老いたる霊長類の星への長門有希

ティベット文字  7世紀ごろ、*ソンツェン=ガンポが仏典翻訳のため、インド文字を元に作ったと言われる表音文字。

−数研出版「世界史辞典」


 ルイ14世が1661年に親政を始め、コルベールを登用して中央集権、富国強兵をはかっていた頃、俺たちはいつも通りSOS団として文芸部室に集まり、別段変わりのない毎日を送っていたのだった。


 それはそうと、ルイ14世がヴェルサイユ宮殿を完成させ文芸を保護した、フランスの王制における黄金時代ともいうべきこの時代は、まさしく長門にとって過ごしやすい時代だったと言えるだろう。


 窓際で本を読む長門を横目に、俺と古泉はいつものように、暇つぶしのオセロに興じるのだった。ちなみにオセロが発明されたのは1973年の日本である。意外と遅いな。


 古泉が1索単騎待ちのオープンリーチをかけ、点棒をオセロ盤の上に叩きつけると、右半身だけ5分前の過去に、左半身だけ5分後の未来に時間平面移動しながら朝比奈さんがお茶を持って来てくれたので、俺は礼を言ってお茶に口をつけると、落ち着いてこの盤面を眺めながら古泉のオープンリーチの意図するところを考えた。


 次の一手は間違いなく『と金』による王手飛車取りだろう。俺は手札からハートのエースを残して全ての手札の交換を宣言した。狙うは21、ブラックジャックである。


 ところでオセロにおける簡単な戦術をご存知だろうか。それは前半戦に自分の利をとりあえず捨て置いて、如何に相手が置きたいところに駒を置けなくするか、という、地味な嫌がらせを続けるのである。


 古泉がポーンを前進させたので、俺もそれに対応してルーレットを回し、出目の分自分の駒を前進させる。どうやら俺の職業はタレントになったようだ。


 銀行から3000ドル受け取って、青森のリンゴ農家に投資して俺の番は終了した。


 古泉のターンとなりアンタップ、アップキープー、ドローを済ませると、場に『真鍮の都』をセットした、赤単の古泉が多色地形を使うのは珍しい、と訝しんでいると、古泉は真鍮の都から生み出された青マナによって『テレパシー』を唱えたのだった。

 これにより俺の手札は古泉に公開されることになる、俺は古泉のテレパシーにスタックを乗せて、浸透強襲ドクトリンと、戦略爆撃機の研究開発を始め、軍需大臣を『ヒャルマー・シャハト』に置き換えると、マハトマ・ガンジーに対して『貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ。(開戦)』を選択し、宣戦を布告した。

 俺のスタックの処理が終わり、古泉の『テレパシー』が解決されると、『テレパシー』の効果によって俺の手札が公開された、鉄4枚、麦1枚、羊2枚という手札を古泉はじっくりと眺めると、『独占』のチャンスカードを使用し、鉄の独占を宣言したので、手札が割れている俺は、古泉に鉄を4枚差し出し、長門も渋々鉄を3枚差し出した。

 俺はシーフによる罠の探知を行いたいと、ゲームマスターの長門に尋ねると、2+2D6で15以上で成功と言われたので、これはどうやら探知不能な罠が設置されているということを察し、『マラーの冠』を使用して『魔術師ワードナ』の居城であるダンジョンの10階へ続く、9階のシュートの座標へテレポートしたのだった。


『わかっておろうが、お前らは主なる魔術士ワードナの領地を侵しておる。

お前らがオレの守りを破ることはできなかろう。

ましてや、オレと戦って、勝とうなどとは夢にも思わんことだ!

そこで、あわれなお前らにこんな手がかりを教えて進ぜよう。

コントラ-デクストラ-アベニュー』


 というメッセージを横目に、ダンジョンを進んでいく、この階層の非常に複雑そうに見える滑る床は、実は方向キーをずっと上に入力しているだけで通過可能だ。


 日光に1時間晒した地図を片手に、俺たちはついに魔王『長門有希』の玉座の前へやってきたのだった。


 古泉が『バブルマン』を倒した時に入手した特殊武器『バブルリード』を至近距離でセレクトボタンを連打しながら長門に打ち込むと、長門はバラバラになった。


 その時長門が、

「私は魔王の中でも最弱、人間ごときに負けるとは、魔王の面汚しよ」

 と言ったので、俺たちは『デスピサロ』の最愛の人であった『ロザリー』の殺害の裏にある陰謀を突き止め、無事、『ヤス』が犯人であることを証明したのだった。


「老いたる霊長類の星への長門有希」完

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