某大賞、二次落ち。キャラクターの描写。
男には、どうしても退けないときがある。ただ、そんな根性をこんなところで使うのは間違っている。絶対に。
「ズボンだけは、ズボンだけはやめろ! 頼むから俺のズボンを下ろそうとするなー」
自分ことながら変態くさいと思いながらも、高校一年生の神撫優奈(かんなで ゆうな)はズボンを押さえながら抵抗した。でなければ、自分のズボンが下がり、神域がフルオープンになってしまうからだ。放課後とはいえ、まだまだ生徒が残っている。
ここはどうやっても守らないといけないのだ。
「うふふふふふ。おとなしくしなさいねー。優奈は私の最高の玩具なんだからー」
だというのに、同じクラスの女子、天桜壊香苗子(てんおうかい かなえこ)は手を触手のように卑猥にくねらせながら襲ってくる。優奈の真後ろからだ。そのせいで放漫な胸が背中に当たり、柔らかいロングウェーブの髪が頬をくすぐる。シャンプーの甘くて良い香りがする。なんだかクラクラしてきた。目はいつもと同じで、眠そうに半分しか開いておらず、ぼんやりとしているのに、口元は薄く笑っている。正直言って怖い。そもそもどうしてこうなった?
体を動かせばその分、香苗子の体も動く。それはつまり、背中の感触も動くわけで。うん。上手く力が入れられなかった。
「ゆーちゃんの、ちょっといいとこ、見てみたい。……なーんて」
その声は前から。正確に言えば、優奈のズボン辺りが目の高さにくるように、椅子に座ったまま上半身を傾けている器用な体勢の黒羽さつきから発せられた。今では絶滅種に数えられる古風な三つ網が二つ仲良く、地面に先っちょをつけている。黒ぶち眼鏡の奥にある瞳は輝いていた。流れ星を見付けた子供のように。
「無表情でなに言ってんだよ! これ確実にイジめだぞ! むしろ逆セクハラだぞ!」
香苗子が優奈を虐め、それをさつきが嬉しそうに見ている。もはや、一年A組では日常となった光景だ。だれもとめようとはしない。目をそらしているのはほんの二、三人。他の生徒はむしろこの状況を楽しんでいた。
「くそう! 優奈め。香苗子さんになんて羨ましいサービスをしてもらってんだ。今すぐ俺とかわれ! いや、かわってください。そのマシュマロ感触をリアル中継するんだ!」
「頑張れー優奈君。おーっと、今日は青柄かなー? ほらほら、ベルトが隙だらけだよー」
「天桜壊さんも飽きないよねー。優奈も玩具役が似合ってきたし。あ、そろそろリコリスさんが帰ってくるんじゃない? もうちょっとの辛抱だからファイトー」
「うんうん。やっぱり、リコリスお母さんがいないと優奈ちゃんは大変だにゃー」
誰も香苗子の暴挙をとめようとしない。彼女を除いて。
「香苗子さん。今すぐ優奈から手を離しなさい」
香苗子の肩を掴んだのは、日本の高校であるここにおいて唯一の、アメリカ生まれの外国人、リコリス・レジオッタであった。目に飛び込んだ鮮やかな唐紅のウルフヘアに、優奈の目頭は熱くなった。熱を持たない炎が心を焦がす。着ているのは同じセーラー服だというに、気品に満ちたラピスラズリの瞳に、蜃気楼のごとく、極上のドレスを幻視してしまう。優奈はほっと一安心した。良かった、これで助かる。
「ちっ」
さつきがわざとらしく舌打ちして姿勢を元に戻した。それをリコリスは見逃さない。
「さつきさん。私が飲み物を買ってくる間に香苗子さんを見張っていなさいと言ったはずですけど?」
返答によっては、その眼鏡をカチ割る。そんな裏音声が聞こえてくるぐらいドスが効いていた。女子高校生のスキルにしては凄く物騒である。だが、リコリスはただの女子校生ではないのだから当然かもしれない。
「ところでさ、今日の部活は、場所はどこ? ……字余り」
訂正しよう。
「? マークもカウントするなら字余りよ。ちなみに、今日は潰れたゲームセンターだって。相手は中堅レベルかしら」
彼女達は、決して、ただの高校生ではない。通常社会の裏で極秘に、政府でさえ見て見ぬフリをする世界でおこなわれているゲームに参加している『クラウン』達である。
「話題を変えないでください! 私は貴女達の品性について語っているのです! 優奈もしゃきっとしなさい。だから虐められるのですよ。そのオドオドした態度も直さなければ駄目ですわ」
リコリスは優奈のお母さん。クラスのほとんどが、そう思っている。
放課後の教室にいる生徒のほとんどは部活をしていない暇人だ。だから、自然にリコリス達へ視線が集まる。面白い劇がはじまるのを待っていた。
「優奈は大きい胸が大好きだからむしろ嬉しいわよねー」
「人の良し悪しは胸の大きさで決まるものじゃありません! ……まさか、優奈は香苗子のように巨乳が好きなのですか?」
「ち、違う。だからそんな目で見ないで!」
護られたり責められたりと優奈の毎日はいそがしい。
「ゆーちゃんは、見ているだけで、面白い。……えい」
さつきが携帯電話を取り出して動画を撮り始めた。そんなこととは知らずに、香苗子とリコリスに挟まれた優奈の百面相が続く。
今日も一年A組は平和であった。
「ジェシカちゃんを呼んだら? それか、時雨さんを」
「時雨さんはともかく、あの子はもう、眠っているんじゃありませんの? 起こすのは忍びありませんわ」
ジェシカとは、彼女達の雇い主だ。リコリスは左手首に嵌めてある腕時計へ視線を落とした。時刻は夜の十時を過ぎている。もう眠っている時間だった。
「たわけ! まだ起きているぞ!」
出入り口の方から幼い少女の叫び声が聞こえた。
「なんだ、ジェシカ。起きてたのかよ。もしかして、見たいテレビでもあったのかー?」
「アホ。貴様ら、こんなつまらん勝負に何分かける気だ! 私だって忙しいのだぞ」
見た目十歳の幼さとは半比例して、とても偉そうだった。金色のストレートヘアーがご立腹そうに揺れる。エメラルドの瞳は険しく、瞼には力が入っていた。眠いのだろう。白い薔薇のようなドレスもあいまって、ひどくこの場に似合っていない。現在の彼女に似合うのはフカフカのベッドとアニメのキャラクターがプリントされたパジャマであった。忙しいと言ったのは嘘で、本当は今すぐにでも眠りたいのだ。プライドにかけて絶対に誰にも言えないが、四人にはバレていた。
ただし、少女を馬鹿にすることはできない。このジェシカ・シュバルツこそ、優奈達の雇い主なのだから。もし、非礼などあったら解雇にもなりかねない。はずなのだが。
「ごめんねージェシカちゃん。一人で寂しかったわよねー。よしよしうふふふふふ」
香苗子がジェシカを後ろから抱きしめて、頭を撫でる。小学生と高校生の力の差は歴然としていて、金髪の少女もとい幼女は逃げられない。
「ぬあ、離せ香苗子! 私の高貴な髪に触れるな! こ、この掻き回すな阿呆!」
さつきまで加わってジェシカの頭を撫でまわす。確かに、非礼があった場合、駒はゲーム盤から下ろされる。しかし、香苗子達は雇い主の性格をよく知っていた。
「そうだ。ジェシカちゃんもコンビニにいかない? ハーゲンダッツのアイスなんてどうかしら? 美味しいわよ」
おもしろいぐらいに、ぴくっとジェシカの耳が反応した。
「な、アイスだと。それは美味そうはっ……いかん。いかんいかんいかん。寝る前の歯磨きはもう終わったのだ。そんな甘くて冷たい菓子で私の機嫌がなおるなんて大間違いだ」
口ではそう言っているものの、内心は激しく動揺していた。
「あら、もう一度歯磨きすればいいじゃないの。それに、深夜にアイスを食べるなんて大人っぽくて素敵よ。最近の流行はちょい悪なのよジェシカちゃん。だから、ね」
意味わかんねーよ。優奈は誰にも見えないように空気にツッコミを放つ。いくらジェシカでもこんな嘘に騙されるわけ、
「……本当か?」
騙された!? 優奈は驚愕に身を震わした。釣り針に魚が引っ掛かり、香苗子は目を光らした。
「そうそう。大人よ、お・と・な。ねえ、だから……一緒にいこう」
「う、うむ。そこまで言われたら仕方ない。私の寛大さに慄くがいいさ! ふははははははははははは! ほれ、なにをしている。さっさと行くぞ」
香苗子から解放されたジェシカは腰に手を当てて高笑いした。優奈とリコリスは呆れながらも、さつきとアイコンタクトをとっていた。やったね! と。
皆、アイスが大好きなのだ。
こっちもキャラ評価が5段階で最低だったな。あと、文章がかなり乱れている。
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