こちらの扉は内開きにつき
カゲトモ
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「ちょっとマスター聞いて下さいよっ」
「もちろん、どんなお話しでも聞きますよ。タロウさん、どうされました?」
頬を赤く上気させながらネクタイを緩めたタロウさんが力強く言った。
「俺、好きな人がいるんですけれど」
「えぇ」
「すっごく可愛くて仕事も出来て、俺にも優しくしてくれるし笑顔も素敵だし、なんかいい匂いするし可愛いし」
可愛い、二回目だな。
「実は俺、さっき告白して来て」
「えっ、そうなんですかっ」
「そうなんですよぉ、告白してきたんですよぉ。んでねぇ、ふふふ」
笑っているってことは成功したってこと?
「おめ「振られちゃったんですよぉ」
っっっぶねーっ!! まさかの振られていたー!! もうちょっとで早とちりかますところだったわっ。
「っそうだったんですね。それはそれは」
だって振られた割に元気なんだもん。普通振られたら落ち込むもんだと思うし、この様子で告白失敗したんだなとか思う人居ないと思う。かといって投げやりになっている感じもないし。え、なに、振られて嬉しかったとか?
「嬉しいわけないじゃないですかっ、悲しいですよっ」
うん、ですよねー。カウンター叩くくらい違いますよねー。
「俺あの子のこと、本気で好きですから」
じぃっとこちらを見た瞳の奥に、ゆらりと炎が揺れているのが見て取れる。けして焦点があっていないとかではない。タロウさんは振られてもなお、彼女の事が本当に好きなのだろう。
「そうですか。ではまたリベンジされるんですね」
「あったりまえじゃないですか! アタックあるのみですよ!」
「押してダメなら引いてみろ、なんて言葉もありますけれど」
「だめだめ。俺、引けないタイプの人間だから」
あ、それは分かる気がするわ。なんか猪突猛進って感じだし。さすが学生時代にアメフトをしていただけの事はある。
「俺に駆け引きなんて絶対できないし」
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