だるま屋さん。
私が高校生の頃、
みんなが通っている食堂があった。
その食堂の名前は『だるま屋』。
そこはいかにも人の良さそうなおじいさんと
おばあさんがやっている昔ながらの食堂で、
カレーが350円とか焼きそばが300円とか
とにかく学生のお財布事情には優しすぎる
価格だった。
中でも200円のたこ焼きが人気で
どの高校の生徒も
部活や学校終わりには
こぞってこの食堂に集まっていた。
高校を卒業してからというもの、
すっかりその土地から離れていた私だったけれど、社会人になってから付き合い始めた彼氏とのデート中に急にその『だるま屋さん』の事を思い出して。
彼に伝えたら、まさかの
「俺も一回だけその店に行ったことある!」
って反応にビックリ!
そのまま二人でドライブがてら
『だるま屋さん』に行ってみる事にした。
高校を卒業してから、
すでに3年が経っていたけど
その食堂のおじいさんもおばあさんも
相変わらずお元気そうで。
席についたら、
ちょうどおじいさんが
最近デジカメを買ったばかりということで
是非二人の写真を撮らせてくれと
ニコニコした優しい笑顔でせがまれた。
少し恥ずかしかったけど、
二人でそのまま写真を撮ってもらって
カレーライスとたこ焼きを食べることにした。
高校時代に足しげく通っていた時と
全く変わらない懐かしい味に
舌鼓を打ちながら
カウンターごしに見えた
撮ったばかりの私達の写真を嬉しそうに
確認するおじいさんの笑顔が
とても印象的だった。
数ヶ月後、
『まただるま屋さんに行きたいね』
って話になった私達は
これまた車を走らせ、
だるま屋さんへと向かった。
席につくと、
少し腰の曲がったおばあさんが
お冷やを2つ持って来てくれて、
そしてその後すぐに
おじいさんが二枚の写真を
机に並べてくれた。
その写真は数ヶ月前、
ここに来た時の私達の写真だった。
「ずっとこの写真を現像して
私達が来るのを待っていてくれたのかな。」
そんな風に思いながら
嬉しそうにニコニコと笑う
そのおじいさんを笑顔を見ていたら
何だかあったかすぎて涙が出そうになった。
油の染みた換気扇。
そんな昔ながらの食堂のだるま屋さんが
みんな本当に大好きでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます