邪神の育て方!
紗桐亜黒
第1話
邪神。それは、物語では最後のラスボスとして良く登場するキャラクターだ。お馴染みの魔王を倒したと思ったら、更に強い敵として登場し、今度は世界の敵として君臨する存在。全ての悪の根源であり、勇者達が苦難を乗り越え、手に汗握るクライマックスにやっと倒す存在。中には主人公が邪神自身になるものもあるが、大抵の物語では、その
そんな邪神だが、そもそもその存在は世界への試練である。
数多く、それこそ無限にある世界の中には、堕落しきったものやら他の世界に悪影響を及ぼすものまで多種多様にある。そんな世界をいちいち観察し、選り分け等行っていては、それこそキリがないくらいに。
そこで、全ての創造主たる主神は考えた。そんな害のある世界や弱い世界、自らが一番だと考える傲慢な世界等の選り分け方法を。
「そうだ。その世界が創った、その世界にとっての最強の悪に打ち勝った世界だけを残せば良い」
こうして、先ずは主神が自ら育てた邪神を使って世界の選り分け、試練を与えていったのだ。その効果は凄まじく、あっという間に堕落しきった世界や弱い世界は駆逐されていった。
主神は満足していた。これで、平穏が戻ってくると。だが、試練を課せられた世界も黙ってはいなかった。当たり前だ、放っておけば自分が消えてしまうのだ。
弱い世界は考えた。どうすれば、自らが生き残るのかを。そして思い付いた。
「そうだ。弱いなら、強い者を連れてくれば良いんだ。あの悪に勝てるくらいに強い者を」
こうして、弱い世界は他の世界から強い者を強制的に連れてくる方法――後にその者は勇者と呼ばれる――勇者召喚を用いて対抗するようになったのだ。
勇者と邪神。その力は五分五分であり、邪神が勝つこともあれば、勇者が勝つこともある。勿論、勇者が負けた世界はみな滅んだ。なぜなら、邪神はその世界に住むものが一致団結して、初めて倒せる存在だからだ。
だからこそ、世界は真剣にこの問題に取り組んだ。正に生死を賭けた決死の覚悟で。
主神としては、結果がどちらに転げても構わないので、むしろその努力を手放しに喜んだ。
だが、それにも問題が生じた。当たり前だ。他の世界から勇者は召喚してしまえば良いが、邪神は倒されれば一から作り上げなければいけない。
ということは、世界に試練を与えるには、その邪神を育てなければいけないので。
「………どうしたものか」
現在、誠に遺憾ながら主神は邪神不足に陥っていた。
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