胴体少女は彼氏を想う。

ЕСБの革命

首が亡くなった少女と彼女の胴体を想う彼氏。

 つい先日。俺の彼女だった塚口水鶏奈つかぐち くいなを無くしてしまった。

 しかし、お通夜の前日、俺は彼女の親から電話が来て胴体の方は命に別条がないと報告され、その話を聞いた。


水鶏奈くいな。無事だったか。」


 俺は、水鶏奈くいなが無事だと思いながら、彼女の遺体保管所を見た。

 すると、彼女の身体だけは何事もなく、無事だった一方、頭部は脳死したらしく、彼女の頭部はこれからお通夜、告別式でお別れする予定だった。

 俺も悲しいが、俺の彼女である水鶏奈くいなの胴体は自分の頭とお別れするから彼女自身は、もっと辛いと思いしていると感じた。

 科学の進歩で少女の多くは女子高生年齢である15歳を過ぎると年を取らなくなった一方、胴体の病気、閉経、老化、死をそれぞれ奪われており、今や胴体少女は増え続けるという。

 これは日本だけでなく男性同性婚を合法化し少子化が進んだ欧米でも進められており、これが彼女達の末路だと思うと水鶏奈くいなの胴体もこれからずっとこの姿を維持しながら、死を奪われたんだなと俺はつくづく実感する事になった。

 *********

 俺の名前は、野町耕哉のまち こうや

 小さい頃、ロシアに滞在していた影響もあり、俺はロシア語も比較的喋れて語学は自然と得意だ。

 何せ、俺の父さんはロシアで電子構文プログラミング関係の仕事をしているから、余計にな。

 それ故に俺は、ロシア語を用いた電子構文プログラミングの仕事をしており、その影響で中学に進級するまではモスクワで過ごしていた。


 だが、母さんが父さんと仕事の方針の違いから別居した影響で離婚にはならなかったものの、中学の頃に俺と母さんは日本に戻ってきた。

 最も、父さんはそれ以降、モスクワ大学に雇われるなどの実績を残している点は安心した方が良いがな。


 そして、友達がない状況の中で、俺が最初に友達になったのは後に彼女となった塚口水鶏奈つかぐち くいなだった。


「耕哉君。大丈夫だったの。」


「あぁ、水鶏奈くいな。お前がいたからこそ俺は大丈夫だったから。」


「そうか。でも、この電子構文プログラミングを紙に書いているのは記述する事で情報を残す為にあるんでしょ?」


「あぁ、そうだ。俺は凄くこの構文プログラムを書いているとロシア語やペルシア語などを複合した新しい電子構文プログラムを作成して楽しいんだ。そうすれば暗号などの安全性が非常に上がるんだ。」


「そうなんだね。私も英語一辺倒には非常に呆れている。そんな状況の中、ロシア語や中国語をやる事で凄く語学が楽しくなったのは同意するよ。」


「そうか…。」


 俺は中学から高校2年まではこうやって水鶏奈くいなと話せることは非常にありがたいと思っていた。

 ********

 けど、高校3年生に進級する前、水鶏奈くいなは崖に飛び込もうとした中学生の少女を救おうとした時に転んでしまい彼女は死亡した。

 皮肉にも頭部だけは酷い出血だったが、胴体の方は殆ど無傷で無事だった事は何よりだった。

 そして、その胴体は凄く生命力が詰まっており、頭を失った際、腸等が脳に変わる臓器としてバックアップし、大腸や胃などがが脳をなくしても無事に生きて行ける様になった。

 **********

 そして、3月下旬の彼女の頭部のお通夜の日…。

 俺は水鶏奈くいなの頭部を彼女の胴体と共に拝見し、これから彼女の頭が遺骨になる事を考えると、彼女の胴体だけがずっと生きて行く事に少しだけ恐怖を感じていた。

 その一方で、俺は彼女を守りたい思いもあった。


水鶏奈くいな…。」


 俺は水鶏奈くいなの頭が凄く綺麗な顔をしている様子を見て、彼女の頭部は既に死んでいるんだと感じた。

 しかし、それとは裏腹に彼女の胴体には俺を誘い、何かを伝えようとした。


水鶏奈くいな。ジェスチャーをして何か伝えたいのか?」


 俺はそのジェスチャーを見て、彼女が俺に何か伝えたい事があるのだと感じてた。


水鶏奈くいな…。」


 俺は頭を失った水鶏奈の胴体を抱きしめ、慰めて、そして身体の感触を確かめる事で頭部との感触を比較した。


水鶏奈くいな。オマエの胴体は暖かいくて柔らかい。これはまるで頭部だけが失っただけで身体はずっと生きている事を実感するよ。


 俺は彼女の顔が冷たく感じるのに対し、胴体が温かく感じる事で、彼女がまだ生きている事で、少しだけ恐怖が取れて安心した。


水鶏奈くいな。俺をゆっくりと抱きしめてくれて凄く安心した。お前の頭が死んでも身体はまだ生きているんだね。心臓の鼓動や腸はまだ動いて居る。寧ろ、腸は脳の影響が失った事で逆に元気で活発化している。お前の頭が死んでも身体が生きているだけで俺は凄く安心するよ。」


 俺は彼女の頭を失っても身体が生きているだけで、安心出来る環境を整えたいと思い、俺は彼女の身体を守ろうと決意した。


 恐らく、少子化や化学の進歩等の影響で特殊な細胞を女性の胴体に埋める事で、その細胞が身体中に繁殖しやすい構造のお陰で、こうした環境が生まれたと俺は感じていた。

 それ故に、俺は彼女を護りながら、彼女の胴体と共に一緒に過ごそうとつくづく感じてしまった。

 頭を脳死して遺骨になったとしても、胴体の方は俺が生きている内は、ずっと楽しませて喜ばせたいから…。

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