地味子な委員長がオレ好みのギャル風JKになって告白してきた件
魔仁阿苦
第1話 大八木大成
「ちょっと、
「うん?」
昼休み。
特にすることもないので、いつものように机に突っ伏していたオレ、
半分
その
髪は不自然なほど黒く、制服も校則どおりの膝下10センチでもちろん着崩したりしていない。
「進路相談表はもう書いたんでしょうね」
見た目どおりの冷たい口調でオレを見据える。メガネがキラリと光ったように見えたのは気のせいだろうか。
……やべえ、そうだった。昨日提出できなかったプリントを今日必ず持ってくるように、ってさんざん言われてたっけ。
えーと、確かカバンの中に……あると思うけど。
このままじゃ何を言われるか分からないので、さっさと手渡すべくカバンの中を探したが見当たらない。
おかしいな……確かに昨日、母さんと話をして書き上げたはずだけど。
「わ、悪い……忘れたみたいだ」
別に悪気があったわけではない。昨日は帰宅してすぐに用意したのは事実。だが、ちゃんとカバンに入れたのか確認しなかったのが原因のようだ。まあ、詰めが甘いと言われればそのとおりだけど。
「忘れた、じゃないでしょ。どうしてあなたはいつもそうなの?」
「いつもって何だよ」
「だってそうじゃない! 今だって俺は悪くないみたいな感じだし」
「そんなことねーよ。悪いと思ってるよ」
一応謝っているオレを容赦なく責め立てていく委員長。普段はこういったやりとりが鬱陶しくてオレから話しかけることはほとんどないが、こんな感じで何かにつけ彼女の方から注意され、結局言い合いになるのが日常茶飯事となっていた。
『また始まったよ。委員長の大八木攻め』
『本当。他にも忘れた人いるのにね』
『よっぽど大八木のことが気に入らないらしいな』
オレたちのやりとりを聞いていたクラスメイトは、また始まったか、みたいな雰囲気で大して気にしていないようだ。そんな周囲の雰囲気を感じて、オレもつい強気に言い返してしまう。
「もう分かったよ。明日は間違いなく持ってくるよ」
「本当? もし忘れたらどう言い訳するのかしらね」
ふふっと口元を歪めてオレを見下ろしている態度に腹が立ったオレは言い放った。
「よし、いいだろう、明日忘れたら何でも言うことを聞いてやるよ」
オレの言葉に一瞬驚きの表情を浮かべた委員長だが、やがてにんまりとした笑顔になった。
「分かったわ。男に二言はないわね」
「お、おう」
「それじゃ明日を楽しみにしているわ」
ふっと小馬鹿にしたような笑顔を残して委員長は自分の席に戻っていった。
◇
そして翌日の朝。
「無い? 何で?」
オレは必死にカバンの中をまさぐっていた。昨日の夜、あの委員長の小憎たらしい顔を思い浮かべながら間違いなくプリントをカバンに入れたはずなのに。
くそっ。このままじゃ委員長からどんな要求をされるか分からない。というよりオレのメンツが丸つぶれだ。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
机の上やら引き出し、ついには部屋中を這いつくばって探していて、知らず知らずのうちに大きな音を上げていたらしく、隣の部屋の妹がドアのノックしてきた。
「ああ、いや何でもない」
「そう? 結構大きな音がしたから」
「だ、大丈夫だ」
「分かった。じゃあ先に学校に行くね」
「ああ」
本当は全然大丈夫じゃなかったけど、妹には関係ないことだし、オレは何気ない風を装って部屋から出たが、心の中では泣きそうになっていた。
あー今日は学校行きたくねー。
◇
重い足取りで教室に向かうと、何故か入り口に人だかりが出来ていた。
よく見ると、他のクラスの生徒もいてみんな教室を覗き込んでいる。
「おっす。みんなどうしたんだ?」
人だかりの中に、隣のクラスにいる悪友の
「お、大成か。いやお前の教室にめっちゃ可愛い子がいるんだよ」
「はあ?」
「転校生かなと思ったけど、それなら朝のホームルームで紹介されるはずだし。でもなんか見たことある気がするんだ」
「ふーん。ちょっとごめんよ」
人だかりを抜けて教室に入る。
すでにクラスメイトの半数は席についていて、みんなが噂している女子生徒が何故かオレの席に座っているのを見つけた。
長い銀髪は腰まであって、肌の色も透き通るほど白い。ちょっと着崩した制服がいかにも女の子らしい体型に合っていて、見た目はギャルっぽいがいわゆる美少女というヤツだ。
中でも一番の特徴は蒼い目だった。意志の強そうな
「おはよう、大八木くん」
「えっ?」
「今日はちゃんとプリント持ってきたんでしょうね?」
◇
今、オレは猛烈に困惑している。
オレの席に座り、目の前で微笑みを浮かべている女子生徒―――それもすごい美少女―――が口にした言葉が脳内を駆け巡っていた。
「……えーと」
「あら? もしかして今日も忘れたとか?」
あれ、何でこの子はプリントのことを知っているんだ?
でもこの声……聞いたことがあるような。
「本当に忘れちゃったんだ-。ということは私の言うこと何でも聞いてくれるんだよね?」
「……は?」
まさか……でも何となく
見た目は全然違うように思えるが、その話し方、上から目線な物言い。
何してもらおうかなー、と暢気に笑っている女子生徒にオレは話しかけた。
「もしかして……委員長か?」
「えっ?」
「嘘っ!?」
オレの問いかけに周囲のクラスメイトたちが息を飲んだ気がした。
「うん。そうだけど?」
「え、ええーっ!?」
マジかあああああああああぁぁぁぁっ!?
オレが頭を抱えたと同時に、それまで遠慮がちに様子を窺っていたクラスメイトたちが女子生徒の周りを囲み始めた。
「委員長? 本当に委員長なの!?」
「ど、どうしたのその格好? もしかしてイメチェン?」
「っていうか、何かすげー」
当然のごとく、みんなが委員長に対して疑問に思っていることを矢継ぎ早に質問している。
委員長は微笑みながら答えているが、あまりにも呆然としていたオレにはよく聞こえなかった。
『この髪は地毛なの。今までは目立たないように黒く染めていたんだ』
『瞳の色も元々蒼いんだけど、これまではカラコンを付けてたの』
『髪をストレートにしたのはちょっとした気分転換よ』
ときどき漏れ聞こえた言葉をつなぎ合わせると、つまり今の姿が本来であって、今までは目立ちたくなかったから、ということらしい。
「じゃあ、どうして今日はその姿にしたの?」
誰かが投げかけたその質問を聞いた途端、委員長の顔が緊張したのが分かった。
「それは……約束を果たすためよ」
「えっ?」
そう言って席を立った委員長がオレの前までやってくると、いつものニヤリとした表情を浮かべた。
「さっき聞きそびれましたけど。大八木くん、今日プリント持ってきましたか?」
昨日聞いた言葉と同じはずだが、オレの気持ちはまるで違っていた。
「……わ、忘れた」
「そうですか。では約束どおり私のいうことを何でも聞いてくれますね?」
「あ、ああ」
オレは彼女の目を見ることが出来ずに視線を外すと、委員長は両手でオレの両方の肩を掴み、そのままグイグイと押し出して、ついには教室の壁に押しつけた。
「な、なんだ!?」
いわゆる『壁ドン』である。
まあ通常の場合と立場が完全に逆転しているが。
「それじゃあ私の命令を言ってもいいですか?」
「お、おう」
委員長はすーっと大きく息を吸い込むと一気にまくし立てた。
「大八木くん……好きです! 私と付き合ってください!」
真っ赤な顔をした委員長が口にすると同時に、教室内に悲鳴と怒号が沸き上がった。
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