陳粋華、羅梅鳳、汪河を渡河す。
初書。倫書。義書。例書。 史経。理経。総経。状経。礼経。
一書。二書。三書。四書。 一経。二経。三経。四経。五経。
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北伐軍は、ゆるりゆるりと北上して
文字どおり河と言っても、対岸まで
巨人の時代の後半から最初の人の時代までは、ここまでが、
度々どころか、数年に一度氾濫し上流の
そのため、辺り一帯は麦や稲作を諦め染め物に使う藍の生産に
ほとんどの禁軍の卒や武官でさえ、汪河を見たことがない。
「ほぇー」
感嘆符を口にして、陳粋華も驢馬車から降りて、汪河を眺める。感嘆符を先にして喋るのは身分の低いものがすることで
しかし、この光景には、どうしようもない。
御者の
「夏侯さんも、汪河が初めてですか」と陳粋華。
「ワシは、生まれも育ちも
そこへ、黒馬から下馬し轡を引っ張って
馬でさえ、轟々と音を立てて流れる汪河に対しやや怯えをみせる。
「汪河を渡ったら、
不気味なことを言う。
夏侯禄まで、振り返る。
「この河が
汪河の北岸は靄って陳粋華が目を凝らしてもよく見えない。言われてみると不気味だ。
陳粋華の驢馬車と羅梅鳳の黒馬の前には、浮舟を利用した仮設橋が北岸まで設置されている。
多少ふらふらするが、その幅十丈(30メートル)もあり、糧食から装備を積んだ輜重隊の牛車まで渡れる。
陳粋華と羅梅鳳はこの仮設橋の渡し口の渋滞の中、ノロノロ進む。
「
『やるじゃん、ウッチー(*^^*)』
仮設橋を渡り始めると、流石に、驢馬車でも揺れる。夏侯禄も、どーどーと
羅梅鳳まで、黒馬から下馬し轡を自分で持って仮設橋の上を歩いて渡っている。
平然と馬上のまま渡っている武官もいるが、多くは、下馬して
仮設橋のすぐ下を轟々と計り知れない汪河の水が流れているのが感じられる。
もし落ちたら、命はないだろう。汪河に住むと言われる、全長が一丈あるとも言われている伝説の人喰い魚、
十万の軍勢がたった十丈(30メートル)に押し込められたまま、トボトボ歩く。
こんな長い三里(1200メートル)は陳粋華も始めてだ。
しかも、仮設橋が若干揺れているせいか、気分が悪くなってきた。
驢馬車と、羅梅鳳がもう少しで渡り切るというときに、異変は起きた。
北岸で、
どどど、どんどんどん。どどど、どんどんどん。
単音三度に長音三度、敵襲の警報音だ。
「おおおっ、」
「なんだ、、、」
「敵襲か?」
こんな不安定な橋の上で、パニックになってはいけないのは、誰もがわかるが、誰もが一刻も早く渡りきりたいし、渡りだしたものは、戻って、渡りたくない。
北岸の近くまで渡りきっているものは、もう橋から飛び降りて、浅瀬に飛び込みだした。
しかし、驢馬車の陳粋華と夏侯禄はそういうわけには、いかない。
陳粋華らは、丁度、後ろから押され、前は詰まっている状態に置かれた。
戦鼓はまだ、警報音を鳴らし続けている。しかし武官の校尉、校佐らの指示は一切ない。
次の局面の変化で、本当のパニックになった。ぐぇっとか、どっとか、人の鈍い叫び声が聞こえた。河の流れの音で矢の風切り音は聞こえなかったが、人と物で満載した仮設橋に矢が降っているのだ。
慌てた卒達が驢馬車の後ろに当たり押し迫る音が聞こえだした。
陳粋華が慌てだしたのは、驢馬車の車輪が一瞬、卒達の逃げようとする圧力で浮いたときだ。
「
陳粋華もそうしたいけど、そんなわけには、いかない。
また、矢が降ってきたのかどうかわからないが、驢馬車の外壁にも刺さっているのが音でなく、振動で感じられる。
それより、卒等があげる声が恐怖感を煽る。
「夏侯さん、こそ、お逃げを、私はこれら記録とそれこそ一心同体です」
「私は、もうそんなに早く走れませんがな、それに、前も詰まっておりまする。それより、
『そんなの、あったっけ、もう忘れてた、、(@_@;)』
その時、羅梅鳳の怒号が聴こえた。
「てめぇら、慌てるんじゃない。この狭い橋で進むも戻るも出来ないことは、わかっているだろう。兜を被れ、身を
陳粋華が頭を驢馬車から出して、見やると、十丈の仮設橋の上で、羅梅鳳が武神、
「おおっ、、、」
と卒が
「立っている、俺のほうが、矢がたくさん刺さるって
と羅梅鳳。羅梅鳳は、兜どころか、盾すら持っていない。只、いつも引きずっている長剣を抜いて味方であるはずの卒の群衆に向けているだけだ。
しかし、羅梅鳳が長剣の切っ先の向きを変えた。なんとこともあろうか武官の
「貴様、上官に向けてこの無礼はなんだ」
「あんたが、一番動いて逃げ出しそうだから、こうしているだけどだ、他意はない」
矢が降る中、その校佐も必死だ。
「校佐の俺も斬るというわけか」
「
「
「味方に斬られたとあれば、戦死の扱いにはなりませぬな少なくとも御家族に恩賞は出ないでしょう」
「貴様っー」
「
卒まで、矢の降るなか取り直し始めた。
しかし、羅梅鳳が止めているせいか中には数人、矢の恐怖に耐えかねて、汪河に自ら飛び込んで、流されていったものや、羅梅鳳が惑う卒たちを鎮圧させたため押されて、悲鳴を上げながら仮設橋から落ちたものもいた。
汪河の黄色い泥のものすごい流れの中、首だけ浮かべあっという間に下流へ流されていく。誰も助けられない。
逆に、幾人か、落ちて流されたことで、騒乱は沈静化した。
運に任せ矢に挿さる方が、ましなのだ。
「拙攻の騎馬隊はなにをやっているんだ」
「ほんとだ」
「近くの
そんな小さな不満の声が、卒の間から上がった。
やがて、大量の馬蹄の駆ける音が北岸で響き矢はおさまった。軽装騎馬隊が敵の駆逐に向かったのだ。陳粋華は、慌て驢馬車から飛び降りると、北岸の方に目を向けた。
小高い丘の上を汎民族の馬より一廻り小さな馬に乗った集団が駆けていった。
敵だ。
賊軍だ。
陳粋華には北方の胡族に見えた。
禁軍の騎馬卒のように鎧を着ていない。嫌になるほど
羅梅鳳が、仮設橋の橋板に刺さった賊軍の矢を抜いて言った。
「
「少数で、斥候の間隙を突いた、威力斥候だろう。丁度渡河中だったので、面白半分で矢を放った程度じゃないか。しかし、軽装騎馬の連中は懲罰モノだな、、
先程の校佐が羅梅鳳を睨みつけて北狄の矢が数本刺さったままの仮設橋を渡る。そう羅梅鳳が言った。
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陳粋華の男性レポ。
イケメン度 在 不在
胡族風の騎馬卒数人 見えなかった 不在(命狙うやつとは無理)
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