第4話 ラジオ体操でバテなくなりました。

 朝靄のひんやりした空気を感じると共に、私は起き始めます。

 正確に言うと、ドラゴンさんの鼻息で転がされて起こされます。迷惑な話ではあります。いっつも朝になると鼻息強くなるんですよね。

 もしかして、睡眠時無呼吸症候群というやつなのでは? 名前だけ知ってて、症例については全然知りませんけど。


「聞こえてるぞ、愚か者」

「ありゃ、起きてましたか」

「半分はな」

「もう半分は?」

「寝ている」


 念話知識によると、この世界のドラゴンという種族は脳や心臓を幾つも持っているらしいです。それゆえに、眠るときも脳の半分は起きていて、もう半分の脳を休ませつつ意識を保っているらしいです。便利な体ですね。


「それにしても奇怪な動きよ」

「そんなに変ですかねぇ?」


 私のラジオ体操を眺めつつ、ドラゴンさんは鼻息を噴き出して返事をします。

 毎日三セットくらい繰り返していたら、数日でラジオ体操をこなしても平気な体になりました。習慣って大事!


「いよいよ正拳突きを始めますよ!」

「宣言しないで良い」


 腰を落とし、掌を合わせて山川草木に感謝を捧げ、ゆっくりと構えを取って、それから突きます。右拳でも、左拳でも、突く前に必ず感謝を捧げます。掌を合わせて、必ず祈るのがコツです。


「もう終わりか?」

「うるっさいですねぇ。仕方ないでしょうよ、まだ今日始めたばっかりなんだから」


 いや、ほんと、百回も突かないうちに疲れました。いや、疲れたというか、腕がこう、重たいというか、電池が切れたというか、なんかそんなあれです。二の腕辺りがパンパンに張ってますし。膝がこうプルップルしてます。

 ラジオ体操でかなり鍛えられた筈なんですけどね……力の入れ方がなってないのかも知れませんね。ちょいちょいと考えながら突いていこうと思います。

 目標はとりあえず百回ということで、おひとつよろしく。

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