長門有希たちの星
朝起きたら無人島にいた。
これだけ聞くと読者諸氏には誤解を与えかねないのでもう少し詳しく説明しよう。
俺が今、体育座りで座り込んでいるのは紛うことなく無人島である。
なぜ無人島だということがわかったのかというと、それはこの島が畳一枚にも足らないほどのサイズだからである。
島はサイズ的には小さいのだが、隆起した岩、というよりは、ミニサイズの島といったほうがよい。わずかに海面から顔を出した部分には土があり、ちょっとした草も生えている。どうやら当面は草を食って生きていくしかないようだ。
周囲を見回すと、爽やかな潮風が頬を撫でる。水平線を見渡す限り、他の島などは見えない。
ぼんやりと海を眺めていると、向こうから平泳ぎで泳いでくる人影が見えた。
長門である。
思い出したくもないあの冬の騒動にしても、朝倉に殺されそうになった時も、いつだって俺を助けてくれるのは長門なのだ。きっとドラえもんばりに何か秘密道具を取り出して俺を助けてくれるに違いない。
ビショビショの長門が何を口にするのか、と期待の眼差しで待っていると
「退屈すると困るからUNOを持ってきた」
と言ったのだった。
かくしてひとりぼっちの孤島症候群から、人数は二人に増えたものの、俺たちはなすすべもなく、狭っ苦しい孤島でUNOに興じている訳である。
長門のあがり札以外全てスキップかリバースという怒涛の連鎖によって完膚なきまでに打ちのめされてしまう展開が延々と続いている中で、俺たちを見つけて救助のために近づいてきた船は多数あったのだが、それらの船は全て沈んでしまっていた。
何故ならばここはバミューダトライアングル。この海域を通る船が不思議な力で沈んでしまう魔の海域だからだ。
そして俺は目線を落とし、長門のドロ4を返す刀で打ち取ることのできるドロ2が手札にあることを確かめると、手にじっとりと汗をかきながらも逆転のチャンスを虎視眈々と狙うのだった。
「長門有希たちの星」完
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