第10話 兄さんと共に彼女の身体を調べる。

 俺は兄さんの誘いで、これから水鶏奈くいなの首が無くても生きる胴体の件について調べる事に同意した。


「兄さん。水鶏奈くいなの頭部が死んでいるのに、胴体の方は未だに生きているのは何か不思議だな。」


「その通りだ。耕哉も彼女が胴体だけで動く状況が非常に気になるようだな。確かに水鶏奈くいなの頭部を失ったのは間違いない。しかし、胴体に聴診器で当てると腸や心臓等が明らかに活発的な状態で生きている人間と変わりなかった。」


「腸や心臓等が活発的…。つまり、脳に変わる脳細胞が身体の臓器で役割始めていると…、」


 臓器が脳から自立する事で身体が生きれる研究がある事は母さんから聞いていたから、驚く事はなかった。


 特に腸。その中でも小腸は、第二の脳とも言われている話は俺は既に知っている。

 腸が第二の脳と言われるのは、脳死しても腸が元気よく動ける事が要因だ。たが、それでも脳がなければ死んでしまうのと同意義だと考えると俺は胴体だけで生きている事に非常に謎が多くて不思議な感覚を持ってしまった。


「耕哉。小腸が第二の脳だという話は知っているよな。」


「あぁ。小腸は脳の影響がなく、脳細胞が沢山あるが、大腸は逆に脳の影響力が強いから、普通に動くのは有り得ないと思うな。」


「そうだ。普通なら確かに動かない。しかし、彼女の大腸や子宮、心臓は全て健康体で脳がなくても独自の発達をしていた事が分かった。」


「えっ。それってどういう事なの…。」


 大腸が脳の影響力が強い事実は知っていたが、まさかその大腸と心臓、子宮、心臓が脳の影響を離れて独自の機能を持つ様になって強くなった事は何かあるなと感じた。


「耕哉。別に驚く必要は何もないだろ。脳細胞を大腸や心臓、子宮に多く増殖すればそれらは脳細胞が増え、脳がなくても独自の細胞として自立するから生き続ける事が出来る。そしてそれらの臓器が他の内臓を支える事で胴体の方は生き続ける事が出来る研究を俺が発表したんだ。」


「そうか。」


「で、英語の論文でそれを発表しなかったのは英語で発表すれば少子化推進したい資本家に潰される事を俺は知っているからやらなかった。」


「なる程。英語で発表すれば世界で広まりやすい一方、資本家によって潰される論文が急増する事も十分にあり得るんだな。それは怖いな。」


 俺は英語なんてそんなに重要な言語だと思っていない。

 寧ろ、ドイツ語やペルシア語、中国語、そしてロシア語などを勉強する事で英語に依存しない言語学習ができて凄く嬉しくて楽しい語学を学べると思っている。


 最も、英語は正しいとは思わない。

 英語はOver PassやUnder Passみたいに組み合わせで1つの言葉を意味する言語が非常に多く、語順が徹底されているのは組み合わせで1つの単語が成り立つのが理由だと感じた。

 だから、語順を間違えると違う意味になる事は当然なので英語圏以外の多くの民は非常に困惑すると感じた。


 それに対し、ロシア語だと語順違っても通じるし、格変化などのむずかしさがある一方、冠詞がない影響で上手く話せば十分に通じると感じた。

 更にドイツ語やロシア語は1つの言葉で単語が成り立つものが非常に多く、俺がその影響で語学が助かっていたのは間違いなかった。


 そしてロシア語や中国語の論文は英語より自由度が高く、誤字、偽造がしにくい。

 それを理解すれば英語が如何に自由度が低く、偽造しやすい言語である事は俺もはっきりした。


「あぁ、英語がやれば圧力がかかるからそれを避ける上でも英語に頼らない言語が非常に大事になるのは当然だ。だから俺もお前もロシア語や英仏語以外の言語を勉強したのは当然だろ。」


「そうだな。」


 英語の論文には自由がない事を理解しながら、俺は水鶏奈の身体に聴診器を当てた。


「確かに、彼女の身体は凄く生命力が溢れていて、もはや、頭を失ってもそれにめげずに頑張ろうとする姿は俺も感激しちゃうな。」


「そうだな。水鶏奈の身体が生きていれば確実に頭を失ってからも彼女の面影を思い出すから安心した。」


「あぁ、そうだな。」


 俺と兄さんは互いに水鶏奈くいなの死を凄く嫌な感情だと感じながら、彼女のこれからを考える事にした。


水鶏奈くいな。お前は頭を失っても身体で生きたい気持ち、そして各内臓の脳細胞増殖によって頭を失っても身体だけで生きて来れた事は凄く有難いと俺は思っているよ。」


 俺は頭を失った彼女にこれから感謝しながら彼女の身体に抱き着いた。


 すると…、


「耕哉。水鶏奈くいながアンタの頭を撫でているし、凄く優しい気持ちで抑えているよ。」


「そうか。水鶏奈くいな。お前は俺の事が好きだったんだな。」


 俺はこうして彼女の頭部がなくても彼女が生きている事がはっきりし、医学と科学が進んだ事、英語に依存しない論文体制が整った影響で彼女はずっと生きる事や愛情を得る事が出来ると思った。


 だから、俺は彼女を大事にしてゆきたいと思いながら、彼女のこれからを兄さんと彼女の身体、そして遺骨になった彼女の頭部と共に考えてゆこうと思った。


 医学や化学の進歩には英語を依存する必要性は既に薄い事の重要性を改めて感じ、ロシア語科学の重要性を改めて思い知った。

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