いさましい長門有希のトースター火星に行く

「ちょっ!いた!痛い!やめて有希!!」

 なぜハルヒが珍しくそんな声を上げているかというと、長門がウニでハルヒを殴っているからだ。


「長門、いくらハルヒに「いさましいちびのトースター火星に行く」はSFというより児童文学、と言われたからってウニで殴ることはないだろ」

 長門は無表情のまま、ウニをハルヒに叩きつけている。

「いさましいちびのトースターは純粋なSF、訂正してほしい」

 ウニのトゲがハルヒの頰に突き刺さり鮮血が飛び散っている。

 朝比奈さんは困ったように右往左往し、古泉は「おやおや、困ったものです」などとおきまりのセリフを吐いて、傍観に回っている。

「わかっ…いたっ!わかったから有希、あやま痛い痛い!!謝るから!!」

 こんなに狼狽したハルヒを見るのも珍しい。

「謝るのではない、しっかりと読んで、訂正してほしい」

 長門はウニで殴るのをやめない。

「いたっ!ちょっ!やめ!ヤメロー!!!」


そんな、うららかな春の、青春の1ページであったとさ。


「いさましい長門有希のトースター火星に行く」完

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