第215話 大賢者⑨
「スサを倒すには三つの壁を突破する必要があります。一つは水の魔法。二つ目は風の魔法。そして最後は膨大な魔力反発による防御です」
私の言葉に、ヒナさんとリッカさんは静かに頷く。
カレンさんへは隣にいるヒナさんから伝えてもらう。
「まずはカレンさんの炎の魔法で、スサに水の魔法を使わせ、それをリッカさんの氷の魔法で無力化。続いて、私の雷の魔法で、スサに真空の壁を作らせ、風の魔法を撃たせないようにする。そして最後は、カレンさんとヒナさん二人が、それぞれ順に渾身の一撃を連続して放つことで、スサの魔力反発による防御を突破します」
私の言葉に、リッカさんが首を傾げる。
「今の話だと、ウサギさんの攻撃がスサに効くかがキーだと思うけど、さっき簡単に止められた攻撃が通用するのかしら?」
リッカさんの疑問はもっともだが、私は確信を持って答える。
「スサは、基本的に防御行動を取りません。魔力の反発でダメージを受けないと思っているからです。そんなスサが、ヒナさんの攻撃は腕で防御して防ぎました。無防備ではダメージを受けると判断したからだと思われます。カレンさんの攻撃で魔力反発を使った後のスサなら、きっと通用するはずです」
私の言葉にリッカさんが頷いた。
「よく見てるわね。それなら賭けてみる価値はありそう」
私の言葉を聞き、カレンさんに伝えていたと思われるヒナさんが、こちらを向いて頷きます。
カレンさんも背中を見せながら片手を上げました。
「雑魚どもがこそこそと。お前たちが何をしようと私には効かない」
鬱陶しそうにそう言うスサに、私は笑みを浮かべて答える。
「その油断が命取りです。雑魚と見下した相手に倒される気持ちを味わってください」
私の言葉を合図に、カレンさんが叫びぶ。
『紅蓮!』
ーーゴウッーー
燃え盛る豪炎がスサを包む。
「効かぬわ!」
そう叫ぶスサの周りを巨大な水の渦が覆い、カレンさんの放った炎がかき消された。
想定通りの対応に、私は安心しつつ、リッカさんの方を見ると、リッカさんは既に右手を水の渦へ向けていた。
「凍てつけ」
ーーパキパキッーー
呟きと共に、巨大な水の渦が、一瞬で氷へと変わる。
その間、私も遊んでいたわけではない。
空にはすでに暗雲が立ち込めていた。
氷で中は見えないが、私はスサがいたところへ目掛けて雷を落とす。
『火雷!』
ーードゴーンッーー
轟く雷鳴が鼓膜を激しく揺さぶるが、手応えはない。
間違いなく、真空の壁で防がれている。
バチバチと雷の余韻が消えない中、リッカさんが魔法を解き、氷の渦が消えると、中から無傷のスサが現れた。
全ては計画通り。
それを見るよりも早くカレンさんが、合図するまでもなく、スサの元へ跳躍していた。
『火練(かれん)』
スサの目の前まで飛んだカレンさんが次に唱えたのは、自身の名前を冠する魔法。
魔力の全てを右手に集中し、肘の後ろを爆発させ、爆発の推進力を右拳に乗せた攻撃。
ーーボンッーー
爆発の音と共に、燃える拳が唸りをあげ、スサを捉える。
ーードンッーー
カレンさんの攻撃を、スサは左腕で受けていた。
衝撃波がその場に広がる。
だが、これで終わりではない。
攻撃を止められた後、すぐさまその場を離脱したカレンさんと入れ替わるように跳躍してきたヒナさんが、足を横に振りかぶる。
魔力の集中した左足が、唸りを上げてスサの右脇腹を襲う。
ーーバキッーー
ヒナさん渾身の横蹴りがスサの肋を折る音が鈍く響く。
致命の一撃ではない。
でも、私たちの連携がスサに通った。
「ぐっ……」
強大な存在であるが故に、これまでほとんど痛みを感じたことのないであろうスサが、痛みに膝をつく。
そんなスサを追撃しようとするカレンさんとヒナさん。
でも……
「カレンさん!」
そう言うなり、カレンさんを抱えて後ろへ跳ぶヒナさん。
「お前……」
地面に着地したヒナさんへ、追撃を邪魔された文句を言おうとして、カレンさんの口が動きを止める。
青ざめた顔でカタカタと歯を振るわせるヒナさんを見たからだろう。
「……雑魚どもが」
そんな二人には目も向けずに、スサが立ち上がった。
その瞬間、空気が変わる。
それまでもスサの魔力は強大だった。
でも、今感じる魔力は、先ほどまでと比べ物にならないほど禍々しい。
肌を切り裂き、血をぶちまけてしまいそうなほど、鋭く痛烈なものだった。
まるで、先ほどまで私たちへ絶望を振りまいていたミホちゃんを感じさせるような魔力が、その場を支配する。
「……もうやめだ。やはり加減するのなんて性に合わない」
スサを中心に風が吹き荒れる。
暗雲が立ち込め、雷鳴が鳴り響く。
私が魔法で作り出す、小規模な雷雲などではない、本物の嵐。
そんな嵐が迫り来る予感。
「大事な家畜の農場が壊れないよう気を遣っていたが、面倒だ。食事は別の国で探す」
どんどん増していく雨と風。
吹き付ける雨粒は頬に当たるだけで痛く、台風のような風は、魔力を用いて踏ん張らなければ、立っているのですら辛い。
「魔力を隠したり。周りを破壊しないよう気を遣ったり。もう嫌だ! 全部壊す!」
癇癪を起こした子供のように、スサが叫ぶ。
嵐で視界は著しく悪くなり、草や木々が倒れ出し、壁が崩れ始める。
これまでとは規模の違う魔力。
災害と呼んで間違いない存在。
それが目の前にいる。
隣には、いつの間にか戦いをやめてこちらへ来ていたスサの配下の将軍の姿があった。
「お前たち、なんてことをしてくれたんだ。こうなったスサ様はもう止められない」
そう呟くクラムへ、私は尋ねる。
「前にもこうなったことがあるんですか?」
私の質問にクラムが頷く。
「ある。五十年前にこうなられた時は、一週間ほど嵐が続いて、街が二つ消し飛び、四つの町や村が水没した」
絶望した表情のクラムに、彼が嘘を言っていないことを理解した私は、スサを止めるべく、知恵を振り絞る。
でも、天災のような存在を前に、すぐにはいい考えが浮かばない。
「ははははっ! 壊す! 壊す! 全部壊してやる!」
叫びながらさらに魔力を上げ、嵐の規模を大きくするスサ。
凄まじい雨と風に、打つ手のない私たち。
「一時休戦だ。このままでは、この王都ごと全員消し飛んでしまう。貴重な食料が丸々消えてしまうのは、我々も本意ではない」
クラムの言葉を聞いたリッカさんが肩をすくめる。
「あれじゃあ子供の癇癪じゃない。あんなのを魔王にしようなんて、貴方たち大丈夫?」
リッカさんの言葉にクラムは、真っ直ぐにスサを見つめながら答える。
「あの方はあのままでいい。誰もが恐れる強さと、子供のように純粋な心。それだけでいい。政治も戦争も、面倒なことは全て私が引き受ける」
そんなクラムを見て、リッカさんがため息をつく。
「貴方、スサに惚れてるのね」
リッカさんの言葉に、クラムは恥ずかしげもなく答える。
「ああ。全く見向きはされていないが」
クラムの言葉に、リッカさんは苦笑する。
「お互い辛い恋路ね。私もテラ様には全く見向きされていないから」
四魔貴族に片想いしている者同士の会話に、私は口を挟む。
先ほど私に子供を産ませようとしていた男の話とはとても思えなかったが、そんなツッコミを我慢しながら。
「恋バナに花を咲かせているところ申し訳ありませんが、早くなんとかしないと王都が消し飛ぶんですよね? 貴方が面倒ごとを引き受けると言うなら、今回も引き受けてくださいよ。以前こうなった時はどうやって止めたんですか?」
勢いを増す一方の嵐の中、私はクラムへ尋ねる。
「前回は、魔王様に止めていただいた」
クラムの言葉に私は肩を落とす。
「……参考にならない回答をありがとうございます」
そんな私を見たカレンさんが、ポンと私の肩を叩く。
「スサがどうなろうと、俺たちがやることは変わらない。スサを倒して、魔王様の手からエディを取り戻す。それだけだ」
私は、肩に添えられたカレンさんの手を見ながら、カレンさんを見る。
「それができれば苦労しません。どうやってあの天災のような存在を倒すんですか?」
私の問いに、ニッコリと笑うカレンさん。
「それを考えるのがお前の仕事だろ、小賢者、いや、大賢者リン先生」
勝手なことをいうカレンさんを睨みつつ、私は対応を考える。
カレンさんが言うことはともかく、私にできることは最後の最後まで考え抜くことだけだ。
……そんな時だった。
突然リッカさんが口を開く。
「その必要はなさそうよ」
リッカさんの視線の先へ目を向けると、突然分厚い雲が割れて、光が降り注ぐのが見えた。
いや。
その生ぬるい表現は、この現象を表すには相応しくない。
まるで、神話の中の神の降臨のように、巨大な光の束が、天から地上へ降り注ぐ。
そしてその光は、嵐の中心で猛威を振るうスサを包む。
ただ、その光は、神の降臨を示す柔らかな光ではなく、膨大な熱を撒き散らしていた。
強烈な光と熱が、スサから離れたところにいる私たちのところへも届いた。
しばらく経って光が消えると、そこには魔法障壁で直撃を避けたものの、その障壁を作るために大きく魔力を消費し、疲弊したスサの姿があった。
スサからの魔力の供給が絶え、吹き荒れる暴風が収まっていく。
晴れていく雲の隙間から降り注ぐ陽の光。
そんな光を浴びながら、一人の男性が、二人の女性を従えながら歩いてくる。
「久しいな、我が妹よ」
陽光を浴びながらそう呟く男性。
燃えるような赤い瞳は宝石のように美しく、その顔の造形は今まで私が出会ったどの男性よりも美しかった。
逞しい長身の体に、金色の髪が靡くその美しい男性は、スサに近づくと、跪く彼女に右手を差し伸べる。
表情に悔しさを滲ませながら、スサはその手を取った。
「テラ兄……。なぜここへ? 王選まではお互い手出ししないルールでは?」
四魔貴族テラ。
スサと並ぶもう一人の強大な存在までもがこの場へ現れたことに、私は戦慄する。
そんな私のことなどよそに、スサの言葉を聞いたテラが頭の後ろをかく。
「そのつもりだったんだがな。俺の花嫁が、俺の配下に攫われ、この国へ向かったと聞いたからここへ来た。すると、理性の飛んだお前がいたから、やむなく手を出したと言うわけだ」
テラはそう言うと、妹に向けていた優しい眼差しを厳しいものに変え、リッカさんへ視線を向ける。
「言い訳を聞こうか、『元』将軍リッカ」
テラの言葉に、リッカさんが表情を強張らせる。
「私は……」
そんなリッカさんの前に、カレンさんが立った。
「誰が花嫁だ? 俺のパートナーはもう決まっていると言ったはずだ。それに、この雪女は俺を攫ったわけじゃない。俺と一緒にスサの首をとって、お前に魔王の座を用意し、プロポーズしようとしただけだ」
カレンさんの言葉に目を丸くするテラと、慌てるリッカさん。
「ちょ、ちょっと!」
そんなリッカさんにカレンさんは気持ちのいい笑顔を向ける。
「間違ったことは言ってないだろ?」
カレンさんの言葉に、リッカさんは、言いたいことを我慢した様子で黙る。
カレンさんは今度はテラへ視線を向けた。
「助太刀は感謝する。だがこれ以上は結構だ。俺はこれからお前の妹を倒すが、問題はないな?」
カレンさんの言葉に、テラは首を横へ振った。
「花嫁の願いはなんでも叶えてやりたいところだが、これ以上スサを相手にすると言うのなら、俺も相手にしてもらわなければならない」
テラの言葉を聞いたカレンさんが鼻で笑う。
「俺に惚れたんじゃなかったのか? プロポーズした相手より妹の方が大事? 笑わせるな」
カレンさんの言葉に、テラは再度首を横に振る。
「違う。王選が始まれば、スサとは生死をかけて戦うつもりだ。だが、王選前にスサを倒したとなれば話は違う。王選の対立候補を、王選前に影で排除した者を、誰が王として敬う? 千年続いた魔王様の跡を、魔王様と戦うことなく継ぐには、それ相応の説得力が必要だ。仮に今ここでスサを倒して王となっても、そんな王座はすぐに終わりが来るだろう」
私の目を持ってしても、まだテラという四魔貴族の本質は分からない。
でも、今の言葉を聞く限りでは、理性のない相手ではなさそうだ。
少なくともスサよりは会話が成り立つように思えた。
そんなテラへカレンさんが言葉を投げつける。
「なるほど。王としてのお前は素晴らしいんだろう。そこの雪女が惚れるのも分かる。でも、俺はそんな男はごめんだ。俺のパートナーは、王の座なんかより、民の安寧より、俺をとる。俺のためなら全てを犠牲にしてくれる。そんな男だ」
カレンさんは疑いなくそう言った後、言葉を続ける。
「問おう。お前は、魔王の座と俺、どちらを取る?」
カレンさんの問いに、テラが一瞬考える。
そんなテラを見て、カレンさんがふっと笑う。
「迷う時点で、お前にとっての文句なしの一番は俺じゃない。たとえお前と一緒になっても、お前は俺と国、どちらかを選ばなければならない時、間違いなく国を取る。そんなやつとの結婚なんてごめんだ。俺は、俺のことだけを考え、俺を幸せにしてくれるやつと一緒になる。その結果、明日を待たずに死ぬことになろうとも」
そんなカレンさんへ、リッカさんが魔力を込めた右手を向ける。
「貴女にテラ様の何が分かるっていうの! テラ様はドン底で死ぬしかないと思っていた私を救ってくれた! テラ様は誰より民を思い、誰より素晴らしい王になるお方よ! そんなお方に自分だけを見て欲しいですって? ふざけるのも大概にしなさい。テラ様に見てもらえるだけで、どんなに幸せだと思ってるの? 私なんて……何百年も一緒にいて、人生を賭けて想い続けても、全く見向きもされず、指一本触れていただけないのに……」
そう言って涙を流すリッカさん。
実らない恋の辛さは、私もよく分かる。
カレンさんの言う通り、エディさんは間違いなくカレンさんを第一に考え、カレンさんのためならどんな犠牲も厭わないだろう。
もし、四魔貴族でも魔王でも、カレンさんに害を加えようとしたならば、たとえ無駄死することが分かりきっていても、死ぬまでカレンさんのために戦うだろう。
「カレンさん。恋愛は人それぞれです。貴女の言葉通り、貴女も私もエディさんも。愛する人を第一に、愛する人のためなら他の全てを犠牲にしてでも何でもやるでしょう。でも、全ての人がそうじゃない。全ての人にそれを求めるのは間違っているんじゃないでしょうか?」
私の言葉に、カレンさんはニコッと笑みを浮かべて頷く。
恋敵であるはずの私ですらどきっとするような笑みを浮かべて頷く。
「その通りだ。だから、俺なんかじゃなくて、魔王を目指し、民を思うその背中を好きになってくれるやつと一緒になればいい。……例えばそこの雪女のようにな」
カレンさんの言葉に、涙を流しながら怒りを隠せずにいたリッカさんが、驚きの表情でカレンさんを見た。
そんなやり取りを黙って見ていたスサが立ち上がる。
「……うるさいぞ、お前たち。茶番ならよそでやれ。私は私を甘く見た奴らを許すわけにはいかない。テラ兄の配下の将軍も、無礼な紅眼の女も、ウサギも、ニンゲンのガキも。全員ここで殺す」
再びその身の回りに魔力が渦巻き始めるスサ。
そんなスサを見てニヤリと笑うカレンさん。
「ふっ。そうこなくちゃな」
カレンさんもスサに呼応するように魔力を練り始めた。
「しょうがないわね」
そう言いながら、リッカさんも魔力を高める。
そんな三人を見て、テラが口を開く。
「やめろ、スサ」
テラの言葉に、スサは即答する。
「テラ兄には関係ない」
スサがそう答えた瞬間、テラの周りの空気が、燃えるように熱くなる。
「……やめろと言っている」
テラの纏う空気が明らかに変わる。
その様子を見たスサが、こめかみに汗を浮かべながら口を開く。
「王選前に私と戦うのは良くないんじゃなかったの?」
その口調は、強大な力を持つ四魔貴族のものではなく、妹が兄に尋ねるような素のものだった。
そんなスサへ、テラは冷たい眼差しを向ける。
「気が変わった。手を引け、スサ」
スサは首を横に振る。
「ここで引いたら、私は魔王を名乗れなくなる。引くのはテラ兄だよ」
そんなスサの答えを聞いて、目を閉じるテラ。
「そうか……」
目を開いた瞬間、爆ぜるように広がるテラの魔力。
それに応えるように、スサの魔力も吹き飛ぶように広がる。
一触即発の空気。
ミホちゃんという規格外の存在を除けば、この世界の頂点に君臨するであろう四人のうち、二人が睨み合う中、突然空が陰る。
スサの魔法による雲かと一瞬思ったが、それにしてはあまりに突然すぎる。
私が空を見上げると、そこには巨大な生物の姿があった。
目に映るのは漆黒のドラゴン。
かつてお母様の命を犠牲に私が倒したドラゴンが可愛いトカゲだったと思えるほど、禍々しく強大な魔力を振り撒きながら、ゆっくりと空から地に降りてくるドラゴン。
こんなに巨大で強力なドラゴンの接近に気付かなかった事実に、内心舌打ちしながらも、地に降りたドラゴンの背中を見て、全ての思考も感情も吹き飛ぶ。
……その背に跨るのは、白髪の少年。
私の全てを捧げて愛する人。
ミホちゃんに連れられていったばかりの彼が、なぜ今ここにいるのかは分からない。
でも、愛してやまない最愛の人の登場に、最高潮に高鳴りかけていた私の胸は、彼の目を見て、急速に凍る。
……その目には、私は映っていなかった。
それは仕方ないのかもしれない。
でも。
自らの師であるはずの私だけでなく。
自らの主人であるレナさんも。
自らの奴隷であるヒナさんも。
そして、最愛の人であるカレンさんでさえ。
彼の瞳には映っていなかった。
彼の瞳に映るのは、悲壮な覚悟と、ここにはいない誰かへの想いだけだった。
最も会いたかった人との、最も望まない形での再会。
……私のことを見てもらいたかった。
想いには応えてもらえないにしても。
命を賭けてエディさんを愛した私のことを、せめて見てもらいたかった。
自分のことを愛してほしいなんて烏滸がましいことは言わない。
でも、せめて私のことを認め、見て欲しかった。
……これはきっと罰なんだ。
人を犠牲にするくせに。
何の役にも立てない私への。
力不足で敵を倒せず。
小とはいえ賢者の名を冠するくせに愚かな私への。
これは罰なんだ。
変わってしまった愛する人を背中に乗せたまま、漆黒のドラゴンは、咆哮のような声をあげる。
「我は魔王様の一の僕にして第二階位の龍リカ。これより我が主人である魔王様の旦那様よりお言葉を頂く。全員、静粛に聞くように!」
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