは13から16歳まで歴史や礼儀作法、勉学や魔術研究など様々な知識を身に着けられます。

 そして、官僚や研究者になりたいものは16から18歳まで大学院に進みます。

 私は、16歳の成人になると同時にラプス家に嫁ぎ、ラプス家繁栄や、トレーター家の再興に尽力する予定でした。


 しかし、ここでも不幸が重なります。


 14歳の時にマリアス様に女性の影が見えるようになりました。

 相手は同じ侯爵家であり、学年も同じとのことです。


 後になって考えると、私は常に研鑽の手を緩めることなく自身を磨いておりましたので、常に成績はトップでした。

 マリウス様も成績は上位でしたが、女であり婚約者である私と比べられることがあり、私に対してコンプレックスを抱いていたのではないでしょうか。


 そこに現れたのがアリナという侯爵令嬢です。


 彼女の人柄と、同じ侯爵家として昔から付き合いのある気安さで、徐々に彼女に惹かれていったようです。

 彼女にペンダントをプレゼントしたといううわさも聞きました。


 実際遠目からアリナ様をお見かけしたことがありますが、確かに以前はなかった見事なペンダントを身に着けてらっしゃいました。

 私にはそのようなことがありませんでし、婚約者のいる男性からの贈り物を受け取るということに言いたいことはありましたが、男爵家令嬢という私と比べ侯爵家令嬢という彼女に意見するなど許されません。

 ですので彼女が正室で、私が側室という立場になったとしても私の子供がトレーター家の当主となることができるのならと、何も申し上げることはありませんでした。


 それから暫く経ち、彼女の周囲俗にいう取り巻きの方たちに私は嫌がらせを受けておりました。


「男爵家の娘がルーティラ侯爵家の令嬢であられるアリナ様の邪魔をなさってもいいと考えてらっしゃるの?身の程を知りなさい。」


「あなたが居るせいで、アリナ様とご一緒にいられるときのマリアス様は時々、苦々しい表情をされますのよ?あなたという婚約者がいるせいで、アリナ様に負い目があるためですわ。」


「マリアス様のためを思うなら自ら身を引いてはいかがかしら?」


 と言われました。


 彼女たちはみな子爵令嬢です。

 男爵家の私が身分が上の彼女たちに意見を述べても、周囲は彼女たちの味方です。


 さらに私物も少し目を離したすきに無くなることが良くあります。


 そして、そんな私からクラスの皆様は離れていきました。

 ルーティラ侯爵家の力は国の3つある公爵家と同等の権力や財力があると言われており、フォーチャー家と同じ爵位ですが、ルーティラ家のほうが一つ上の立場の扱いをされています。


 そんなルーティラのご令嬢ですから、当然ラプス家のとしては、彼の家との繋がりを得たいと考えています。

 ですので私はマリアス様とお会い出来た時に、私トレーラー家の再興が叶うならば側室でも構わない、彼女を正室に迎えてはと伝えました。そうしたら、


「貴様は私を愚弄するのか!!子供の時とはいえ、王家主催のパーティーで言った言葉に嘘はない、そんな私に対し、家の再興が叶うならばなどと我が家の権力だけが目当てであるかのような物言い、非常に不愉快だ!!」


 そう申されるマリアス様に、違うと言いましたが全く取り合われることがなくその日は御前を辞することになりました。

 そして、フォーチャー家には心配をかけまいとこのことを黙って、私の胸の内にしまったのです。


 マリウス様を怒らせたことを、フォーチャー家に報告していたらまた結果は違ったのでしょうか…






 さらに時は流れ15歳になりました。


 その年はマリアス様の卒業の年です。

 しかし、あの一件以降、マリアス様との会話の機会はありませんでした。


 何とか誤解を解きたいと思ったのですが、マリアス様が理由をつけて、またアリナ様の取り巻きの方の妨害を受けて、そして、マリアス様とアリナ様の仲の睦まじいところを学園内で何度も見かけました。

 その姿を見て、私に対しての情がマリアス様の中に既に無いことを悟ってしまったのです。

 確かに取り巻きの方の言うとおり、あの件以前にお二人がいるところを見たときは、マリアス様がまれに苦々しい顔をしてらっしゃいました。


 おそらく私にまだ情が有ったのでしょう。

 しかし最近は非常に晴れやかな顔をされていました。


 まるであの告白をして頂いた時のような笑顔で、その私以外に向けられた笑顔を見ると、私は寮の自室で泣いてしまいました。


 これから私はどうなるのでしょう…


 ここまで来てはフォーチャー家にマリアス様との仲違いと、ルーティラ侯爵令嬢の件を手紙で報告しました。

 帰ってきた手紙には私を心配する言葉がありました。

 それだけが救いです。

 私は心配しないで下さいと返事を返しました。


 さらに月日は流れ卒業の時です。

 マリアス様が卒業され、その後領地に戻り次期領主としての実務が始まります。


 ですので、私との婚約がどうなるのかマリアス様から今日伝えるとのお手紙が届きました。

 もはやここまで来ては婚約は解消されるでしょう。

 私はその時を覚悟しながら待ちました。


 


 しかし現実は理不尽でした。




「カトリーナ男爵令嬢、あなたとの婚約は破棄する。」


 やはり来たか、というのと同時に、解消ではなく破棄?という疑問がわきました。

 マリアス様は冷たい目で私をにらみつけます。

 その目を見て非常に戸惑いましたが、続けられた展開に私は何も考えることが出来なくなってしまったのです。


「アリナ侯爵令嬢に対する数々の嫌がらせ、そして、彼女の友人に対する暴力、成績を維持するためにクラスメイトに暴力や脅しなどを行っていたそうだな。

 数々の証言が教師の方々や、令嬢たちの侍女、ほかのクラスの人間からも出ている。」


 私はあり得ない言葉を聞きました。

 そして、証言者と語る者たちが次々に覚えのないことを皆の前で証言しています。


 私が嫌がらせをした?


 されていたのは私です。

 

 成績の維持に暴力や脅し?

 私は寝る間も惜しんで、勉強しました。


 そして領民を守るための護身術です。

 暴力を振るうなどトレーター家の誇りにかけてやるはずがありません!!


 私は信じられない思いで周囲を見ました。

 私を嫌悪の瞳で見るもの、私を嘲笑するもの、そして証言者と名乗る者たちの後ろめたそうな表情、私は嵌められたのだと悟りました。


 そこから先は茫然として覚えていません。

 なぜか教師たちに連行され訳の分からない内に退学処分になりました。


 フォーチャー家に知らせるのも心配しないでと返事をしたことも不味かったようです。


 そのせいでフォーチャー家が対策をとる時間がなく、また、私の有責ということで、後見人であるフォーチャー家に賠償などの義務が発生しました。


 このことでフォーチャー家の財産の一部を賠償として支払うことになり、私はフォーチャー家とも縁が切れることになりました。


 フリオ様には庇っていただきましたが、周囲の人間が私の側につくにはフォーチャー家として周りに多くの敵を作ることになるということで、私からフォーチャー家に賠償金の支払い義務をなくすことを条件にミトリーの街を離れることになりました。


 そして、不幸はまだ降りかかります。


 ルーティラ家とラプス家の申し立てにより、私は国への奉仕義務が課せられました。


 まだ未成年であったことで死罪とはならず、またトレーター家としての武力を治安維持のためのモンスターの間引きのために使うことになりました。


 しかし、国からの支給品の装備は粗悪な品で、間引いたモンスターの素材は監視役のラプス家の兵士が回収し、私に入るお金は日々ギリギリ食べていけるだけの金額しかありませんでした。


 もちろん装備品の再支給などというものもないので、1日1食でお金を貯めて、服や装備を整えるのが常でした。

 そのため、怪我を負いやすく、常にギリギリの状態で自分を保つのがやっとでした。


 湯あみをする余裕もないので、寒い冬でも川で身を清めるしかありません。


 そして、監視の物の中にははした金で体を要求する輩もいました。


 当然そのような者は無視や撃退しましたが、理不尽に暴力を振るわれたとして報告され、本来2年の奉仕義務が、5年に延びることになりました。


 そして20の頃、ようやくお勤めが終わり自由の身になりました。


 そのころには私の体は傷だらけで、行き遅れと呼ばれる年齢となりましたが、まだお家再興の目的は諦めておりません。


 そのためこの身一つで、やっていくには討伐者として生きていくことが早道だということだと考えました。


 討伐者というのは個人や村からの依頼で有害なモンスターを狩り、またその素材を集めて日々の糧にするという今までの日々とあまり変わらないという点と、誰でもなれる点、そして私にはこれまでの経験と戦闘技術があり、今すぐにでも討伐者としてやっていくことが出来ます。


 というわけで、ミトリーから1月ほど歩いたところでストールという人口1万5千人ほどの街につき討伐者になりました。そして、2年で2級まで上げることが出来ました。

 最初はだれでも10級からスタートし、5級で1人前、3級で一流と言われます。そして、2年で2級まで登った私は、当然周りから注目されていました。


 1級になると準貴族として、そして特級討伐者になると貴族として遇されます。しかし、この国では障害が多すぎますので、他国に渡ることにしました。


 そう決断し、この国での最後に受けた依頼で、モンスターを狩っていた時でした。悲鳴が聞こえたのでその方向に急いで向かうと森から何人かの討伐者が出てきました。

 彼らはモンスターの卵を持っており、親が取り戻そうと彼らを追っている状況でした。


 そのモンスターはグリオリスと呼ばれる鳥形モンスターで、羽が退化している代わりに足が発達しており、森でもバーロ並みの速度で走ることが出来ます。

 平原に出るとさらに3倍の速度で走って、障害になるものを片っ端から蹴り飛ばすという習性をもつ魔物モンスターでその威力は50キロの鉄塊を30メートルは蹴り飛ばせると言われています。


 危険度では、ドラゴンの2つ下の中隊級とよばれ、一般的な兵士50人が必要と言われるほど危険です。ここからでも見えるところに農村があります。

 こんなところでグリオリスを野放しにしておくと冗談抜きで、村人が皆殺しになります。


 ですので私は本気を出さざる負えませんでした。

 我が家に伝わる奥義で、獣神憑きトランスと呼ばれます。


 魔力を纏い、身体能力を上げる技であり、逆立った髪が獣の耳に見立てられるところからこのような名前になったと伝わっています。

 まだグリオリスがトップスピードになる前に1撃で仕留めなければ被害が増大しますのでやむを得ません。


「そのまま真っすぐ進んで!」


 逃げてきた討伐者たちにすれ違いざまに叫んで彼のモンスターに突撃します。突然現れた私に一瞬驚いた顔を見せました。


 その勝機に剣を一閃します。


 そして、しばらく進んで崩れ落ちる体に、切り落とされた頭を確認し、私は獣神憑きを解除しました。


「ありがとう。助かったよ!」


 そう言ってお礼を言ってきたのは討伐者の先頭を走っていた男です。


「お姉さん強いね!」

「おかげで助かりました。」


 そう他のメンバーも言ってきます。それを聞き流し私は聞きました。


「なぜグリオリスに追われていたの?見たところその卵を持っていたからだと思うけど、この時期はこの森にグリオリスがいることは常識でしょう?」


 そう言うとばつの悪そうな顔をして、


「貴重な卵だったから金になると思って…」


「そのために態々こんな危険なことをしたの?しかもあなたたちこのままあの農村まで行こうとしていたわよね?そうなれば村人たちが虐殺されていたのよ?あなたたち人殺しになりたいの?」


「いや…それは…」


その時森の方からガサッと音がしました。振り向くと少し小柄なグリオリスがこちらを睨んでいます。

 家族を突然殺され、子供もさらわれたのだから当然でしょう。


 討伐者たちの方を振り向くと、


「その卵を其処に置いて、静かに離れるわよ。」


「それじゃあ、金にならないじゃないか!」


「そうよ、それにそんなに強いなら助けてくれていいじゃない。」


「これを売ればしばらくお金の心配をしなくて済むんです。倒したモンスターの素材は差し上げますから。」


 そう勝手なことばかり言う討伐者に対し、私は鞘でそれぞれ一撃づついれて意識を刈り、卵を手前5メートルほどに置き少しずつ離れて行きました。

 グリオリスが私が卵から離れると卵に近づき咥えて森の中に戻って行くのを見届け、(討伐者たちはそのままでいいか…私も変わったわね…)なんてことを思いながら街に戻りました。


 どうせあと2,3日でこの国から出るのだからと…


 そして三日後、旅支度を終え宿を出ようとすると多数の兵に囲まれ、


「討伐者カトリーナ、貴様に国家反逆罪がかかっている、同行してもらおう。」


 と言われたので、


「どういうことです?何をもって国家反逆罪などと申されるのかこの場できちんとお教え願えますか?」


「貴様の一族はモンスターテイム出来るようだな?

 そのお前がグリオリスを手なずけていたという証言がある。


 さらに討伐者からもモンスターを狩っていた時にグリオリスを嗾けられ、必死に逃げているときに襲われ所持品を奪われたとの申立てがあった。

 さらに国外逃亡も企てているらしいな。」


「そして近くの農村から獣のような姿の女が討伐者攻撃していたという証言があり、モンスターを庇っていたとの証言もとった。

 つまり、モンスターの大反乱を起こさせ、お前は他国に逃げようとしたということだな!もはや言い逃れは出来ん、神妙にお縄に着け!」


 そういう兵士たちの間からこの間の討伐者の顔が見えました。

 そしてあの農村の村人が間の悪いことに、討伐者たちを気絶させたところから見ていたようです。 


 それとこの兵士たちはこの街で見たことがありません。

 2年もいれば、治安にかかわる以上、兵士の方との面識はいくらかあります。


(鎧についた紋章はどこかで見たことが…確かルーティラ家の紋章…そうか、また嵌められたのか…とことん私はついてないようね。

 でも、こうなったら冤罪を晴らせる機会などないだろうし、討伐者として成り上がることも難しくなった。

 つまりお家再興が現実的に不可能になったのね…アハハハもうどうでもいいや…でも、このルーティラ家だけは…とことん私の夢を邪魔してくる奴らだけは絶対に許さない!)




 幸い旅支度していたので愛用の装備は身に着けていました。

 それに敵は手練れとはいえ女一人だと思い油断しています。

 しかしここでルーティラ家の兵だと気づいていることを知られるのは得策ではないと考えました。


「ハンス兵長の配下の方とお見受けいたしますが、私の実力はご存知でしょう?

 この人数でよろしいのですか?」


「たかが女一人、30人以上の我々精鋭が負けると思うのか?」


 これで私がルーティラ家の者だということに気づいてないと思い込んでくれるでしょう。


 ルーティラ家のある都市ドードリは、此処から東南に歩いて3週間といったところですか…一度撒くために北に向かいますか。

 私は獣神憑きを発動し、目の前の兵士たちをなぎ倒しながら直進し、包囲をまんまと抜け出すことに成功しました。

 いきなり動いた私に、油断しきっていた兵たちは着いて来られません。


 できるだけ距離を稼いでから進路を東南に変えて、ドードリに向かいました。


 ドードリの街は大都市ということもあり、一々街に入ってくる人間を調べたりはしません。それに指名手配者の人相書きを張ってある広場の掲示板に、私のものはありませんでした。


 どうやら私がルーティラ家の兵士の正体にいまだに気づいてないと思われているようです。


 しかし、さすがに領主官邸の警備は厳重です。


 どのように侵入し、ルーティラ家をこの世から消すか…私は何とか警備の穴を突こうといろいろと調べました。


 そして、ルーティラ家の人間が7日後の収穫祭の時に揃って壇上に立つという情報を得ました。

 その時に私の全力をもって、奴らを消してやる。


 そう決意し、当日のための準備に奔走しました。


 収穫祭当日、いくつかの仕込みをして配置についた私は、その時を待ちました。


 収穫祭は多くの人でにぎわい、順調に過ぎていきました。

 いよいよ締めの挨拶として領主やその家族が農家の労いと、街の発展を喜ぶなどと演説しています。


 そして、あと少しというところまでくると、長時間警戒していた衛兵たちもほっとしたような顔を見せ、私は今が攻め時だと思い、スラムで雇った仕掛人たちに合図を送りました。


 まず広場の東に仕掛けた爆弾に火をつけ、時間差で南の爆弾に火を着けます。

 また東の爆弾に今度は魔力を使った仕掛を発動し、連続で爆発させます。


 広場は大混乱となり、衛兵もルーティラ家の前面に立って盾となり、当主一行爆破した建物から遠ざけます。


 そして皆が爆破現場を向いている今が暗殺の好機です。


 発動直前で維持していた、火炎魔術を一向に向けて放ちます。

 よく見るとアリナの姿がありませんが、当主に夫人、嫡男次男は炎に包まれ地面に倒れているのを確認してから、直ちにその場を離れます。


 用意していた逃走経路を抜け、街の外に出ました。


 アリナを消すことは出来ませんでしたが、他の者を消せましたので、ルーティラ家も徐々に衰退していくでしょう。


 討伐者時代の経験で、深追いは禁物だということを身をもって体験しているので、すぐさま別の街に逃げなければなりません。


 そして私は、なぜかアリナを深追いするよりも、ミトリーの街の方に足が自然と向かっていました。


 1月以上も歩き続け、やっとミトリーが見えてきたときに、街ではなく大樹海の方に行かなければと思いました。


 そこから3日程樹海の奥に進んだとき、祭壇のようなものが見えました。


 いつもなら不思議に思い警戒しながら周囲を調べるのですが、そんなことも考えられず祭壇の前に立ちました。


 すると、突然子供の時の記憶がよみがえりました。まだ父が存命だった頃にこのようなことを伝えられました。


「リーナよく聞きなさい。もし君がこれからの人生で、自らの力で解決できず、誰にも助けを求めることも出来ずどうしようもなくなった時、大樹海の祭壇に向かいなさい。」


「祭壇ですか?樹海の何処にあるのですかお父様?」


「場所は伝えられていない、ただ先祖代々我が家に伝わるもので、トレーター家の者が本当に困った時にだけたどり着けると言われているんだよ。

 

 あと何年かでリーナもお嫁さんになってしまうども、この言葉を覚えておきなさい。


 そして、祭壇についたら【神獣様に申し立て奉る義あり、夢の桃源郷にて聞き届けられたき願いが御座候】と唱えると、夢の中で神様に会えると言われているんだよ。」


 と父は仰っていました。


 不思議な発音の呪文でしたがなぜかハッキリとその時のことが思い出せます。


 そして私は、


「神獣様に申し立て奉る義あり、夢の桃源郷にて聞き届けられたき願いが御座候」

 

 と自然と口に出していました。

 すると祭壇から光が溢れ、あまりの光量に目を閉じてしまいました。

 しばらくして、瞼越しでまぶしさを感じなくなり、目を開けると、不思議なことに祭壇は跡形も無くなってしまいました。まるで夢でも見ていたような気分です。


 そして樹海を出てすぐ、大量の兵士たちに囲まれてしまい、樹海に戻ろうとしましたが、いつの間にか樹海にも回られていました。


 恐らく斥候が得意な討伐者たちでしょう。


 私が樹海に入ってくところを見られて通報され、これから森に入ろうとしたところに私が出てきてしまったようです。

 この間のように突破しようとしましたが、さすがの私でも毎日続くのサバイバル生活で体力的に限界で、逃げられそうにありません。


 ここはおとなしく捕まることにします。


 その後、私はミトリーの街に連行され、領主館で裁判を受けることになりました。


 久しぶりに見るフリオ様は少しやつれていました。

 そして、私の罪状が読み上げられ、殺人を犯したことを聞くと、目を伏せられ方を震わせていました。

 その姿を見て、後悔していないはずなのに涙が出ました。

 今夜は街の兵舎に隣接する監獄で過ごし、明日の正午に絞首刑に処されます。


 退廷する際にフリオ様が、せめて最後はと湯あみと暖かの食事を用意してくださいました。

 フリオ様にこのようなことでお手を煩わせてしまったことだけが心残りですが、ルーティラ家を滅ぼすことが出来ましたので、私は死を受け入れていました。


 最後に……両親に夢の中で会いたい、きっと私は二人と違って地獄に行くことになるから。

 と、願いながら眠りに落ちました。


「以上が、私がここに来るまでに経験したことです。」


 私は、正面に座る猫耳?の生えた男性と女性にそう告げました。


「それは大変な目にあったね、やはり備えておいてよかったよ。」

「つらいことを思い出させてごめんなさい、でもどうしても必要なことだったの。」


 目の前に座る二人はなんとお父様が仰っていた神獣様だそうで、悲しそうな顔をしながらここに来るまでの経緯を聞きたいとおっしゃられました。


「いえ、もうすぐ楽になります。最後に私の話をお聞きいただきありがとうございます。出来ましたら、苦痛を伴わずに逝けるようにして頂ければ…」


 助けていただくとはいえ、いくら神といえど、これから私が望むものを賜ることは無理でしょう。

 ですので、最後くらいは苦しくなく逝けるようにしてほしいと願いました。


「駄目だよ、まだ諦めては、君はまだまだ若いのだからこれからの人生を楽しみトレーター家を繁栄させていきなさい。」


「これからあなたの元に、ある人物を向かわせます。

 彼ならきっとあなたの運命を変えられるはず……だからあなたはこの運命に抗いなさい。」


「もう全て手遅れです。家も家族も何も残っていません。」


「聞きなさいカトリーナ、これから目を覚ますと君は10歳の時から人生をやり直すことが出来る。

 目が覚めた時から2日後に満月になる。


 満月になると自然の魔力マナが溢れるからそれを利用して頼りになる者を呼ぶ。


 恐らく翌日の朝には君の元にトーヤというものが現れるはずだ。彼に助けを求めなさい、きっと力になってくれる」


「カトリーナ、このような運命に巻き込んでしまってごめんなさい。

 せめてこれからの人生を幸多きものにするための力として、私たちの力を分け与えます。

 頑張りなさい」


「さぁもう時間だ。

 もう会うことは無いと思うが、我々は君たちを見守っているよ」


 お二方は現実離れした話をされていましたが、なぜか無条件で信じられると思いました。そして、その優しいまなざしはいつの日かの両親のようで、思わず涙を流してしまいました。


「なぜ、お二方はこれほど私に力を貸していただけるのですか?」


 私はあまりの歓喜に震えると同時に、何故このように尽くしてくれるのかと疑問に思い、口に出してしまいました。


「フフフ、何故って当たり前だよ。君はこのアンドレアスと」


「私ホーリーの子孫だからですよ」


「かわいい雲孫うんそんに会えたのだから、これでも足りないぐらいだよ」


「カトリーナ、あなたに幸多からんことを…」


 そして私の意識は遠くなっていきました。










「んんっ…」


 なんだか最後に幸せな夢を見ていたようです。

 こんなに気持ちのいい目覚めはいつ以来でしょうか?


 今日、私の刑が執行されるはずですので、身支度を整えましょうか。

 ベットから降り、服を着替えるためにクローゼットにとりに行きます。

 そして服に手を伸ばすと、違和感を感じます。


(なんだか子供の服みたい…)


 ハッ!とした私は部屋を見回しました。


「ここは…私の家…?」


 この状況に混乱するばかりですが、そのタイミングで部屋にノックの音が響きました。


「おはようございますお嬢様、朝のご支度のお時間でございます。」


 入ってきたメイドに目を見開きました。


「あなたは…マリーですか?」


「?はい、そうでございますが?昨夜はあまりお眠りになれませんでしたか?」


 そういうマリーの横を走り、廊下に出ます。


 間違いなく私の家です。


 すぐに主寝室に向かいます。


 後ろからマリーの声が聞こえますがそれどころではないです。

 胸の鼓動が高鳴ります。


(まさか!まさか!まさか!本当に?!)


 あまりにドキドキしすぎて、思うように走れません。

 ようやく見えてきた主寝室のドアに手を掛け勢いよく開けます。


 しかし…


「誰も…いない…」


 私はその場で崩れ落ちました。


 奈落に突き落とされたみたいで涙が溢れそうです。


 そして、マリーが追いつき、


「お嬢様一体どうなされたのです?

 早く身支度を済ませましょう。

 食堂で旦那様と」


 私はすぐに食堂へ走りました。


 マリーが後ろで何言っていますが、今は聞いている暇ありません。


 食堂のドアの前に立ち、深呼吸してドアを開けます。


 そして…


「ん?おはようリーナ」

「おはようリーナ、どうしたの?着替えもせずにそんな慌てて?」


 私がずっと求めていた光景が…そこにありました。


「お父様!お母様あああああああ!」






 後で聞いた話では、私が泣きすぎて大変だったようです。


 大泣きしながらお母様にしがみつき、お母様は困った顔をしながら私の頭を撫で続け、そんな私たちをお父様は困惑しながらも羨ましそうに見ていて、マリーや他の使用人も何事かと集まってきて皆の手を止めてしまいました。


 ですがお許しください。今日だけは…




 


















 あの後、精神的にはすでに22歳を超えている私は年甲斐もない行為に、羞恥に悶えましたが此処からアンドレアス様達との約束を果たすために動かなくてはいけません。


 まずは2日後のトーヤ様という方に助力を願う事と、来月行われるパーティーで、前世のようなことにならないように行動しなければなりません。


 そして、前世で出来なかった分、両親に甘えます!

 子供に戻ったからでしょうか?

 当時のように、子供のような考え方に変わっています。


「好きです。お父様」


 仕事中の父に思わず抱き着いてしまいました。


 今日は珍しく我が家での書類仕事をされています。

 大事な書類は領主館で処理するらしいですが、今日はフォーチャー家の次男であらせられるレオナルド様と共に仕事をされてます。





「今日は半ば息抜きのようなものですなレオ殿」


「そこは否定しませんが、今日は父上が重要な仕事ということで追い出されましたからね。恐らく兄の結婚披露宴と、他の人間には任せられない仕事があるのでしょう。」


「御屋形様は大変ですな。」





 そんな会話をしてらっしゃったので、仕事はないのでしょう。

 遠慮なく抱き着きます。

 どうやら当時の私は甘えん坊であったようです。


「娘が可愛すぎて辛い…」


 そんな父をレオ様は残念な人を見る目で見ています。


「レオ殿…10年ほど有給もらえませんか?」


「長いわっ!!」


 レオ様も素に戻って突っ込みを入れています。


 この懐かしい光景にどうしようもなく幸せを感じてしまいます。ですからもう失うのは絶対に嫌です。

 結局最後に頼りになるのは自分自身の力であることは討伐者時代に経験しております。


 最悪私の全力をもって両親に協力すれば両親が死ぬことは無いかもしれません。

 

 体力は減りましたが、戦闘経験は残っていますので、より一層訓練に励みます。


「嫌だっ!せめて娘が嫁に行くまで片時も離れたくないんだっ!」

「あんたそんなこと言って、リーナの父親として恥ずかしくねぇのか?!」

「え?むしろ誇らしいよ?」 

「ティア殿!アイギス殿がまたご乱心なされました!ご協力ください!」

「あっ、テメェ何言っ

「あなた?あなたが働かないということでしたら、女の私に養ってくださいと、そう言っていると受け取ってもよろしいですか?」

「家族のために…頑張って働きます…」


 父にも引けぬものがあったようです。

 しかし、トレーター家としては重大な義務をまだ果たしていません。

 そう、女性では家督を継ぐのは難しいのです。

 ですので弟がほしいと速やかに伝えなければいけません。


「お父様。」

「ん?どうしたんだいリーナ?」

「私早く弟がほしいです。ですので早くお母様に○○○で○○○○して△▼▲◇◇でピーーーーをお願いします。」


 そう私がお願いすると、レオ様は顔を盛大に引きつらせ、お母様は気絶し、マリーは用意していたお茶をひっくり返し、たまたま通りかかったメイドはズッこけ、お父様は


「誰だっ!俺のリーナにそんな言葉を教えたクソッタレはああああああああああああ!!!!!!!」


 発狂していました。


 うっかり討伐者時代の言葉遣いをしてしまいました。テヘッ♡


 その後、お母様にしっかりと言葉遣いを矯正HA NA SI A Iさせられました……


 そんなこんなで時が過ぎ、いよいよ満月の夜を迎えました。


 アンドレアス様達が、トーヤ様を呼ぶための儀式をしているということで、明日の朝に私の目の前に現れるという事でした。


 どのような方なのでしょう?

 とても楽しみです。


 私とて(今は)女の子、助けていただけるのなら物語の王子様のような男性ならば、と期待してしまうのも仕方ないでしょう。

 ですので、早く寝て早朝にキチンとお出迎えせねばなりません。


「マリー、明日私にとても大切なお客様がお見えになります。

 午前中にはご到着になる予定ですのでお出迎えの用意をお願いします。

 私も早めに寝て早朝起きて準備するよう備えます。」


「畏まりました。お嬢様。」


 そして私は、眠りにつきました。












 朝日を感じて内に目が覚めてしまったようです。

 今は5時くらいでしょうか?


 いつもならもう少しこのままいるのですが今日はお客様がお見えになりますので身支度を整えねばなりません。

 そうしてベットから降りようとするとお布団に違和感があります。


 何か重いものが乗っているような感じです。


 何とかベットから抜け出し原因を確認しようとすると、





「えへへへへっ♡マリアた〜〜ん♡♡」


 女学生のような服を着て、かわいらしい絵の描かれた長いクッションに寝言を零しながら、何もはいてない下半身を打ち付ける、それはそれは汚らわしい変態がいました。


「キャーーーーーーーーーーー!!!!!」 ドゴッ!


 思わず悲鳴と手を出してしまったのも無理ないと思います。


 フフフ…確かに力になってくれる方だとお聞きして、勝手に期待したのは私ですよ?

 

 しかし、いくらなんでもこんな変態といきなり同衾させることはないのではないのでしょうか?


 もうお会いできる機会がないと仰っておられましたが、

 是非とも! 無理やりにでも! 

 機会を作り、今回のことでO・HA・NA・SHIいたしましょう。

 

 アンドレアス様?

 ホーリー様?


 家の者たちがドタドタと駆け寄ってくる音を聞きつつ全力で現実逃避している私と、いいところに入ってピクピクしている変態トーヤ……そして桃源郷で盛大に顔を引きつらせている2柱の神、役者がそろい悲劇を覆すための物語がここから始まります。


「やっぱり、もう一発殴らせてください♪#」バチーン!


「はうあっ!」



シリアスパート 了





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