ファンタジー作品

論評者:ハティ

①「魔王女様は遊びたいッ!」 作:NAKA/road

 

 はじめまして、ハティです。ファンタジー・SF批評大会より参りました。

 早速ですが、エントリー作品「魔王女様は遊びたいッ!」の批評に入ります。


 文章の表現力や登場人物の掛け合いについては申し分なく、それぞれの魅力がよく伝わってきました。ですが前半を一通り読んだ時点で、かなり大きな弱点を見つけましたので指摘します。


 それは、「舞台である城の描写が乏しい」ということです。


 第1話で少女の元居た世界を徹底的に破壊していますので、次の場面では、読者は未知の世界へ連れていかれます。ですから、すぐさま別世界に関する情報を補完しなければなりません。


 例えば、ファンタジーやSFの映画のオープニングを思い浮かべてください。基本的に遠景からみせて、その場所がどんな環境で、どんな文化水準であるかを示したうえで、その中に住んでいる登場人物にズームインします。

 今作の2話の場合だと、室内のディティールを見せてから人物のやり取りに入ったほうが、読者はスムーズに入っていけます。

 内装が古風クラシカルなのか、現代風なのか、あるいはH・G・ギーガー風なのか。これの指定によっては、その後のイメージが大きく変わってしまいます。

 また、存在する道具や家具、その素材を示すことで、その世界の文化技術レベルをある程度補完することもできます。

 例えば、建物のいたるところに生物の骨が使われている、と一文加えるとしましょう。すると読者は「この城を建てるために無数の怪物が殺されたのだろう」と説明されずとも理解し、死の匂いを感じることでしょう。

 4話で「玉座の間」とありますが、これはとてももったいないです。

 というのも、最高権力者が政務に使う場所ですから、当然ながらその場所にあるものは、その世界の最上のものが揃っています。ですから、玉座の間を詳細に描くことで、魔族の美醜概念や最高級素材について読者の想像を刺激できるのです。


 別世界ファンタジーは、ある意味世界そのものが主役です。世界観の広がりをもっと盛り込んでいけば、更なるブラッシュアップができるのではないでしょうか。

 


[ここで応募者より、論評者へ質問:登場人物の描写について]



 人物に関する描写は全く問題なく、魔族独特の価値観や個々のパーソナリティはしっかり表現されています。

 人物同士のやりとりはそのままで十分良いものですので、小道具や設備など周辺のオブジェクトに対する反応を小出しに挟み込んでいけば、文句なく面白い作品に仕上がると思います。



[以下、応募者から論評者への返信]



 ハティさん、本当にありがとうございます。おかげで、自身の弱点をはっきり理解できました。ハティさんの御指摘を糧にさせていただき、精進してまいろうと思います。


 ありがとうございます。


 URL:https://kakuyomu.jp/users/mitimitinakamiti/news/1177354054885684377

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